1ステージ制に戻すことは大賛成だと語るセルジオ越後氏

Jリーグが、昨季から導入した「2ステージ制」+「チャンピオンシップ(CS)」を今季限りとし、来季から「1ステージ制」に戻すことを検討しているようだ。背景には、海外企業と10年間で約2100億円の放映権契約を結び、大幅な収入増が確実になったことがある。

率直に言って大賛成だね。Jリーグは観客動員とスポンサー収入の増加を狙って2004年以来となる2ステージ制を復活させたわけだけど、それは大きな問題を抱えていた。

まず、各ステージの王者と年間勝ち点上位3位までの最大5チームがトーナメント形式のCSを戦うという優勝決定方式がわかりにくかった。この先、何年か続けても、コアなファン以外には浸透しないだろう。

また、年間勝ち点1位のチームが「年間王者」とならないことに、どうしても不自然さがつきまとう。昨季は年間勝ち点1位の広島がCSを勝ったから丸く収まったけど、もし違う結果になっていたら、世間はどう受け止めただろうか。世界を見渡せば、2ステージ制を採用しているリーグもある。でも、欧州の主要リーグなど大半は1ステージ制を採用している。つまり、1ステージ制が“世界基準”なんだ。

そして、一番大きな問題は、CSの実施により試合数が増え、ただでさえゆとりのない年間スケジュールがさらに過密になっていること。選手の負担が増えるのはもちろん、世代別も含めた日本代表チームにマイナスの影響が出ている。

例えば、惨敗したリオ五輪代表の強化がそう。このチームはなかなか強化試合や合宿を組めなかった。組めたとしても、クラブ側が選手を出すのを渋り、招集に制限がかかることが何度もあった。A代表も同じ。昨年の南米選手権に招待されながら、「Jリーグもあって日程的に厳しい」という理由で辞退したこともあった。

Jリーグ創設の理念を思い出さなければいけない

だから、CS絡みの契約が残っているスポンサーやTV局に違約金を払うことになっても、1ステージ制に戻すことに異論はない。

ただし、単にリーグの制度を元に戻して終わりというのではダメ。これを機にあらためてJリーグ創設の理念を思い出さなければいけない。Jリーグの出発点は「日本代表を強くするため」だった。ところが、最近はリーグも各クラブもその意識が希薄になっているように見えるからだ。

チーム数が増えすぎたことで、大味な試合が増え、タイトな日程になり、メディアへの露出も減った。結果として、リーグ全体のレベルが下がっている。挙句の果てに、選手を代表に送り出すことを渋るクラブまで出てきた。これでは日本代表は強くならないよ。

現在、ロシアW杯アジア最終予選を戦っている日本代表チームを見てほしい。本田や岡崎などこれまで代表の中心だった海外組の選手が所属クラブで十分な出場機会を得られず、その影響が代表にも出ている。本来であれば、こんなときこそJリーグで活躍している国内組の選手の出番なのに、過密日程でコンディション面のアドバンテージはあまりなく、ハリルホジッチ監督には「Jリーグはレベルが低い」とダメ出しをされている。

そんな現状だからこそ、日本サッカー協会とともに、どうすればJリーグが日本代表を強くできるのか、という課題に再びきちんと向き合う必要があると思うんだけど、果たして、Jリーグ側はどこまで考えているのかな。

(構成/渡辺達也)