アメリカのトランプ次期大統領が、「大統領就任初日にTPPを離脱する」ことを表明した。
安倍首相は各国の先頭に立って説得していく構えだが、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、「アメリカ一辺倒ではない、したたかな外交をすべき」と訴える。
* * *
TPP離脱を宣言しているアメリカのトランプ次期大統領に、安倍政権がしきりに再考を促している。
TPPはアベノミクス成長戦略の目玉であり、その発効を前提に農業対策などの巨額予算が組まれている。その予算をばらまくことで、次の衆院選を有利に戦うというのが安倍政権の思惑だった。それらの予算の根拠がすべてなくなってしまうので、TPPは諦めましたと宣言できないのだろう。
しかし、懇願すればするほどトランプ氏から「安倍政権はオレに逆らえない」と、その足元を見透かされ、今後の様々な日米交渉で過大な譲歩を要求されかねない。ならば、ここはトランプ次期政権を逆に突き放すような外交も必要ではないか?
例えば、同じくTPP参加国のオーストラリアは「アメリカがTPPを承認しない場合、それによって生じた空白はRCEP(アールセップ)(東アジア地域包括的経済連携)によって埋められることになるだろう」(ビショップ外相)と牽制している。
RCEPは中国が締結を目指す経済連携構想で、16ヵ国(ASEAN10ヵ国+日中韓+オーストラリア、ニュージーランド、インド)が参加している。実現すれば人口34億人、GDP20兆ドルの巨大経済圏となるが、そこにアメリカの姿はなく、TPPによって締結の見通しは立っていなかった。
つまり、オーストラリアはアメリカと中国を天秤(てんびん)にかける姿勢をちらつかせ、トランプ次期政権から外交的妥協を引き出そうとしているのだ。
オーストラリアだけではない。多くのアジア諸国が同じ戦略を採用している。中国になびくと見せかけてはアメリカから支援を引き出し、アメリカ支持をちらつかせては中国の援助を手中にしているフィリピンのドゥテルテ大統領はその好例だろう。