週プレNEWS TOP ニュース 社会 衝撃の幼児虐待死事件を追った『鬼畜の家』著者が語る、“芯のない人間”を生み出す家庭環境とは

ニュース

衝撃の幼児虐待死事件を追った『鬼畜の家』著者が語る、“芯のない人間”を生み出す家庭環境とは

[2016年12月28日]

NEW

―もう一点、彼らに共通していることは、子供が生まれた時点では、普通の家庭があったということです。皆川一家の手紙や写真を石井さんは見ていますね。そこには本当に幸せそうな家族の姿があった、と。

石井 それは偽りのない姿だったと思います。絶望の中に唯一の救いがあるとすれば、彼らが「それでも愛しています」と言っていることです。「いや、殺してるじゃん。そんなの愛じゃない」という反論もあるでしょうが、彼らからすると「それでも愛している」というのは「うまく愛せなかった」という絶望の裏返しなのです。誰だって、殺したくて殺したわけではない。でも彼らは愛し方がわからなった。

―それは高野愛が、自宅に隠した嬰児の遺体を「押入れの子」「屋根裏の子」と呼んでいたことにも表れていますね。

石井 「外に捨てて犬に食べられたらかわいそうだから、ずっと押入れや天井裏に置いておきました」と裁判で彼女は泣きながら言っていました。押入れや屋根裏に閉じ込めた遺体であっても、やはり自分の子供だと思って愛しているからです。もちろん、歪んだ愛情ですけどね。

厚木の齋藤幸裕はゴミにまみれた暗い部屋に長男を監禁していましたが、「ちゃんと育児していた」という彼の裁判での証言は本心からのものだったと思います。幸裕が帰宅すると、幼い長男はいつも「パパ、パパ」と喜んで近づいてきた。幸裕がポルノ雑誌を細かく千切って紙ふぶきのように宙に散らすと、それを見た長男は喜んでいたそうです。異常な暮らしの中で、少なくともその瞬間にはふたりだけの幸せがあったのでしょう。いや、あったつもりなのでしょう。

しかし、幸裕を含め、これらの事件の親たちは育児に対する常識的なイメージを持っていなかった。そして、彼らの周囲にはお手本となる家庭も、助けてくれるコミュニティもなかった。例えば、出産や子育てで困難を抱えている人のための無料電話相談がありますが、いきなりかけてみるのは抵抗があっても、周囲にこれを利用したことのある人がいれば、じゃあ私も電話してみようかなとなるじゃないですか。ところが、彼らは自らコミュニティを狭め、どんどん孤立していきました。

―難しい問題ですが、児童相談所などの公的機関だけではなく、地域社会とのコミットが大事なのですね。

石井 こういった事件が明るみに出るたびに、インターネットには彼らを罵(ののし)る言葉が溢(あふ)れます。しかし、そうやって断罪することは彼らをコミュニティから切り捨てていく行為にほかならない。そして、数週間もすれば事件そのものが忘れられていく。だからこそ、僕はこの本を書きたいと思いました。彼らは子供を愛したかったけど、できなかった人たちです。それは絶望ではあるけれど、かすかな希望でもある。こういった人たちを弾かずに、いかにしてコミュニティに入れていくかという観点が必要なのではないでしょうか。

●石井光太(いしい・こうた)
1977年生まれ、東京都出身。国内外を舞台としたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行なっている。主な著書に、『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困―世界リアル貧困学講義』『レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち』『地を這う祈り』『遺体―震災、津波の果てに』『浮浪児1945―戦争が生んだ子供たち』など。最新刊は、イラクの日本人人質事件を題材にした小説『砂漠の影絵』

鬼畜の家
●『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』(新潮社 1500円+税)

(取材・文/中込勇気)


コミックス告知

連載コラム

Column

連載コラムを見る

人気記事ランキング

もっと見る

MOVIE Channel

【動画】藤木由貴、待望の水着グラビアデビュー!! 

もっと見る

Back Number

  • No.23 Jun 5th 2017
  • No.22 May 29th 2017
  • No.19-20 May 15th 2017
  • No.18 May 1st 2017

 

Gravure Gallery

もっと見る

新刊のお知らせ

  • 週プレ グラビアスペシャル増刊 GW2017
  • 綾瀬はるか写真集『BREATH』
  • 『週プレ クルマ増刊』
  • 馬場ふみか写真集『ぜっぴん』
  • 内田理央写真集『だーりおといっしゅうかん。』

 

プレイボーイコミックス

メルマガ会員&アンケート 2017年No.23

週刊プレイボーイグラビア増刊GW2017