GT500クラスを制した立川祐路&石浦宏明、GT300クラスは井口卓人&山内英輝が制した

プリウスとランボルギーニがガチンコでその速さを競い合う!? 

ウソのようなホントのレースが「スーパーGT」なのである。その人気の秘密とレースの結果を、モータージャーナリスト・河口まなぶが解説!

■国内最速ハコレース、スーパーGTの魅力

スーパーGTの人気の理由は、われわれの知っている市販車をベースにしたレーシングカーが、まさにノーガードの殴り合いのようなバトルを繰り広げ、最速を競い合っていることにある。レースはGT500とGT300という2クラスが同時に行なわれる。GT500クラスは見た目こそレクサスRC F、日産GT-R、ホンダNSXという国産トップのスポーツモデルだが、中身は完全なる別物なのである。

一方のGT300クラスは世界のスーパースポーツをベースにしたレーシングカーから、日本のトヨタ・プリウス、スバルBRZ、トヨタ86などあらゆるジャンルのクルマが混走し、熱い戦いを展開している。この混走こそがスーパーGT最大の魅力だ。というのも、超速のGT500車両がバトルをしている最中に、遅いGT300車両が走行しているため、GT500車両にとっては邪魔でしかない。しかし、GT300車両を上手に使って相手を出し抜く…というようなテクニックをファンは見られるのだ。

逆にGT300車両も、スピードの速いGT500車両に道を譲りながらも後ろから攻めてくる同じGT300車両を前に行かせない駆け引きが繰り広げられる。そして時には、異なるクラスのクルマが絡んでスピンやクラッシュが起こり、大事な局面で大ドンデン返しになることも多い。

面白いのは、市販車としては「エコカー」で通っているプリウスが、GT300クラスでは、ランボルギーニ・ウラカンやアウディR8、メルセデスAMG-GTという世界のスーパーカーを追い回すシーン。まさに痛快だ。

ハイブリッドの代名詞である「プリウス」。エコカーながらGT300で、並み居る世界のスーパーカーと激しいバトルを繰り広げ、上位を脅かす存在だ!

ちなみにGT300クラスでは、先に記した輸入車がFIA-GTと呼ばれ、欧州を中心に人気を博しているFIAのGT3マシンが中心になっている。これらのGT3マシンはお金を出せば誰もが買えてレースに出られるものだ。

国産モデルはどうか。日産GT-RとレクサスRC FがFIAのGT3マシンだが、トヨタ・プリウス、スバルBRZ、そしてトヨタ86はJAF-GTと呼ばれる日本独自の規格だ。このJAFGTのなかには、イギリスのロータス・エヴォーラも含まれている。これはGT300マザーシャシーという、運営側が決めた共通部品を使って参加できるマシン。JAF-GTと同じボディ寸法ながら決められたエンジンなどを搭載する日本独自規格のマシンなのである。

ちなみにトヨタ86も、このマザーシャシーを使っているので、市販車ではスバルBRZとトヨタ86は同じメカを使う兄弟車だが、GT300クラスでは、ロータス・エヴォーラとトヨタ86が同じメカを使う兄弟車なのだ。

レクサスは今季初勝利をワンツーフィニッシュで飾った!

■天王山の第6戦。どうなる優勝争い

ここからは、8月27日、28日に鈴鹿で行なわれたスーパーGT第6戦を解説しよう。

注目はGT300クラスだろう。ここで最近強いのがスバルBRZだ。参戦5年目となる今年は、開幕戦の岡山で23位というワーストな順位から始まった。そして第2戦富士でも11位とまったく振るわず。しかし、第4戦の菅生(すごう)で3位表彰台をゲットすると、続く第5戦の富士でも再び3位。そして今回の第6戦「鈴鹿1000km」では今季初優勝を手にした。この勝利によって、チームおよびドライバーズランキングともに1位。スバルBRZにとって参戦5年の歴史のなかでシリーズタイトルに最も近い年だ。

スバルBRZは安定感抜群のレースを展開。終盤は雨に見舞われたが、圧倒的な速さで快勝した。今季初勝利の勢いに乗って、次戦でスバルBRZは連勝に挑む!

しかし、スーパーGTで1位を取り続けるのは至難の業なのだ。勝者にウエイトハンデが課せられる独自のシステムが導入されているからだ。スバルBRZも次戦は、過去最大の94kgのウエイトを積んで戦うことになる。このハンデを考えると、残りの戦いでメルセデスAMG-GTやBMWM6が浮上してくることも十分考えられる。

最後にGT500クラスの第6戦は、日産GT-RとレクサスRC Fの戦いが激化。レクサスは6台、日産GT-Rは4台をGT500クラスに送り込んでいるが、現時点でチームランキングトップは日産GT-Rを駆るNISMOだ。その後には、レクサス勢のゼント・セルモ、チーム・サード、チーム・トムス、チーム・ルマン・ワコーズ、チーム・トムスと、常にレースの上位を占めて細かくポイントを重ねるレクサス軍団がランキングを占めている状況だ。

予選8位だったものの、レース序盤から見事に挽回した立川祐路&石浦宏明のレクサスRC Fが優勝。ドライバーズランクでも2位に浮上した

実は、この第6戦鈴鹿は天王山と呼ばれていた。というのも、「1000km」という長丁場のレースだけに、勝利ポイントが通常より多く与えられるからだ。ただ、台風10号の影響もあり、午前から雨が降ったりやんだりと路面は非常にデリケートなコンディション。一部がウエットだったため、レインタイヤを選択するチームも。さらに、レース開始後に車両火災、クラッシュなどレースは荒れ模様の展開に。そんななか、2台のレクサスが激しいバトルを展開、最後はゼント・セルモRC Fが優勝。レクサスは今季初勝利をワンツーフィニッシュで飾ったのだ。

この勝利でレクサスには大量25ポイントが加算された。現在、レクサスは首位のGT-Rと11ポイント差で2位。残り3戦で順位をひっくり返すことが可能な位置につけた。

今後は相当の激戦かつ順位変動が予測される。次戦はタイのチャン・インターナショナル・サーキット、そして最終戦は11月のツインリンクもてぎだ。熊本地震でキャンセルされた第3戦オートポリスの振り替えレースが開催され、そのまま第8戦も行なわれる。激アツバトルを見逃すな!

(取材・文/河口まなぶ 写真/トヨタ自動車 スバルテクニカインターナショナル[STI])