大手飲料メーカー各社がこっそり(?)投入している「自販機限定商品」。なぜ、自販機だけでの販売なのか? そして、どんな商品があるのか? 調べてみた。
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ジュースやお茶を買うのはコンビニばかり。そんな人でも、最近の自販機を見れば、ある“変化”に気づくはず。そう、スーパーやコンビニでは販売していない自販機限定ドリンクの増加だ。
自販機によって、また飲料メーカーによっては「自販機限定」という表記がされていなかったりするが、実は現在、国内の大手飲料メーカーのほとんどが自販機限定ドリンクを販売している。一体、なぜ?
現在、最も多くの種類の自販機限定ドリンクを販売しているサントリーで、自販機の商品開発を担当している岩田章宏氏に聞いた。
「実はかなり以前から、一部自販機のサイズに合わせた容量と容器に仕様を変更したり、販路の問題で自販機のみで販売されていた“実質、自販機限定”商品は存在していました。しかし、あらためて『自販機限定』と表記するようになったのは2015年3月からですね。消費税の8%引き上げに伴い、自販機の商品は10円単位で値上げを強(し)いられる。
そうなると、1円単位で価格を変更できる小売店と自販機では実質売価の差が広がる形になってしまうわけで、ユーザーの自販機離れが進むのではという危惧があったのです。そうした状況のなかで、自販機専用の魅力的な商品を開発していこうということになりました」
ちなみに、自販機限定ドリンクというと、まったくのオリジナル商品と、既存の人気ブランドの派生商品の大きく2タイプがあるけど、商品開発にあたっては、どんなことを重要視しているのだろう?
「消費税アップ以前から、自販機の市場は年々縮小傾向にありました。そこでユーザーのことを考えた商品づくりがおろそかになっていたのではと反省し、ユーザーが自販機で商品を購入する時間帯やシチュエーションを分析した上で、商品開発に取り組んでいます」
最近の一部の自販機にはログ機能があって、何時にどの商品がどれだけ売れたのかを後で分析することができる。
「例えば、ちょっと疲れた夕方にリフレッシュしていただくために開発したのが、『ぎゅっとすっぱいC.C.レモン』。クエン酸を増量したことによる酸っぱさが特徴のこの商品は、企業の入ったビルなど屋内設置の自販機で販売が好調です」
基本は“一期一会一飲”
対照的に今夏、屋外設置の自販機で売り上げ好調だったのが、鮮やかなグリーンがどこか懐かしい「POPメロンソーダ」だ。
「自販機の売り上げランキングの2位となった週もありました。普段は『サントリー天然水』が不動の1位で、2位がコーヒーなどで、炭酸系の飲料が2位になるというのは非常に珍しいことですね。もともと『POPメロンソーダ』は飲食店や漫画喫茶などにあるディスペンサーで人気の高い商品だったのですが、ここまで売れるとは思ってもいませんでした」
その結果、通年の定番商品として残ることになったそうだ。
でも、そんなに人気なら、コンビニでも売ったほうがいい気がする(笑)。
「今のところ、それは考えていません。ファンの方には申し訳ないのですが、自販機でしか飲めない味があるということで、ぜひ自販機で購入していただければ」
■今後も増加は確実。基本は“一期一会一飲”
お次はユーザー代表として、清涼飲料水評論家の清水りょうこ氏に自販機限定ドリンクの魅力を聞いた。
「単純に、限定の“味”と“プレミア感”は楽しいですよね。また、コンビニやスーパーで販売されている飲料って、早いときでは1、2週間で姿を消してしまうこともあるんです。でも、自販機で販売している商品は短くてもシーズンごとに入れ替えていることがほとんど。気に入った商品をある程度の期間、購入し続けることができるのは魅力ですね」
とはいえ、自販機限定ドリンクだって売れ行きが悪ければ当然、ラインアップから姿を消すわけですよね!?
「はい。ですから、自販機限定ドリンクも“一期一会一飲”が基本。目についたら、とりあえず買って、すぐに飲む。気に入ったら、また買うことで商品の寿命も延びるかもしれませんしね。
ちなみに、限定商品をコレクションしようと中身入りで何年も保存すると、乳成分が腐敗したり、炭酸の場合は缶が劣化して噴出、ペットボトルは変色・変質することも。中身を飲んでから保存しましょう」
実際にそういう経験があるのですね(笑)。
そんな自販機限定ドリンクの今後について、清水さんはこう語る。
「もっともっと増えると思います。話題性もありますし、メーカーとしても売り場の差別化を図れますからね」
これから、どんな新商品が出るのかにも注目だ!
★後編⇒『飲料メーカーがオリジナルで充実させる「自販機限定ドリンク」コレクション』
(取材・文/牛嶋 健[A4studio])