「2017年、ブレイク必至」と噂される新世代女芸人コンビ、Aマッソ(左から加納愛子、村上愛)

王道のどぎつい関西弁とキレッキレのワードセンスによる尖りまくった笑いで、昨年あたりからジワジワと知名度を上げ、「2017年、ブレイク必至」と噂される新世代女芸人コンビ、それがAマッソだ。

本日、決勝戦が開催される『M-1グランプリ2016』ではセミファイナリストに進出、放送作家の鈴木おさむ、クリエイター・いとうせいこうをはじめ、“芸人泣かせ”?で知られる黒柳徹子までもが太鼓判を推すふたり。一体、何者なのか?

加納愛子村上愛による“幼馴染コンビ”の素顔を探るべく、『M-1』敗者復活戦を目前に控えたふたりを直撃しました!

―まもなく『M‐1グランプリ 2016』敗者復活戦ですが、最近、Aマッソの存在を知った人が大勢いるはずなんで、まずはふたりの人となりから紹介できたらと思います。

加納 いや、でもホントにこの1年というか、ごく最近ですからね、TVにちょこちょこ呼んでもらうようになったり、街を歩いてて声掛けられるようになったのって。

村上 まだまだです。

加納 こいつなんか、まだ普通にバイトしてますから。

村上 最近はライブとかも増えて、行ける時だけ行ってますけど、5年ぐらい同じ居酒屋で働いてるんで。今度、お店いらっしゃいます?

加納 誘うな、誘うな。

村上 飲みません、一緒に?

加納 あほか。仕事で取材に来てはんねんから。

―いやいや、それは是非(笑)。そもそも、ふたりは小学生の頃からの幼馴染なんですよね。

加納 そうですね。生まれはこいつが住吉で、私が阿倍野です。小学校5年の時に私が転校で住吉に移って、そこで初めて会って。

村上 住吉は大阪市内のちょっと南のほうで、あんまり柄はよくないエリアなんですけど、うちらはおとなしいっていうか、まったく目立ってなかったと思います。

―Aマッソの漫才って、ちょっとおっかないぐらいゴリゴリな関西弁が特徴だと思うんですけど、元ヤンキーとか、育ちが悪かったっていうわけではないんですね。

村上 なんのやんちゃもしてないよなぁ?

加納 そもそも私、転校する前はいじめられっ子やったし(笑)。なんか、ジャイ子みたいな女がいて、いつかそのうち見返したるとは思ってましたけど。たぶん、小さい頃からコテコテの漫才をよく見てたんで、自然と影響を受けたんじゃないですかね。

―やっぱり当時から芸人に対する憧れがあったんですか?

加納 なんとなく、将来の夢に「吉本新喜劇に入りたい」って書いてた気はするなぁ。

村上 せやな。相方と友達4人くらいで一緒に漫才やったりしてました。

初めて笑い飯を観た時、ショックが一番デカかった

Aマッソ・加納愛子

加納 まあ、漫才っていっても、当時流行ってたお笑い番組をまんまパクったようなネタだったと思いますけどね。『ごっつ(ええ感じ)』とか。

村上『笑う犬(の冒険)』とか、よく観てたんで。そこから好きなワードを持ち寄ってね。

加納 でも、中1か中2ぐらいん時に『M‐1』で初めて笑い飯を観た時、ショックが一番デカかったかな。

村上 もう、ほんまに衝撃。めっちゃおもろかったもん。

加納 あそこまでアホになれる人がおるんやって、感動して(笑)。今でもものすごい影響受けてます。

―じゃあ、芸人になろうと声をかけたのはどっちから?

加納 大学時代、暇やったんで、私から。でも「芸人になりたいねん。付き合ってくれ」みたいな感じではなくて、普段から遊んでる延長で「なんかおもろいことないかなぁ」「1回、お笑いライブでも出てみようか?」って、そんなノリで。学生でも出れるインディーズライブに一緒に出たのがキッカケですね。

村上 だけど、最初に出たライブ、1組あたりのネタの持ち時間が1分しかなくて。

加納 しかも初めてのことやし、ネタの作り方なんてわからんから、「1分で何ができる?」「じゃあ、1人30秒ずつ漫談してみようか」って、とりあえず。

―30秒漫談ですか。

加納 ひどいもんですよ。私は『ヘビひと筋』っていうお題やったかな、「ヘビ、ヘビ、ヘビ、ヘビ…」って言い続けてた人が、途中で間違って「ハブ」って言うてもうて、自分で自分を殴るっていう、それだけの…ネタどころか、もう漫談にすらなってない。

村上 それ、何がおもろいん?

加納 うるさいわ。で、30秒たったら「キ~ッ!」って奇声上げて相方に交代して。

村上 私は、赤ずきんちゃんが上半身と下半身のバランスが悪すぎて「スキニーパンツが似合わんからイヤや」ってダダこねるっていう、かわいい漫談やりました。

加納 かわいないわ! そっちこそ、何がおもろいねん。

村上 ほんまやな(笑)。それで最後ふたり揃ってキメポーズを取っておしまい。

―場の空気が想像つきますねぇ。

加納 ゼロ笑いですよ、1分間(笑)。「コイツら、何がしたいん?」って。

村上 でも、そんな調子やのに、そのあと何回かインディーズライブに出てたよな(笑)。

Aマッソ・村上愛

クビになったんです、事務所…

―その後、大阪松竹の養成所に入られてますよね。それはまたなんで? 吉本新喜劇や笑い飯が好きだったら、NSCを志望しそうなもんじゃないですか。

加納 スカウトされたんです。

村上 インディーズライブを松竹の方が見にきてて、声かけられたんです。

―ってことは、プロの目からしたら、ふたりにキラリと光るものがあったと。

加納 そんなん、ちゃいますって。ウチらが入った年から養成所に「女芸人コース」っていうのを作るために一期生を集めてたみたいで(笑)。

村上 入ってみたら、芸人志望の女のコだけじゃなくて、バラエティの勉強するために入ったタレント志望のコもおったし(笑)。しかも、そこでめっちゃ怒られたんですよ。

加納 とにかく(講師陣に)ネタ見せ、ネタ見せの毎日で、そのたびに「おもんない」「意味わからん」って怒られ続けて、ライブにも出れんし、だんだん行くのがイヤんなって、最終的に飽きてもうて。

村上 結局、1年で辞めました。

加納 でも、ちょうどその頃、新宿に松竹の新劇場(角座)がオープンするタイミングと重なって、作家さんから「東京のほうが出番も増えるんちゃうか?」って勧められて、「ちょうどええわ!」みたいな感じで上京しました。

―そして東京の松竹芸能所属の芸人として、心機一転…。

加納 かと思うじゃないですか? クビになったんです、事務所。

―えーっ。

加納 まあ、単純にうちらの態度が悪かったんです。結果を出してないくせに、たまに事務所から振ってもらえるオーディションすら断ったりしてて。女芸人やからセクシーアピールじゃないけど、水着審査とかあって、うちら、絶対ムリやし(笑)。

村上 バニーガールの衣装でネタやれとか(笑)。

加納 で、「そんなん、ようやれへんわぁ」っていう態度をとり続けてたら、「もういてもらわなくて結構です」って言われて、「じゃあ出て行きます」って。

“キンタロー。を舞台上でシバいた”伝説!?

―聞くところによると当時、同じ事務所のキンタロー。さんを舞台上でシバいたっていう逸話も残してるらしいじゃないですか。

加納 いやいや、それは誇張して言ってるだけですって(笑)。

―誇張?

加納 一度、ライブで一緒になったキンタロー。がトークコーナーでヘンなボケして、ツッコミのつもりで私が後ろからケツ蹴り上げたら、あとでマネージャーからブチ怒られたっていう(笑)。それをネタとしてどっかで喋っただけで。

村上 まあ、見事なケリやったけどな(笑)。

加納 「ウチの商品を傷つけないでくれ」って本気で怒られて(笑)。まあ、それもクビになった理由のひとつなんでしょうね。

―そこで現実の厳しさを知り、鼻っ柱をへし折られたという感じですか。

村上 それが、そうはならんくて。ヘンに楽天的なんかなぁ、ただのフリーターになったんですけど、自信だけはあって。

加納 バイトしながら月20本とか25本とかライブ出て、キツイのはキツかったんですけど、並行して、自分ら主催のホームライブっていうか、アングラな公演を定期的にやってたんです。そこでゴリゴリのお笑いファンとか、コアなハガキ職人みたいな人たちの前で大喜利やったりしてたんですけど、そこでは結構ウケてて。

―自分たち、まだまだいけるんじゃないかと。

加納 センスは信用してる人たちだったんで。あと、その当時、いわゆるボケとツッコミの役割分担が決まってない、ダブルボケのネタを初めて書いてみたり、いろいろ実験的なこともやってたんです。そしたら「腐るな。おまえらはそのままで絶対、結果出るから」って言ってくれる先輩もいて。

村上 そうこうしてるうちに、よく一緒にライブ出てた人がワタナベ(エンターテインメント)所属で「行くとこないんやったら、ウチ受けてみたら?」って誘ってくれて。

加納 そうなんです。そっからはトントン拍子じゃないけど、ライブを重ねてるうちに、去年の『笑けずり』(NHK BSプレミアムで放送された、お笑いドキュメンタリー番組)もそうやけど、事務所からだんだん仕事のチャンスをもらえるようになって、それで今に至るっていう感じです。ザックリ言うたら。

M-1敗者復活戦の秘策とは?

―なるほど。Aマッソって芸歴はそんなに長くないのに、意外と苦労人というか、地味に紆余曲折があったんですね。

加納 地味にって(笑)。

村上 これからですよ、まだ。

―ちなみに、去年の『M-1グランプリ』はトレンディエンジェルが敗者復活戦からの大逆転優勝を果たすっていう、ドラマチックな展開があったじゃないですか。敗者復活戦に向けて、秘策とかあったりするんですか?

加納 えっと、新ネタやります。

―攻めますね、最後まで。

加納 準決勝で落ちて2時間後に書きました、ムカついて(笑)。いや、ムカついてというか、決勝に残った8組はたぶん(準決勝と)同じネタでいくんやろうけど、うちらは別のネタを大勢の前で試せるチャンスじゃないですか、いいように捉えたら。だから、何がなんでも勝たなあかんというよりは…。

村上 かましたい!

加納 そう、かましたいっていう感じ。今年は最低でも準決勝出場っていう目標でやってきて、それは達成できたけど、まだまだ実力不足やなって感じてるんで。とりあえず敗者復活で初めてうちらを見た人に印象点を残したいです、来年に向けて。

村上 楽しみです、めちゃめちゃ。

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ということで、本日の行方は!? M-1敗者復活戦の結果を踏まえた【後編】は、ネタの創作法からふたりのプライベートな部分まで掘り下げたインタビューを配信

(撮影/中川有紀子)

■Aマッソ(エーマッソ)2010年結成。加納愛子、1989年生まれ、大阪府出身。ネタ作り、ツッコミ担当。村上愛。1988年生まれ、大阪府出身。ボケ担当。コンビ名「Aマッソ」の由来は「造語です。“A”は愛と愛子のイニシャルで、“マッソ”は『キン肉マン』の“マッスル”から取ってきました」とのこと。静岡朝日テレビ「SunSet TV」で定期配信中の『Aマッソのゲラニチョビ』が好評につき地上波へ進出決定