愛らしい笑顔も人気の畠山選手が真剣に訴える日本ラグビーの未来に対する危惧とは…

あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』

前回、女優・タレントの倉持明日香さんからご紹介いただいた第34回のゲストはラグビー日本代表でサントリーサンゴリアス所属の畠山健介さん。

ラグビーブームが再燃した昨年、自身も代表の中心選手として活躍し、メディアに登場する機会も増えた“愛されキャラ”…と思いきや、本人から以前は「我が儘で性格もよくなかった」と意外なカミングアウト

そして前回は、期待される2019年W杯の日本開催にも話題が及んだが、現場からは不安と危惧の声が高まっているというリアルな本音がーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

―でも、それは現場からも声を上げて主張を伝えていかないと…風通しよく、みんなでイイ舵取りができるようにね。

畠山 そうやって現場からも関係者やファンの方からも声が出てるのを、どこが吸い上げるのかっていうのも大事だと思いますね。決定機関みたいなところがないと、どこに向かって吠えてるのか、ただ騒いでるだけになっちゃうので。やっぱ、受け皿みたいなものが僕は今欲しいなって思いますよね。

まぁ当然、協会でもいろんな役職の方がいらっしゃいますし、別に仕事していないとは全然思わないですけど。でもこのままじゃいけないと思ってる現場やファンの声をどう反映させていく必要があるのかっていう。

―それだけ危機感や不安が大きいということですね。それこそ今が分岐点ですもんね。

畠山 だから、まぁ正直、誰も予想してなかったというか、勝つと思ってなかったんですよ、南アフリカ戦まで。たぶんファンは「勝てなくても頑張ってくれ」「応援してる」っていう。で、ちょっと知ってる人は「勝てないよね」って…それはわかる。僕らでも勝てないんじゃないかって思ってたくらいですから、別に否定しないんですけど。

でも関係者には信じていてほしいというか、準備していてほしいんですよ。それこそ4年間、エディの下であんだけやってるの見て「あいつらは勝てる」って。そこでイイ結果出してくれるって信じて、準備を進めてくれてたら、勝った後、すぐボーンっていろいろ打ち出せたはずだと思うんで。

でも、要は誰も信じてなかったから…いきなり勝っちゃって世間が「うわーラグビーすごい!」ってなった時に、お金がどういう風に使われてとか、ああしよう、こうしようっていうのもないですし。メディアにも対応しきれなかったっていう。

―結局、エディさんの去就にもそういうものが影響して…。

畠山 そうですね。だから、南アフリカに勝つなんてことは世界中のほとんどの人が信じてなかったのはいいんですよ。それだけのことをW杯っていう唯一の大舞台でできたのは僕らもすごい誇りですし、ファンの方も嬉しかったと思うんで。

ただ、そういうことを予測できる人はいてほしいし、準備してほしいんです。で、ダメだったらダメで次こうしなきゃって、そこでへたれこむんじゃなくて、違う道にどんどん行ってくれるようなリーダーシップを取れる人。ひとりじゃなくてもいいんで、そういう意思決定ができる機関が僕の今、望むところですね。

―目先の勝ち負けも大事ですが、本当にどこを理想としてビジョンを掲げるか。試験なんかでも100点目指さないと80点も取れないですもんね。

畠山 本当、仰る通りで…。80点取るためには、80点の勉強してちゃダメなんですよね。

僕なんかもそういうとこがあったんですけど、エディは容赦しないんで。徹底して、それこそ精神すり減るまで追い込まれながらもやって、ようやくあれだけの結果を…目標には届かなかったですけど、日本のラグビーの歴史を変える、自分達の目標はある程度達成できたので。それが1年後、結局、元に戻っちゃいましたでは悲しすぎるんでね。

「2019が日本ラグビーにとっては大義名分」

―以前はこれだけの人気で注目される経験もなく。あの勝利でこんなに変わるものなんだという実感は大きかったでしょうし。

畠山 ありましたね。それこそ145点でオールブラックスに負けてからずっと苦い思いをしてきたファンの方とかもいたでしょうし。いろんなところでラグビーの普及活動もしてきたけど、やっぱり一番は代表が勝つことが何よりなんだっていうのは、もう去年のW杯で痛感したので。

―この国は本当にオリンピックもそうですけど、天国と地獄でガラっといろんなことが変わる恐ろしさがね(笑)。

畠山 もちろん、勝つっていう結果が全てじゃないのはわかるんですけど、でも勝つことでこれだけ影響力大きいこともないですよね。だから現場としては、そこにできる限りコミットしていきたいですし。

本来は僕らが声上げるのもお門違いなのはわかってるというか、自分のパフォーマンスを崩しかねないのも認識してるんですけど。それぐらい僕や他の選手でも、不満とか危機感を言ってるのは、そんだけ心配なんですよ。

―一度この熱を経験するとね。すぐにまた歴史が反転して、そっぽ向かれてしまうのではという不安や恐怖も逆に大きくなって…。

畠山 そうなんですよね。だから、よく僕らの世代はしょうがないって言うんですよ。もう、僕も30過ぎて手遅れだと思うんで。でも今の小、中学生、なんなら生まれたぐらいの子供達が僕らぐらいになった時に、なんの不安もなくというか。ここまで声上げなくても、みんながラグビーに携わってよかったなって思える仕組みを残したいですよね。

僕らの今の待遇を変えてくれっていうよりかは、声を上げてる選手みんな、その次の世代のことを考えてるんです。2027、2031ぐらいのW杯の時には日本も強豪国というか、強いチームと同じ条件であったり、国内の環境であったり、そういうのを残してあげたいと思って行動したり言ってるんですよ。

―一過性のブームとかじゃなく、次の日本開催で成功するしないに一喜一憂することなくという。

畠山 もちろん、2019っていうのは必ず3年後に来るので、そこには必ずコミットする必要があるんですけど。そこで日本ラグビーが終わるわけではないので。2020年もその先も続いていくと思うので。そこですよね。

―次の熱狂が2019年にあるとして、その後のプレッシャーというか、浮き沈みの不安は切実なんですね。一時、舞い上がってる場合じゃない、と。

畠山 はい。正直、2015年までは日本がW杯で活躍するなんて誰も思ってないんで。気楽に失うものなく、思いっきりやれたんです。だから相手もナメてましたし、南アフリカは「大丈夫大丈夫」ぐらいだったと思うんですよ。でも、実際ああいうことになると、次からは絶対警戒されますし、必ず対策練られてくるので。勝つのが余計難しくなる。

―期待も高まってる分、辛辣なものもありますからね。そういう怖さがまた自覚を芽生えさせてるんでしょうけど。

畠山 う~ん…だから、それを乗り越えてこそなんでしょうけど。あと、2019が日本ラグビーにとっては大義名分なんですよ。それがなくなった時に、じゃあどこに向かうのかっていうところも考えておかないと。それがイマイチ現場にまで降りてこない、見えてこないんで。

そういうスピード感を感じないんです。僕は結構せっかちな性格なので(笑)。あまりにも緩く、ゆっくりに感じてしまう。協会の方達にはすごい最速なのかもしれないですけど、それでも遅く感じる。

なんでかって言うと、Bリーグなんかも発足されて、こっちはW杯からちょうど1年っていう期間があって、このスピード感なんで。それを一生懸命やってますって言われても、十分じゃないですっていうのが僕の中での返答なので。

「正直、めちゃくちゃしんどいです!」

―去年のトップリーグの開幕と、この1年経っての違いに焦りやギャップも覚えるでしょうし…。でも自分は所属チームから代表と休む暇なく、今春には海外(英ニューキャッスル)にも挑戦したりと、肉体的にも精神的にも疲労の蓄積は相当では…。

畠山 もう正直しんどいです、ははは(笑)。めちゃくちゃしんどいです!

―そのしんどいのと今、頑張って結果を出し続けないとってモチベーションの部分で折り合い付けてやっているような?

畠山 そうですね。正直、いろんな意見あると思うんですけど、情熱に対するモチベーションと対価に対するモチベーションとふたつあるなと。で、情熱だけで今までやってきてたのがそれだけでは現実的にしんどくて。もうひとつの制度が整備されてるかって言ったらまだまだなんで、選手としては正直難しいんですよね。

もちろん代表も行く価値があるなら行きますけど、ケガして評価下がって、プロ選手としてはリスクでしかないですから。名誉だけじゃもう無理なんですよ、ハッキリ言って。情熱のモチベーションだけでやってたら、毎年毎年、継続して選手強化できないです。

―昔はそれこそアマチュアリズムの美徳や精神みたいなことを言われてね。今はやっぱりプロのアスリートとしてのベストなパフォーマンスを見せて、自分の生活にも夢を求めて。変わっていかないことには進化もないですもんね。

畠山 そうですね。プロになったからラグビーのイイ部分が薄れるかっていったら全然そういうことはないんで。代表も学生以外はほとんどがプロ選手で形成されてきましたけど、相手をリスペクトしたりとか、体を張るとか規律を守るとか、そういう精神は在り方が変わっても脈々と受け継がれてると思うんですよ。

審判に対してもしっかりリスペクトを持って、他だとジャッジに詰め寄るようなスポーツもありますけど、そういうのは全然ないですし。それはラグビーの持ってる素晴らしい精神だと思うんですよね。アマチュアだからとかじゃなくて。

―それで競技の持つスピリットが変わるわけではないですもんね。

畠山 そうです。もし完全にプロ化するんであれば、教育プログラムも必要になってくるでしょうけど。やっぱ在り方とか考え方、制度は時代に合わせて見直していかないと。イイ選手がずっと長くプレーするっていうのは難しいですよ。正直、名誉だけじゃお腹は膨れないんで

―それこそマイナー競技のアスリートでも皆ベストなパフォーマンスをするために、どう体制を整えて環境作りしていくかが一番の課題で。追い風の時にもっとスピーディーにいろんなことが劇的に動いてほしいという願いが…。

畠山 今はほんと、まだスピード感だったり血流の悪さをどうしても感じてしまう。もちろん海外からでもイイ選手がいっぱい入ってきたり、有能なコーチングスタッフだったり、いろんな方が入ってきてますし。別にどこが悪いとかじゃないとは思うんですけど。それがどこに問題があるのか…。

「小野晃征の存在は、かなり重要になる」

―そういう思いで、現役選手としてもですが、今後のラグビー人生を考えて、あえてイギリスに行ったのも自分の経験値を積むのにベストな選択だと?

畠山 う~ん、まぁ正直、日本が大好きなんで、ずっとこっちいたいなって思いはあったんですけど(笑)。いろんな方の説得であったり、それはやっぱり行く価値があると思ったからですよね。

僕が人間としてこんだけ変われたのは、やっぱラグビーやってたからだろうし。ラグビーを通じていろんな人と出会って、ある程度まともな人間になれたと思ってるんで。そういうスポーツがもっと広がってほしいですし、発展させる価値があるはずなんで。

―それでニューキャッスルに移籍してみて、また価値観が変わりました?

畠山 向こうはやっぱサッカーがどでかい市場になってるんで、圧倒的にそっちですけど。ラグビーも文化として根付いていて、専用のスタジアムがあって。そのスタジアムで働いてる清掃員もチームの一員だったりして、みんな同じユニフォーム着て。

それもひとつのスポーツで仕事して飯食ってるってことだと思うんで。広げていけたらいいなって。今の日本だと、もちろん現役辞めて会社の仕事をするのもありなんですけど、一生そういう形で携わっていけるんだというのも学びましたね。

―いろんな選手が海外に所属するようになって、その経験が還元されて財産になるわけですもんね。

畠山 そうですね。いろんなOBの方、先輩がいろんな所に行ってますけど、やっぱりスーパーラグビーに挑戦した田中史朗(ハイランダーズ→現パナソニック)と堀江翔太(レベルズ→同)っていう、まずこのふたりが本当にプレー面でも日本にいいものを持ってきて還元してくれて。

あと、僕個人の意見で言えば、小野晃征(サントリー)の存在っていうのは今後の日本ラグビーにとってかなり重要になるなと。彼は愛知県出身ですけど、ニュージーランドで生まれ育って、英語も堪能で。何より世界のラグビーに友人がたくさんいて、いろんな情報をもらえるっていう能力、人材としての優秀さは秀でてると思ってるんで。

―今後、ラグビー界の中心になってほしい存在ですか。

畠山 ほんと、僕は是非ともって思ってるんですけど。彼は外国気質なんで(笑)。奥さんもニュージーランドの方なんで、将来戻る可能性もありますし。優秀な人材が他のフィールドで活躍するのもいいけど、やっぱりラグビーで能力を発揮してほしいですよね。頭下げてでもいてもらうべきなんじゃないかなと。

―引退して自分もその立場になったら、やはり3番手でサポートしていくし、と(笑)。

畠山 いや~もうお茶汲みでも掃除でもなんでもします(笑)。それぐらいしかできないんで(笑)。

「五郎丸ぐらいモテる人生を送ってみたい(笑)」

―五郎丸(歩、トゥーロン)さんもいますしね。早稲田では同期で。生まれ変わったら五郎丸になりたいって代表HPでのコメントも話題になりましたが(笑)。

畠山 いや、本当に大学の頃から格差はあったのが、今は本当に取り返しつかないぐらい開きましたけど。僕は残念ながらというか、幸福にもひとりの女性にモテたのでよかったですけど。あれぐらいキャーキャー言われる人生も悪くないなって。

彼がボールを持つと会場中が黄色い声援というかね、大学の時からそうだったんですよ。僕がボールを持つと、おじちゃん達の野太い声があははっていう…笑い声が起こるぐらい対照的だったので(笑)。

―じゃあやっぱりモテ願望もあったんですね。

畠山 ありますあります! 最初言ったみたいに目立ちたがり屋で我がままなとこがあるんで。ライバルって言ったらおこがましいですかね…わかりやすいひがみ対象があるとすごい燃えましたし。僕の場合は頑張るほどに笑いが増えてったんですけど(笑)。

まぁそれもラグビーですね(笑)。スクラム組んでるヤツもいれば、キックするヤツ、トライを獲るポジションの人もいるのがラグビーですから、ははは(笑)。

―そういう意味では畠山さんもキャラを確立して。太め男子の雑誌『ミスターベイプ』に出たり、有吉(弘行)さんには「クソヒゲゴリラ」と命名されたり(笑)。

畠山 いやいや、ありがとうございます(笑)。そうですね、決して悪いとは思ってないです、元々ドMなところもあるんで。やっぱ3番手ぐらいな感じで、そういう立ち位置は全然嫌いじゃないんで。逆にそうやってかまってもらえるのはほんとありがたいです、寂しがり屋ですし。

―でも役割ということでは重要ですよ。自己分析では我がままでイヤなヤツだったのが、こうやってラグビー界のためにしっかり発信する存在になって。

畠山 まぁそれは自分にできる精一杯のことを…今はまだ現役なんで、できれば現場で活躍することですけど。その現場がもうボロボロになって、悲鳴に近いような声をすくい取ってくれる組織とか人も絶対必要なんで…。本当に一生懸命頑張ります。

―ほんと、そんなお疲れの合間に取材を受けていただいて恐縮です…。

畠山 とんでもないです! こちらこそ、倉持さんからご紹介していただいて。こんなに接点があると思わなかったんでありがとうございます。すみません、長々とベラベラこんな話に付き合っていただいて(笑)。

―とんでもないです!(笑) では最後に次のお友達のご紹介を。吉木りささんが候補ということで…。

畠山 はい。忙しいとは思いますが、ラグビーのみんなで食事に行けたらいいですね!と伝えてもらえますか。

―了解です。では繋げさせていただきます。本日はシーズン中の大変な時期にありがとうございました!

語っていいとも! 第35回ゲスト・吉木りさ「久々の恋愛で嬉しくて。はしゃぎ過ぎました(笑)」

●畠山健介1985年8月2日生まれ、宮城県出身。小学生から地元少年団でラグビーを始め、仙台育英高校に進学、3年連続で花園出場。早稲田大学に進学し、全国大学選手権優勝などに貢献。卒業後はサントリーに所属、2011年、ラグビーW杯の日本代表メンバーに選出。2015年のW杯でも24年ぶりの勝利に貢献し活躍。

(撮影/塔下智士)