安田美沙子さんの思い出のレースは、2007年第52回の有馬記念!

25日は有馬記念!  『週刊プレイボーイ』1&2合併号では、25ページもの特集を組んで有馬記念を総力取材している。

有馬記念といえば、競馬ファンならばきっと熱く語りたくなるレースがあるはず。そこで「元MC」の安田美沙子さんに有馬愛を語ってもらった。

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ダイワメジャーとアンカツ(安藤勝己騎手)のコンビが頂点を極めた2006年マイルチャンピオンシップ(GⅠ)のプレゼンターとして、小雨降りしきる京都競馬場に来場。

その翌年にはフジテレビ系列で放送された『うまなで~UMA to NADESHIKO~』にレギュラー出演していた安田美沙子は、もはや筋金入りの馬女。

会話の中にも、「手前を替える」とか、「あそこでもう少し足をためていれば……」とか、「あの馬は距離よりも折り合いですよね」とか、「口向きが悪いですからね」とか、ちょいちょい専門用語が飛び出す。

「お仕事以外でも競馬場には、よく行きます。馬券を買うのはメインだけ。前の日からじっくり予想して、パドックで馬の調子をよーく見極めて。基本は3連単馬券。お気に入りの馬が出走していたら単勝も買います」

素人は、あれもこれもと手を出し、どんどん負けが込んでいきがちだが、“プロフェッショナル”は、ここ!というところで勝負する。

「競馬を始めて10年ですが、実はもっと以前から競馬にはご縁があるんです。初めて京都競馬場に連れていってもらったのは学生のとき。もちろん馬券は買いませんでしたけど、見ていて、これはハマるなという予感はありました(笑)。しかも、私がスカウトされたのは京都駅の伊勢丹なんですけど、なんと、そのスカウトマンが、大の競馬好きで、春の天皇賞とスカウトを兼ねての京都出張だったんです」

06年に有馬記念を勝ったのは、ディープインパクト。テレビで見る“英雄”のラストランは、きらびやかで、眩(まぶ)しかった。

「あと2年……1年でもいいから、もっと早く競馬に関わっていたら、ディープ最後の勇姿を生で見られたのにと思うと、ものすごく悔しくて……」

時計の針は元には戻せない。しかし、次々にスターが入れ替わるのが競馬の面白さでもある。ディープが引退したその翌年の07年、牝馬(ひんば)のウオッカが“競馬の祭典”日本ダービーを制するという偉業を成し遂げた。

「牝馬が日本ダービーを勝ったのは64年ぶり。単勝馬券を握り締めて、ゴール前で絶叫していたんですけど、勝った瞬間、なぜか涙があふれでて。号泣していましたね。あの瞬間、もう競馬の魅力から抜け出せないと思いました(苦笑)。彼女が私の最初のヒロインです」

マツリダゴッホの単勝馬券を握り締め…

ファンに愛された名牝(めいひん)ウオッカは、その後、競馬史上に残るわずか2cm差での天皇賞(秋)制覇などGⅠ通算7勝。年度代表馬に2度輝き、11年選考の顕彰馬にもなっている。しかし、そんな彼女でも、グランプリレース、有馬記念に出走したのは、07年の第52回のわずか一度しかない。

「日本ダービーを勝った年ですよね。あの年の有馬には、ダイワメジャーも出走していて。その2頭にプラスして、もう一頭、マツリダゴッホの単勝馬券を握り締め、息を殺すようにして見ていました」

なぜ、9番人気のマツリダゴッホを?

「マツリダゴッホは、『うまなで』で、初めて当てたレースの勝ち馬なんです。しかも騎手は蛯名正義(えびな・まさよし)騎手! 当時、蛯名騎手が乗った馬を買う日をつくり“エビショー買い”と呼ぶほど注目していた騎手なので、これはもう買いだなと(笑)」

このレースでファン投票第1位となったのは10万5441票を獲得したウオッカ。ダイワメジャーは第3位。マツリダゴッホは19位で、人気上位馬の回避により出走にこぎつけた。

レースは、チョウサンが引っ張り、2番手、3番手にダイワスカーレットとマツリダゴッホ。第3コーナーで、1番人気、武豊とメイショウサムソン、ウオッカと四位洋文(しい・ひろふみ)のコンビが仕掛けるが失速。伸びを欠くダイワメジャーを尻目に、内から力強く抜けだしたマツリダゴッホが先頭でゴールイン! 騎乗していたエビショーも、“まさか勝てるとは”と言うほど、波乱の結末となった。

「ウオッカが馬群に沈んだ時点で、頭が真っ白になって。『勝ったのは、なんと、マツリダゴッホです!』という声を聞いて、さらに真っ白になりました」

単勝5230円。

「5000円ずつ買っていたので、(払い戻しは)26万1500円。頭がクラクラしたのははっきり覚えているんですけど、そのお金を何に使ったのかはよく覚えていないんですよね(笑)」

優勝したマツリダゴッホはその後もGⅠに挑戦したがついに手が届かず、2年後、09年の有馬記念で引退。しかしその血は、16年のNHKマイルC(カップ)で2着になったロードクエストなどに受け継がれている。

先日、第1子の妊娠を発表。来春には母になる安田美沙子……。20年後の有馬では、母子でコブシを振り上げている姿を見られるかもしれない。

●安田美沙子(やすだ・みさこ)1982年4月21日生まれ 2007年1月6日~同年12月22日に放送された『うまなで~UMA toNADESHIKO~』でMCを務めた。バスケットボールにも造詣が深く、2017年1月15日に開催されるBリーグオールスターゲームのチームマネージャーを務める

★週刊プレイボーイ1&2合併号、「有馬記念直前特集 思い出の有馬記念」より

(取材・文/工藤 晋 撮影/石田壮一)