「アイドルに必要な要素はひと言でいえば“何か気になるコ”」と語る都倉俊一氏

ピュアで、美少女で、透明感があって…。正統派アイドルはいつも僕らの憧れだった。

今年50周年を迎えた『週刊プレイボーイ』45号では、70年代から現在まで、彼女たちを間近で見てきた人物とともに“正統派アイドル”の歴史をふり返っている。

今回は、山口百恵、ピンク・レディーなどに曲を提供した作曲家/プロデューサーの都倉俊一氏にアイドルの原点について聞いた。

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“アイドル”という言葉が使われだしたのは、1970年頃からでしょう。それ以前に人気のあった吉永小百合さんや美空ひばりさんなどは“スター”と呼ばれていましたから。

スターは映画でしか見られないなど、一般の人の手の届かない場所にいる人。一方、アイドルは手の届きそうな存在で、親近感のある人のことだと思います。

僕は作曲家として、山口百恵やピンク・レディー、中森明菜を輩出した『スター誕生!』というオーディション番組の審査員をしていました。この“スタ誕”が今のアイドルという言葉を生み出しました。

スタ誕は、一般人が応募して曲を歌い、審査員が合否を決めて、決戦大会で芸能プロダクションやレコード会社がそのコをスカウトするという番組です。そして、デビューしたアイドルは今度はプロとして番組に出演したりする。

一方で視聴者は、それまで素人だったコが芸能界に入ってプロになり、活躍していく姿をリアルタイムで見ていくことになる。それは「近所にいる知り合いのコが、芸能界に入った」という感覚に近いものがあると思います。

だから所属する芸能プロダクションが決まってレコードデビューすると、“隣のお嬢ちゃん”を応援するためにみんなレコードを買っていたんです。

それが“アイドルは手の届きそうな存在”という理由です。時代が何十年も過ぎた今でも、それは変わりないはずです。

どんなコをアイドルになる人材として合格させたのか?

では、僕らはどんなコをアイドルになる人材として合格させたのか。アイドルの要素とは何か?

これは、言葉で説明するのはとても難しいのですが、ひと言でいえば“何か気になるコ”です。ハッキリ言ってしまえば、番組で一曲歌ったくらいでは、そのコの本当の実力なんて判定できない。

でも「もう1回会ってみたい」「違う面を見てみたい」という気持ちにさせるコがいる。「次に来たときにはどんな曲を歌うんだろう」と興味を持たせるコが正統派アイドルに必要な要素だと思います。

また、最近は歌手のことをアーティストと呼ぶことが多いですが、アーティストは芸術家という意味ですから、聴く人も多少かまえて接する必要があります。

でも、アイドルはエンターテインメント、娯楽です。特別な知識は必要なく、多くの人が楽しめる存在でなくてはならないと思っています。そんな正統派アイドルの活躍に期待しています。

●都倉俊一(作曲家/プロデューサー)1948年生まれ。山口百恵、ピンク・レディーなどに曲を提供。現在はコーラスユニット「STAR CRUISERS」をプロデュース中

(取材・文/村上隆保 撮影/村上庄吾)