カンタンな動きで頑固なコリを解消できる、筋膜リリースに挑戦!

日常の動きやクセで凝り固まった身体がほぐされ、動きやすくなるという「筋膜リリース」

体の痛みや肩のコリなどの解消にいいと言われ“身体をよみがえらせる”と評判で、来年早々には大ブレイクしそうな健康キーワードだ。

そこで早速、11万部を突破した『自分でできる!筋膜リリースパーフェクトガイド』の著者である筋膜リリースの第一人者で、理学療法士・医学博士の竹井仁(ひとし)先生に話を聞いた。

* * *リリース=解き放つという意味は理解できるが、「筋膜」という言葉は聞き慣れない。一体なんなのか?

「筋膜とは筋肉を包みこんでいる膜のことです。全身に張り巡らされていて、筋膜以外を溶かしても身体の形が残るということから“第二の骨格”とも呼ばれる重要な存在です」

皮膚の下と筋肉の間にそんな膜があったとは! ちなみに、リリースもパーンと一気にはがすのではなく、「90秒間かけていろんな方向に伸ばすことによって、バターが溶けるようにゆっくりじっくり時間をかけます」と言う。

これだけ聞くとストレッチのように感じるが、全く違うようだ。著書を読んで試した記者の実感では、ゆったりめのヨガに近い印象も受けたが、「筋膜とは何か」を聞くと、従来のものとは異なる医学的に実証されたメゾットだとわかる。

「筋膜は浅筋膜(せんきんまく)・深筋膜(腱膜筋)・筋外膜・筋周膜・筋内膜の5つを指します。

まずは皮膚の下の皮下組織の脂肪層の中にある浅筋膜。あらゆる方向に動くことができ、また毛細リンパ管が存在している場所のため皮膚と浅筋膜のなめらかな動きで、むくみを防ぐ役割もあります。

深筋膜は斜め・縦・横のコラーゲン線維の三層構造で、筋肉をボディスーツのように覆っている。各層の間には水に浸したクッションのような疎性結合組織とヒアルロン酸が分布していることで、身体の様々な動きに合わせて深筋膜がお互いに滑らかに動けるようになっているんです」

そして、筋肉表面にある筋外膜、筋肉の中に入り込んだ筋外膜の束を包む筋周膜、さらに筋周膜が筋の束に入り込んで筋線維を1本ずつ包む筋内膜は連続している。これら5つの筋膜はそれぞれが絡み合い、身体に対して様々な影響を与えているという。

皮膚から筋肉までの構造。『自分でできる!筋膜リリースパーフェクトガイド』より

「筋膜は『コラーゲン線維』と少量の『エラスチン線維』からできていますが、このふたつが協力しあって、動きに合わせて体の形を自在に変えたり、引っ張られた時はその力に耐えるなど、緊張をコントロールしています。

例えば、イスに座った時にお尻がつぶれて形が変わるのも、エラスチンがゴムのように伸ばされて、コラーゲン線維がハンモックのように形を変えているからです」

超カンタン!基本の筋膜リリースにトライ

そんな柔軟性が高そうな筋膜も、長年、悪い姿勢や偏った動作を長く続けている部位に不必要な負担をかけるため、体のバランスが非対称になって筋膜が自由に動けなくなる。

「筋膜がよじれて筋外膜のコラーゲンとエラスチンが一部分に集まると、それらの組織を包み込んでいる水溶液(基質)がサラサラの状態から粘り気を帯びてしまいます。さらに、ヒアルロン酸が凝集化し、筋肉の動きが制限されます。

そうなるとコラーゲンとエラスチンが自由に動けなくなり、筋膜の上にある皮膚と筋膜の下にある筋肉がそれぞれ動きにくくなるんです。

その結果、筋線維の動きや働きが悪くなって、筋肉が本来持っている筋力を充分に発揮できなくなり、柔軟性も悪くなりますね。運動をしている人はパフォーマンスが悪くなりケガにつながりかねません」

そうならないためにも、筋と筋膜の正しい伸縮性を回復させて、筋肉を正しく動かすようにするケア。これが「筋膜リリース」なのだ。

手始めに今週は基本の「筒状の伸ばすL字筋膜リリース」を紹介しよう。

【始める前の注意事項】(1)無理して痛みがでないように、ゆっくりと伸ばす。ひとつの方法を慣れるに従い90秒以上行なえるようにする。(2)「筋膜リリース」をしている間は、自分と床の位置関係を確認。身体のどこが硬く緊張しているかを感じながら行なう。(3)呼吸はゆっくり行ない、全身が上下に筒のようにほぐれていく感覚を感じながら行なう。(4)体が緊張する時間をできるだけ短くするために、朝・昼・晩に行なう。

●筒状に伸ばすL字筋膜リリース <30秒を3回行おう!>身体の前方と後方の筋膜のつながりをリリース。腰痛、もも裏やふくらはぎの筋肉が硬い人や、猫背の人に効果的だ。

(1)身体を前に向け、両手をテーブルの上に乗せて体重を支える。両足が床に潜り込むよう意識する。

両足が床に潜り込むようなイメージで

(2)上半身もお尻と一緒に腕の方向に伸ばす。尾骨を中心に上下に筒状に伸ばすイメージで、股関節をしっかり曲げること。

尾骨を中心に上下に筒状に伸ばすイメージ

たったこれだけ? と思うなかれ。今回挑戦した週プレバイト・スズキは「肩甲骨が固いんですよ…」ということで、なかなか上半身が伸びず、このポーズを撮影するのに時間がかかりまくって、汗をかくほど(苦笑)。

おかげで、はからずともNGカットも撮れてしまった。

お尻が後ろに下がったり、あごが上がる、腰が丸まるのはダメ

このように「筋膜リリース」は道具を使わずに、手足を伸ばしたり身体をひねったりするだけで、家で気軽にできるものなのだ。そこで次週は、さらなる「筋膜リリース」の世界へご案内するぞ!

★後編⇒その痛みの原因は“筋膜”? 注目の「筋膜リリース」で日常のコリとおさらば!

●竹井仁(たけい・ひとし)先生首都大学東京大学院 人間健康科学研究科理学療法科学域ならびに健康福祉学部理学療法学科教授。筋膜に関する医療従事者向けの専門書のほか、『ためしてガッテン』などの130本以上のテレビ出演などメディアでも活躍している。今年6月に出版した『自分でできる!筋膜リリース パーフェクトガイド』(自由国民社)は、そのメゾットが余すことなく掲載されて現在11万部と大ヒット中

(取材・文/渡邉裕美 撮影/五十嵐和博)