80年代のアイドルは歌だけでなく、お芝居やCM、文章など多方面で活躍した(写真はイメージです)

ピュアで、美少女で、透明感があって…。正統派アイドルはいつも僕らの憧れだった。

今年50周年を迎えた『週刊プレイボーイ』45号では、70年代から現在まで、彼女たちを間近で見てきた人物とともに“正統派アイドル”の歴史をふり返っている。

第2回目は、小泉今日子などのプロデュースを手がけた秋山道男氏に聞いた。

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70年代のアイドル界は『スター誕生!』などで芸能プロダクションやレコード会社など裏方の姿が見えてきた時代だった。そして80年代になると今度はスタイリストやヘアメイク、デザイナー、写真家などがアイドルを真ん中に活躍する時代に移っていく。

80年代はバブルに向かって、トレンドが次々と移り変わっていったからだ。アイドルは自分のイメージやファッションをその時々のトレンドに合わせなければ輝き続けることができなかった。それは現在も続く、時代も人も飽きっぽい「消費時代」の始まりでもある。

僕は小泉今日子さんと仕事をしたけれど、それまでミドルヘアだった彼女が、突然、髪を刈り上げにして、ホットパンツ姿に変身したのは右の理由があったからだ。みんな「ダサいのはイヤ」だった。

そして「誰々ちゃんが着ているのはどこどこの服だ」ということが話題となり、「私も同じ服を着てみたい」と思う若者たちが増えていった。この時代、同じ服を着れるくらいの距離感が大切だった。アイドルは70年代より、さらに身近な存在になっていった。

また、80年代のアイドルは歌だけでなく、お芝居やCM、文章など多方面で活躍した。するとドラマで泣いたり、怒ったりしている顔が歌っているときにイメージされ、個性が立体化されて人間味が増した。アイドルが多面性を発揮しても「人って歌だけ歌って生きてるわけじゃないもんね」と若者たちは納得していた。

生活感や人間味を出すこともアイドルの条件のひとつ。この時代、不器用なアイドルは生き残ることができなかった。

では、時代を超えた正統派アイドルの条件って?

僕は「弱者の側につくことができる人」「弱者の味方」が正統派アイドルだと思う。なぜかというと、この世の中の多くの人が弱者だから。

弱者とは「恋に破れた人」「仕事がうまくいかない人」「行き場のない人」「権力や体制に負けてしまう人」「死にたくなった人」などのこと。そういう迷子のような人たちを理解できることが大切だと思う。だから、正統派アイドルといわれる人は、みんな“優しい”。

そして、正統派アイドルは、弱者を助ける人間としてのパワーがある人。生命力が伝わってくる人。だから好きなアイドルがいると、充実感や満足感が感じられて世界が楽しく見えてくるでしょ。

結局、人間にはアイドルというものが絶対的に必要で、なくてはならないものなんです。なぜならば、人は弱くて孤独で飽きっぽいものだから。

●秋山道男(プロデュサーほか)1948年生まれ。資生堂やカネボウや西友の広報誌、チェッカーズ、小泉今日子、無印良品、日本新党…多くの新ブランドや新型才能等のデビュー&プロデュースを手がける。

(取材・文/村上隆保)