30歳記者も体のさび付きが発覚!?

30代、40代ともなれば、日々の疲れが残り、肩こりなどカラダの不調を実感するサラリーマンも少なくないはず。「20代の頃はまだ若かったな~」なんて思いが、ふとよぎる。

それでも「最近、忙しくて運動不足だし…」と甘く考えがち? しかし、筋肉量の減少に気付かず、もうすでに“寝たきり老人”の“予備軍”になっているかもしれないのだ。

そう警鐘を鳴らすのは、元東京警察病院リハビリテーション室長、現メディカルクロッシングオフィス代表として10万人以上にリハビリ指導してきた野呂田秀夫(のろたひでお)氏。一般的にはまだバリバリ働いている世代のはずなのに、なんとも信じがたい話だが…。

「街で30、40代の歩いている姿を見ていると、将来、寝たきりになりそうだなと感じます。半分ほどではないけど、かなり目立つ。全体的に筋力が弱まっているんでしょうね。30代で体がさび付いているわけですよ」

筋肉は30歳あたりから年々1%ずつ低下していくそう。さらに、そのままにしていれば、筋肉の萎縮や、関節の可動域も狭くなって、体がどんどん“さび付いていく”というのだ。

「60代、70代になれば、30%も筋力は落ちているわけですよ。そうすると、何が起きるかというと、今さら運動しようと思っても、腰痛やひざ痛なんかの症状が出てしまって、運動自体が難しくなってくる。だから、30代から筋力維持しないとダメなんです」

ちなみに近年、50代以降に「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」(以下、ロコモ)が急増しているそう。「ロコモ」とは、筋肉や関節などの運動器に障害が発生し、歩行や日常生活に障害をきたす症状のこと。メタボリックに続く“新たな国民病”とも言われているのだ。

このように、30代からの運動が必要な中、特に野呂田氏が重要視するのは『足腰力』。『足腰力』とは「姿勢よく軽快に、そしてパワフルに歩き回れる足腰の力」だ。つまり、これが衰えなければ、老後、寝たきり状態になりにくい。しかし、現代の30代、40代はこれが低下しているという。

『足腰力』が低下すればするほど、歩行に疲れが出たり、膝や腰に負担がかかります。すると、さらに歩かなくなるという、負のスパイラルに陥る。40代くらいならまだ仕事で歩く機会はあるでしょうけど、50代や定年後になれば外に出る機会もグッと減り、寝たきりになっていくのです」

では、その足腰力をつけるためには、どうしたらいいのか。野呂田氏は「ただ歩けばいいのではない」という。

街には“悪い歩き方”のサラリーマンだらけ!

「最近は健康を気にしてウォーキングしている人もよく見かけますが、『歩き方』がよくない人が多い。スマホを見ながら歩いてる人に顕著ですが、歩幅が小さく、ひざが曲がり、背すじも曲がっていたり、体に余計な力が入った状態です。悪い歩き方のままだと、筋肉が鍛えられないだけでなく、膝や腰などに負担がかかって、腰痛などを悪化させてしまいます。」

街で見かけるサラリーマンの多くが、この“悪い歩き方”に当てはまるという。では、正しい歩き方とは?

「まず、胸を張って10m先を見ながら、膝を伸ばしたまま足を前に出してください。かかと→つま先の順で着地したら、親指を踏み込んで前に出る。この時、胸と腰がしっかり前に出れば問題ありません。膝を伸ばそうとすると、背すじも伸びて骨盤が正しい位置に置かれます。さらに、歩幅も大きく、慣れればスピードも上がります」

膝が曲がったり、足裏全体で着地や踏み込んでいる人は、この歩き方をすると、かなりぎこちない動きになるはず。

そしてもうひとつ、意識するのは「骨盤の動き」。足で歩くのではなく、骨盤で歩くのだ。

「ただ歩いていると、足だけ動かすことになります。骨盤を動かすことで、背骨を支柱に体がひねられ、自然と肩も動いて腕も振られるのです。足から上半身まで全てが連動して動いて『歩く』となるのです」

モデルウォーキングはまさにこの動き。骨盤を動かすというのがわかりにくい場合は、股関節の付け根、腰骨を前に出すイメージをするとやりやすい。

■続編⇒『大事なのは大腰筋! 姿勢が悪いと“正しく歩けない”理由』

●取材協力/野呂田秀夫先生メディカルクロッシングオフィス主宰。東京警察病院リハビリテーション科室長、顧問を経て現職。またNPO法人格闘メディカル協会会長、財団法人日本スポーツ・芸術サポート財団特別顧問。長年、総合リハビリテーション分野、スポーツリハビリでの治療ケアに携わる。近著は「一生歩ける! 寝たきりにならないための『足腰力』」。

(取材・文/鯨井隆正 撮影/五十嵐和博)