暴走するモンスタークレーマーたち

文科省の発表によると、2014年にうつ病など精神疾患で休職した公立学校の教師は、5045人。これは1990年に比べると、約5倍近くになるという。

『なぜあの保護者は土下座させたいのか』(教育開発研究所)の著者で、苦情対応アドバイザーの関根眞一氏がこう話す。

「教師が精神疾患で休職してしまう一番の原因は保護者などからの苦情です。件数が増えていることに加え、その内容も過激化、悪質化している。例えば、最近はこういった事例がありました」

(1)出産した女性教師に“謝罪文”を書かせる

「結婚したばかりの女性教師が、中学3年の担任に就任。すると、保護者会の役員が『今年、子供たちは受験を控えており、よけいな刺激を与えたくない。だから、今年の出産はやめてほしい。“出産計画誓約書”を書いてください』と要求。教師は署名に応じました。しかし、それから数週間後、女性教師の妊娠が発覚。誓約書を書かされたときは、まだ妊娠していないと思っていたんです。

だが、保護者たちは怒り狂った。校長との面会を求め、約束違反として、その女性教師に『生徒全員に“謝罪文”を書け』と強要しました」

その後、この女性教師は「学校だより」に謝罪文を掲載、クラス全員に配布された。

(2)「通知表を書き直せ!」教師を脅す父親

「小学5年生の男子生徒の父親が通知表に不満があると校長室に乗り込んできた。でも、その生徒は授業中に寝てばかりで宿題もほとんど出さないサボリ魔でした。校長がそのことをやんわり伝えると父親は激怒。『ウチの子を問題児扱いするのか! 志望校に落ちたら学校のせいだ!』と怒鳴りつけ、通知表を一番高い評価に改めるよう求めてきた。

その後も父親から『通知表を書き直して届けろ』と一日置きに電話が入り、さらには『私は知り合いに弁護士がいて名誉毀損で訴える用意もある』と……」

「天気が悪いのは校長のせいだ!」

(3)「天気が悪いのは校長のせいだ!」

「ある小学校の運動会が雨で延期になったんですが、父親が校長室にやって来て、『なぜ中止なんだ!』と猛抗議。校長は、天気は学校ではどうすることもできない、と言いましたが、『無責任だ! そういえば、この前の遠足も雨だった。校長が雨男なんだろう。どう責任を取るんだ!』と怒りを爆発させた。

挙句の果てにその父親は財布からレシートを取り出し『運動会のために早朝から作った家族全員分の弁当の材料費を払え!』と理不尽なことを言いだしたんです。この父親の剣幕に動揺した校長は、ポケットマネーから千円札数枚を渡してしまいました」

あまりにも一方的で独善的な苦情の数々。しかし、これは“特殊な例”ではない。日本ではいま、「モンスタークレイマー」と呼ぶべき人たちが学校以外でも増えているのだ。

発売中の『週刊プレイボーイ』48号では、クレイマーに疲弊させられるニッポンのいまをテレビ、病院、飲食店、メーカーなど、各業界の事例とともに紹介!! 是非ご覧いただきたい。

(取材・文/興山英雄)

■週刊プレイボーイ48号「『裸芸は低俗』だとTBS『謝肉祭』がBPO審議入りだってさ!! クレーム大国ニッポンに異議アリ!!」より