南シナ海において「九段線」という独自のラインを主張する中国とは、領有権問題で対立しているはずのフィリピンだが…【クリックして拡大】

今もっとも国際政治を賑わせているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。相手が国連だろうが、アメリカだろうが、カトリックの頂点だろうが、とても一国のトップとは思えない暴言はとどまるところを知らない。

「バカ者!」(人権尊重を求める国連の潘基文事務総長に)「売春婦の息子が!」(人権尊重を求めるオバマ米大統領に)「あれはオカマ野郎だ!」(ゴールドバーグ駐比米大使に)「もう来るな!」(訪比したローマ法王フランシスコに)

しかし、数々の暴言を発してきたドゥテルテは、1980年代からダバオ市長を7期にわたって務め上げ、大統領選でも圧勝した過去を持つ。この男は、本当にただの“狂犬”なのだろうか?

気になるのは、彼が「あの国」にだけはやけに気を使っているように見えることだ。国際ジャーナリストの河合洋一郎氏はこう語る。

「発言の過激さでは本家ドナルド・トランプを凌駕(りょうが)するドゥテルテも、なぜか中国の前では借りてきた猫のようになってしまいます。大統領選の時期には『ジェットスキーで中国が埋め立てた人工島に上陸し、フィリピン国旗を立てる』など勇ましい発言もありましたが、あとは『中国が交渉のテーブルに着いてくれれば話し合いをしたい』『私の祖父は中国人だから中国とは戦争したくない』など、弱気ばかりが目立ちます」

南シナ海の領有権問題で、フィリピンと中国は対立しているはずなのだが…。さらに、9月13日にはこんな“媚(こ)び発言”も飛び出した。

「南シナ海で中国を刺激せず、今後は麻薬密売人と反政府勢力との戦いに専念する。それらと戦うための軍装備を中国とロシアから求める」

「人権無視」の根底には、毛沢東流の社会主義思想

フィリピンの狂犬は、なぜ中国に尻尾を振るのか? その秘密は彼の大学時代にまで遡(さかのぼ)る。中国や東南アジアの事情に詳しいジャーナリストの古是三春(ふるぜ・みつはる)氏はこう語る。

「ドゥテルテの大学時代の恩師はホセ・マリア・シソン。毛沢東主義の下で結成されたフィリピン共産党の軍事部門である新人民軍(NPA)の創始者で、アメリカとEUが『テロリスト支援者』に指定した共産ゲリラの大物です。彼の影響を色濃く受けたドゥテルテも、思想的にはバリバリの左派なのです」

中国人の祖父を持つドゥテルテは検事などを務めた後、フィリピン最悪の犯罪都市だったダバオ市の市長に就任。華僑や中国系企業家の支援を受け、荒っぽい手法で治安を改善させていった。

「市長時代も、大統領就任後も、彼は腐敗官僚や麻薬犯罪に対して“超法規的”なまでの厳しい態度を見せています。これは中国の文化大革命時代、『造反有理』(理のあることを実現するのに法は関係ない)を掲げて反対派を躊躇なく殺した毛沢東思想と共通するものがあります」(古是氏)

ドゥテルテの「人権無視」の根底には、毛沢東流の社会主義思想が流れていたのだ。しかも、ドゥテルテと中国とのつながりは思想だけではないーー。

発売中の『週刊プレイボーイ41号』では、フィリピンの狂犬の“裏の顔”に肉薄。日本とも密接に関係ある南シナ海情勢のカギを握るフィリピンの大統領が、中国の飼い犬になりつつある現状を取材しているので、是非そちらもお読みいただきたい。

(取材・文/小峯隆生 協力/世良光弘)

■週刊プレイボーイ41号「“フィリピンのトランプ” 狂犬ドゥテルテ 『中国の飼い犬化』で日本の生命線が切断される!!」より