浦和に勝利して2017シーズンの王者となった鹿島アントラーズ

今シーズンのJリーグ(J1)年間チャンピオンを決めるチャンピオンシップ(CS)の全日程が終了し、鹿島アントラーズの7年ぶり通算8度目の年間優勝が決定した。

CS準決勝で年間2位の川崎フロンターレを0-1で破った年間3位の鹿島は、決勝戦で年間1位の浦和レッズと対戦。11月29日に行なわれた鹿島ホームでの第1戦は浦和がアウェーゴールを奪って0-1で勝利したが、迎えた12月3日の浦和ホームでの第2戦は1-2で鹿島が逆転勝利。2試合合計2-2のタイスコアで終わったものの、大会規定によりアウェーゴール数で上回った鹿島が年間チャンピオンの称号を手にすることとなった。

「我々は年間で鹿島よりも(勝ち点で)15ポイントも多く取ったチームとして、この(CS)決勝戦を戦った。1-0で勝利したアウェーゲーム(第1戦)、そして1-2で負けた今日のゲーム(第2戦)と、2試合合計は2-2だと私は思っている。ただ、レギュレーション上、アウェーゴールが優先されたことで我々が負けてしまった。しかし、どこに15ポイント多く取ったチームのアドバンテージがあるのかわからない」

試合後、そう語って落胆の表情を浮かべたのは敗軍の将ミハイロ・ペトロヴィッチ監督だ。「今回のCSで最もアドバンテージを得ていたのは年間2位の川崎フロンターレだった」とも言い切る同監督は、大会が始まる前から今回のレギュレーションに異議を唱えていた。それだけに、アウェーゴール数で敗れたことに対する悔しさとレギュレーションに対する不満は想像に難くない。

しかも、である。実は浦和は昨シーズンもCSのレギュレーションに泣かされた“被害者”だったのだ。

年間2位だった昨シーズン、浦和はCS準決勝で年間3位のガンバ大阪とホームで対戦。今回のCSと同じく1発勝負で行なわれた準決勝だったが、違っていたのは引き分けだった場合は延長戦、それでも決着がつかなかった場合はPK戦を行なって勝敗を決するというレギュレーションだった。

果たして試合は1-1のタイスコアで延長戦に突入し、結局ガンバ大阪が1-3で延長戦を制して決勝戦に進出。もし今シーズンと同様に「準決勝で引き分けだった場合は年間順位で上回るチームが勝利する」というレギュレーションであったなら、浦和が年間1位サンフレッチェ広島との決勝戦に駒を進めていたことになる。

2年連続でレギュレーションに泣かされたペトロヴィッチ監督が「我々は年間1位の成績で、鹿島とは15ポイント差をつけていた」と強調したくなるのも当然だ。

とはいえ、その一方で今回は昨シーズンよりも年間成績(順位)を優先し、そのアドバンテージをより大きくしていたことも忘れてはいけない。

準決勝の延長戦を廃止したのは昨シーズンの準決勝の結果を受けてのものだし、決勝戦でいえば、昨シーズンはアウェーゴール数が並んだ場合は延長およびPK戦が用意されていた。今シーズン決勝は、アウェーゴール数で並んだ場合は年間順位で上回るチーム、つまり浦和が優勝することになっていたわけで、昨シーズンの広島よりもアドバンテージを得ていたことになる。

2ステージおよびポストシーズン制は今回で幕を閉じる

その点において、やはり浦和とペトロヴィッチ監督は2年連続して“運”に恵まれなかったと同時に、レギュレーションに合わせた戦い方ができなかったと言うこともできる。少なくとも、1-1で迎えた後半早々にFW高木俊幸を下げて守備的MF青木拓矢を投入した采配は、この試合で迎えた結末を誘導するような消極策だったことは否めない。逆転された後、李忠成という勝負強い切り札を使えなくなった原因にもなった。

レギュレーションに対する不満はわかるが、やはり現実で起こったことに対する反省材料もあったはず。それこそが、来シーズンのリベンジの糧(かて)となるのだから。

いずれにしても、“強さ”でいえば明らかに浦和が年間王者に相応(ふさわ)しかったが、Jリーグの記録としては2016年の年間チャンピオンは鹿島になった。そして昨シーズンに導入された2ステージおよびポストシーズン制は今回で幕を閉じることになる。来シーズンから再び従来の1ステージ制に戻るからだ。

振り返れば、2013年9月。Jリーグは多くの批判を受ける中で2015年からJ1における「2ステージ+ポストシーズン制」の導入を決定した。Jリーグ曰く「集客と収益アップのために」やむを得ない決断だったようだが、当時「少なくとも5年は行なう」(大東前チェアマン)と強硬な姿勢で踏み切ったにも関わらず、結果的にわずか2年で1シーズン制に戻すことになった。失策を自ら認めた格好だ。

それは来年度から英国のパフォーム・グループ社と年間約210億円と言われる多額の放送権契約を結んだことと大きく関係している。この契約によってJリーグの財政が急激に潤うことは間違いない。今後はJリーグがどのようなお金の使い方をして、よりよいリーグを育てていくのかという点に注目が集まる。

奇しくもCS決勝後の会見でペトロヴィッチ監督は「もしJリーグに日本代表選手が集まるチームがあれば、(各チームの)違いは生まれてくると思う。ただ、そういった選手が分散している中では、各チームのレベルが拮抗している。だから、どちらに(勝敗が)転ぶかがわからない」と、現在のJリーグにおける各チームの力関係を語った。

しかし、来シーズン以降はその傾向にも変化が起こるかもしれない。ひとつの側面をいえば、強いチームはより多くの資金を手にし、よりレベルの高い選手を集めることができるからだ。従って、中国スーパーリーグやMLS(アメリカのプロサッカーリーグ)には及ばないにしても、今後は世界に名だたる世界的スター選手がJリーグの舞台でプレーする可能性も十分に考えられる。

今回のCSは、多くのファンが消化不良のまま閉幕した印象が拭(ぬぐ)えない。それだけに、Jリーグはファン離れを防ぎ、資金を有効活用して魅力あるリーグを育てるための施策をさらに考える必要があるだろう。

(取材・文/中山 淳 撮影/佐野美樹)