先月、政府は高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉に向けて動きだすことを決めた

高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉になる。

菅義偉官房長官や茂木敏充自民党政調会長ら、政府与党の幹部が相次いで「抜本的見直しの必要性」に言及、年内をメドに「もんじゅ」廃炉の基本方針が打ち出されることになりそうなのだ。

原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び核燃料として利用する。これを「核燃料サイクル」と呼ぶ。「もんじゅ」はその要となる施設で、使用した以上のプルトニウムを得られることから、“夢の高速炉”と呼ばれてきた。

しかし、ナトリウム漏れなどの事故が相次ぎ、初臨界に達した1994年からの22年間で、運転できたのは250日間だけ。「もんじゅ」にはこれまでに1兆2000億円の国費が投入されている上に、年間200億円の維持費もかかる。まさに役立たずの金食い虫だ。これでは廃炉は当然だろう。

この動きに「もんじゅ」の立地する福井県敦賀市は上を下への大騒ぎとなっている。立地自治体にとって、「もんじゅ」は巨額の交付金などをもたらす打ち出の小づち。その大切な金ヅルがなくなってしまうのだ。

敦賀市内のホテル業者がこう悲鳴を上げる。

「夏の海水浴客を除けば、宿泊客は電力会社や原子炉メーカーの社員など原発関係者がメイン。ただ、3・11以降は市内の原発が稼働停止となり、その原発関係者の姿もめっきり少なくなっていた。そこに『もんじゅ』が廃炉となれば、『もんじゅ』関連客も泊まらなくなってしまう。今後も経営を続けることができるのか、心配でなりません」

不安におののいているのは立地自治体のみ

9月28日に国に意見書を提出した敦賀市議会の田中和義市議もこう憤る。

「(廃炉は)寝耳に水。弁当屋から飲食店、ホテル、タクシー業界にまで打撃を与える話で、地元では『仕事がなくなる』という不安が広がっています」

とはいえ、不安におののいているのは立地自治体のみ。最も大きな影響を受けるであろう原子力ムラは、意外にも「もんじゅ」廃炉のニュースに涼しい顔なのだ。

いったい、なぜか?

発売中の『週刊プレイボーイ』42号では、原発利権に食らいつこうとする霞が関、永田町、財界の連中を告発。廃炉が脱原発どころか、原子力ムラの新たな利権構築の第一歩となってしまう現状を、ぜひご覧いただきたい。

(取材協力/横田 一)

■週刊プレイボーイ42号「これだけある!「もんじゅ廃炉」後に生まれる霞が関の新利権」より