最終予選はまだ折り返し地点。厳しい試合が続くのは間違いないと語るセルジオ越後氏

勝って本当によかった。日本代表がロシアW杯最終予選、前半ラストの一戦となるサウジアラビア戦に2-1で勝利した。

グループ首位のサウジに対して、負ければ後がなくなる日本の選手たちは闘争心をむき出しにして、最後まで集中してプレーした。キックオフ直後からしっかりプレスをかけて主導権を握り、PKと流れのなかから1点ずつ奪った。PKはラッキーな判定だったし、最後に失点してバタバタしたけど、ホームらしく前半から飛ばしたことが功を奏したね。

ハリルホジッチ監督も、負ければ解任という窮地に追い込まれ、ようやく決断を下した。本田、香川ら“不動のメンバー”をベンチに置き、コンディションのいい選手を優先して起用した。クラブで試合に出ていない選手が、代表の試合で活躍できるはずがない。単純明快だよ。そうした“常識”を、監督も選手もメディアもファンも確認できたのは大きな収穫だ。

特に決勝点を挙げた原口の活躍は素晴らしかった。体を張ったプレーと豊富な運動量でチームを牽引(けんいん)。最終予選4試合連続ゴールを奪った攻撃面だけではなく、守備での貢献も大きかった。本当によく走っていたね。今や日本代表は完全に彼のチームだ。

FWの大迫も存在感を発揮した。ワントップに求められる相手DFを背負ってのプレーをこなし、ペナルティエリア内で勝負も仕掛けられる。相手選手とやり合う気持ちの強さも見せた。ケルンではトップ下でプレーしている事情もあり、フィニッシュの部分で課題を残したけど、次もプレーを見てみたいと思わせた。また、前半で交代した久保も何度かチャンスをつくり出していたね。

看板選手は重要じゃない

一方、後半から出てきた本田は今回も物足りなかった。香川も同様だ。今回のスタメン落ちで、これまでチームを支えてきた彼らのプライドは傷ついただろう。でも、これが代表チームの本来あるべき姿だし、彼ら自身もいい刺激をもらったと感じているんじゃないかな。

原口があれだけのプレーを見せられるのは、名門とはいえないけど、より高いレベルを目指そうとしているヘルタ・ベルリンの主力としてプレーしているから。“看板”は重要じゃない。だから、クラブで試合に出られない選手は出場機会を求めて移籍すればいい。シンプルな話だ。

本田にしても、香川にしても、岡崎にしても、まだまだ老け込む年齢じゃない。それに彼らが絶好調だった時の日本代表は、今回のサウジ戦の日本代表よりも強かった。今は批判も多いけど、コンディションさえ取り戻せば、スタメン争いをする力はある。原口や大迫にもいい緊張感を与えられる。そういう意味で、彼らが復活するかどうかが、今後の代表のレベルアップのカギを握るかもしれない。

実力のある選手の中から、調子のいい選手を起用する。ハリルホジッチ監督には、この方針の下でのチームづくりを今後も継続してほしい。

サウジ戦に勝ったことで、ひとまずは穏やかな気持ちで年を越せる。とはいえ、最終予選はまだ折り返し地点。B組は勝ち点1差の中に日本、サウジ、オーストラリア、UAEの上位4ヵ国がひしめく大混戦。しかも、日本はUAE、サウジとのアウェー戦を残している。厳しい試合が続くのは間違いない。覚悟して見守りたい。

(構成/渡辺達也)