「どこか1チーム、1地域の盛り上がりでは、Bリーグは成功できません」と語る折茂選手

開幕戦の地上波ゴールデンタイム生中継には驚いた! これまでふたつのリーグに分裂していた日本男子バスケ待望の統一リーグ「Bリーグ」がド派手にスタート! 

今後の盛り上がりは間違いナシ! ということで週プレ注目のプレイヤー、レバンガ北海道・折茂武彦(おりも・たけひこ)選手にインタビュー!

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「日本にバスケットボールのプロリーグができたらいいな」

僕が20年以上前、まだバスパンが短かった頃から思い続けていた夢が、ついに現実になりました。

ただ、僕が夢見たのは、Jリーグ開幕のイメージがあったため、もっときらびやかで、華やかなプロリーグの開幕シーンです。しかし、現実は理想からは程遠いもの。また、僕が選手兼代表を務めるレバンガ北海道は、昨シーズンまでも多くのブースターに後押ししていただいていることもあり、“新リーグ開幕”ということでの盛り上がりは、さほど感じていないのが正直なところです。

今後、Bリーグにはさまざまな問題が生じるでしょうし、動員に苦戦するチームも現れるかもしれません。新リーグ開幕のための準備不足を露呈することもあるはず。ただ、見切り発車の部分があるとしても、まずは一歩踏み出さなければ、ふたつのリーグをまとめ、統一プロリーグを発足することができなかった現実があります。Bリーグが始まったこと自体に価値があるのは間違いないです。

リーグ設立の際、僕は現在、日本バスケット協会のエグゼクティブアドバイザーである川淵(三郎)さんに、「君は日本で一番得点を取っていて、バスケ界では有名なのかもしれないけど、僕は知らない」と言われました。多くの人は、田臥(勇太・栃木)しか知らない。それが日本バスケの現状だと思います。

ここからいかに今まで興味がなかった人を巻き込んでいけるかが、リーグの盛衰を決めます。その道は険しいとしか言いようがない。現在、バスケを好きな人はNBAを見ます。そこと比べたら、今の日本のレベルは……。ただ、一足飛びにレベルは上がりません。ヘタクソなりに今できることを一生懸命見せ、必死で面白いゲームにするしかないです。チンタラやっていたら、一発でこのリーグは終わることを、全選手が肝に銘じてほしいですね。

地元チームの試合会場に一度でいいので足を運んでください!

長年、新人を見ていると、間違いなくスキルや身体能力は向上しています。ただ、試合になるとそれほど目立たない選手ばかり。個性や我の強さ、タフさが足りない。ギラギラした日本人選手、「あのチームには、あいつがいる」と認識される選手が、各チームで出てくれることを願います。

そして、選手が頑張るのは当然ですが、週プレ読者の皆さんにもお願いがあるんです。どうか、地元チームの試合会場に、一度でいいので足を運んでください。そこで、ふがいないバスケをしていたら、ためらわずに罵声を、頑張っていたら声援を送ってあげてください。皆さんのそのひと声が、必ずBリーグの明日につながります。

プレーヤーとしての僕自身のことを話すと、46歳になりましたが、今年は近年になく調子がよく、新シーズンが楽しみで仕方ありません。40歳を超えてから、イメージに体が追いつかなくなったり、昨年は大きなケガでシーズンの大半を棒に振りました。「もう潮時かな……」と思うこともありましたが、Bリーグという完全プロリーグを、選手としてコートから見てみたいという思いが支えとなり、リハビリの励みになりました。

結果、今まで時間がなくできなかった可動域を広げるトレーニングなどのおかげで、近年になく体が動きます。

最初にも言いましたが、プロリーグは僕の夢でした。僕だけではなく、多くの選手の夢でした。「バスケには先がない」「稼げない」といわれ続け、夢半ばで現役を退いた選手、将来を考え、続けたくても続けられなかった選手が無数にいます。そんな元選手たちの思いを、このリーグは背負っています。僕はギリギリですが現役のうちに間に合いました。その幸せを今、噛(か)み締めています。

同時にこのリーグは、これからプロを目指す少年たちの希望にならなければいけません。希望になれるか、絶望になってしまうかは、われわれ次第。その責任は限りなく重いと感じています。

どこか1チーム、1地域の盛り上がりでは、Bリーグは成功できません。あの日、部活や体育の授業でバスケットボールを追いかけた多くの“元選手”の皆さん、そして全国のバスケットファンの皆さん、このリーグの成長に力を貸してください。共に歩んでいただければ、必ずBリーグは成功し、日本バスケの未来を明るくするはずです。

◆男子バスケの新リーグが豪華開幕し『週刊プレイボーイ』41号(9月25日発売)では「5分でわかるBリーグ超入門!!」を掲載。こちらも是非、お読みください!

●折茂武彦(おりも・たけひこ)1970年生まれ、埼玉県出身。埼玉栄高、日大を経て93年にトヨタ自動車に入社。2007年、新設チームに移籍するも運営会社の撤退により、自ら「レバンガ北海道」を創設。日本代表としても数々の国際大会を経験している。ポジションはシューティングガード。190cm、77kg

(取材・文/水野光博)