無常感と厳粛さのなかで迎える年越しの味わいは、直前までのお祭り騒ぎがあってこそ

『第67回NHK紅白歌合戦』の出演者が発表された。

一説にはNHKが番組の「若返り」を図ったともいわれるが、細川たかし(辞退)、和田アキ子ら多くの大御所の名前が消えた2016年の紅白が、いつか「ターニングポイント」として語られる日が来るのだろうか。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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『NHK紅白歌合戦』のない年末を考えてみました。…おっと、それでは『ゆく年くる年』の魅力が半減してしまう! あれこそが年越しのクライマックスだというのに。

記憶のなかの大晦日のリビングルームには、よく知らない演歌が流れており、おせちの煮物の湯気が漂っていました。普段は見たことないけど、毎年『紅白』に出ている歌手とか、親だけやたら盛り上がる歌とか、私も子供なりにジェネレーションギャップ込みの出し物として親しみを感じていたように思います。

古典的でド派手なお祭り騒ぎが大団円を迎えて、急にシーンとなった画面から流れる除夜の鐘の音は、染みますよね。千年変わらぬ古刹(こさつ)の甍(いらか)に今年最後の雪が降り、画面の隅にゼロが3つ並んで、「さっき」は「去年」に変わってしまう。あの無常感と厳粛さのなかで迎える年越しの味わいは、直前までのお祭り騒ぎがあってこそ。

世代交代は盛者必衰の理(ことわり)だけど、やっぱりどこかに、毎年あの人がそこにいる、という懐かしさはあってほしいです。もう聖子ちゃんも、そういう存在なんだなあ。

●小島慶子(Kojima Keiko)タレント、エッセイスト。ここ数年、年末はオーストラリアの家族の元に戻っているが、夏の年越しのせいか、年が改まる切なさは感じない。オーストラリアでは、年明けと同時にシドニー港の花火の映像が定番