週プレNEWS TOP 連載コラム "本"人襲撃 最新作のテーマは冤罪。作家・柚月裕子が信じる人間の強さ 「人生は晴れと雨が半々なんだ」

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最新作のテーマは冤罪。作家・柚月裕子が信じる人間の強さ 「人生は晴れと雨が半々なんだ」

[2016年11月01日]

「『人生は晴れと雨が半々なんだ』と思えば、いつか必ず雨はやむし、晴れの日がやって来るって感じられると思うんです」と語る柚月裕子さん

悪徳警官を主人公に据えた『孤狼(ころう)の血』で今春、第69回推理作家協会賞を受賞した柚月裕子さん。

待望の最新長編『慈雨』は、かつて自分は真実から「逃げた」と後悔の念を抱く、元警察官の神場智則が主人公だ。

冤罪を巡る骨太な人間ドラマは、これまでの作品以上に重たく暗い。けれど、物語の終着地で現れる光景はこれまで以上に優しく輝いていた。

* * *

―群馬県警を定年退職した神場は、四国八十八カ所巡礼のお遍路の旅に出ています。同行する妻には「自分が関わった事件の被害者の供養のため」とお遍路の理由を説明しますが、本当の目的は任官中に犯したある過ちを悔いてのことでした。重たいスタートです。

柚月 夫婦水入らずの旅行なのにひとりでただウツウツと思い悩んでるおやじなんですけどね、奥さんから見れば(笑)。でも、神場は今回の旅を通して、これから先の人生をどう過ごしていくか真摯(しんし)に考え、悩み続けている。

お遍路で回る八十八カ所のお寺には、それぞれに謂(いわ)れがあるんですよ。例えば、七番札所の「十楽寺」は「人間が持つ八つの苦しみを逃れて、極楽浄土の十の楽しみを得られるように」という意味で名前がつけられています。

そして、それを知った神場は「八つの苦しみ」のほうに思いをはせて、刑事だった自分の過去や当時の葛藤(かっとう)や苦しみと向き合っていく。われながら、いい舞台設定を選んだんじゃないかなと思うんですが、どうでしょう(笑)。

―四国の山の風景がスイッチになり、16年前に群馬の山中で発見した幼女の殺害死体を神場は思い出していきます。当時、犯人を逮捕し刑務所に送りましたが、神場は「冤罪ではなかったのか?」という疑念を拭(ぬぐ)い去れずにいた。一方、かつての古巣で殺害方法が16年前の事件と酷似した新たな幼女殺害事件が発生します。同一犯なのではないか、だとしたら…とストーリーは進んでいきます。

柚月 この小説は16年前に起きた事件といま現在の事件、ふたつの事件を軸に進んでいきます。もちろん、「真犯人は誰か?」というミステリーの部分は大事にしていますが、それ以上に書きたかったのは、神場がかつて犯した過ちとどう向き合い、どうケリをつけて生き直していけるのか?ということでした。

過ちを犯したことのない人間なんて、どこにもいないと思うんですよ。だとしたら、神場が過ちを嘆いて悩んでもがいている姿は、読者の皆さんにとっても何かしらの手がかりになるんじゃないかなと思うんです。


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