「ハイテク捜査により、物的証拠があれば昭和の時代よりもかなり早く犯人にだどり着ける」と語る石川英治氏

携帯電話が犯罪に多用される昨今、警察はどんな方法で犯人にたどり着いているのか?

『週刊プレイボーイ』本誌で「石川英治のホワイトハッカーなんでも相談室」を連載中のホワイトハッカー・石川英治が、最新のハイテク捜査について語る!

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最新のハイテク捜査について教えてください!(40歳・公務員)

古い刑事ドラマを見ていると、現代の捜査方法と比べて“足で稼ぐ”捜査が多いな、という印象があります。『太陽にほえろ!』や『西部警察』の時代にはまだインターネットもありませんし、ハイテク犯罪も存在しませんでした。

誘拐事件が起こると刑事が被害者宅にテープレコーダーを設置し、電話を逆探知をするため「会話を伸ばしてくれ」とジェスチャーをするのがお約束でした。しかし、実は90年代後半から電話会社にデジタル交換機が導入され、発信元は電話会社に一瞬で表示されるようになっていたのです。

それでもドラマでそんな場面があり続けたのは、犯罪者に「逆探知は時間がかかる」と思い込ませるためでした。実際は電話がかかれば発信元は瞬時にわかり、捜査員が犯人の元へ駆けつけることができたわけです。

現在は犯罪に携帯電話が多く使われています。その場合は基地局からの受信電波を三角測量して発信元を割り出す方法や、電話会社の位置情報サービスを応用してGPSから位置を特定します。

GPSの位置情報を許可するほどの間抜けな犯罪者はいないでしょうが、端末の位置情報をどうするかは電話会社の交換機が決めていますので、GPSを“不許可”にしていても位置がわかるのです。

しかし、iPhoneは交換機に依存する方法に準拠していないため、この方法が通用しません。iPhoneで110番通報した経験がある人はわかると思いますが、iPhoneではGPSによる位置情報を許可していても、警察には情報が届かないのです。

人気ドラマ『CSI:科学捜査班』の捜査が日本でも

さて、最新のハイテク捜査ですが、米国の人気ドラマ『CSI:科学捜査班』で登場するような捜査方法が日本でも採用されています。弾道検査はレーザーポインターで入射角も正確に出ますし、発射残渣(ざんさ)からは拳銃を撃った人間が特定できます。紙からも指紋は検出可能で、筆跡や音声での本人確認も精度が高いので、物的証拠があれば昭和の時代よりもかなり早く犯人にたどり着けます。

また、監視カメラも街頭カメラや公的交通機関に設置されているカメラだけではなく、タクシーに搭載されたドライブレコーダーもあります。現在のタクシーはアナログ式の走行管理(タコグラフ)ではなく、ドライブレコーダーと連動した走行管理システムを使っていますので、犯罪の発生時間に現場付近を走行していたタクシーからの情報提供が容易になりました。

この先、通信網がより高速化して情報を保存していくストレージがより大容量化していけば、日本中が録画され、犯罪が行なわれた時間に遡(さかのぼ)って映像を確認できる時代が訪れるかもしれませんね。

●石川英治(いしかわ・ひではる)1969年生まれ。現役の“ホワイトハッカー”で、ネットワーク犯罪評論家。不正アクセス禁止法の施行(2000年2月13日)以前は、バリバリのハッカーとしてやんちゃなことも