まだジュニアでありながら、全日本で4位と大健闘の本田真凜

昨シーズン(2015-2016シーズン)、初出場でフィギュアスケート世界ジュニアを制覇した本田真凜(まりん)の注目度がさらに上昇している。JALとスポンサー契約して話題になるなど、2017年期待の女子アスリートのひとりだ。

12月25日まで開催されていた全日本フィギュアスケート選手権でも15歳の笑顔が思い切り弾けた。

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実は今シーズン、本田は大きな悔しさを味わっていた。「勝って当然」というプレッシャーに苦しみながらジュニアグランプリシリーズに出場して上位に入り、なんとか12月上旬のジュニアグランプリファイナルに進出したものの、開催地のフランス・マルセイユ到着後、インフルエンザと診断されて欠場。優勝どころか戦うこともできなかったのだ。

「ファイナルに出られなかった分、全日本は絶対に出たいと思っていました。(2017年3月の)世界ジュニアへの思いも強くなって、(上位に入って)出場の切符をとることが目標だったから緊張はしたけど、プレッシャーにはならなくて、すごく楽しくてワクワクした気持ちでできました」

その結果、24日のショートプログラムをノーミスで滑って67・52点を獲得し、宮原知子(さとこ)と本郷理華、樋口新葉(わかば)に次ぐ4位で発進。

「緊張したけど、滑る前に(コーチの)濱田先生から『(体調が快復してスケートリンクに)戻って来られてよかったね』と言われて気持ちが楽になりました。ファイナルを欠場してから、スケートが好きなんだということをあらためて思いましたし、試合に出られる幸せを感じながら滑ることができました」

翌日のフリーは最終グループの1番滑走。重圧のかかる場面だった。本田はふたつ目のジャンプだった3回転フリップが1回転になるミスをしたものの「今回はミスをしてもそれを引きずらないようにするのが大きな目標だったので、目の前のジャンプのひとつひとつに最後まで心を込めて跳んだ」と言う通り、その後のジャンプは確実に成功。128・59点となる粘りの演技をして、合計196・11点で4位となり、2017年3月の世界ジュニアに向けて弾みとなる結果だった。

TVドラマなどで活躍する子役の本田望結(みゆ)の姉としても注目されている本田は、表現力の豊かさでジュニアの下のカテゴリーであるノービス時代から注目されていた。「どんな習い事に行ってもすぐにできるようになった」という天才肌で、自分でも「努力するのは得意ではない」と言い切るほどだ。

兄の太一、妹の望結と紗来もフィギュアスケートをする環境で、「妹たちは『真凜はすごい!』と憧れてくれるので、それに応える恥ずかしくない演技をしなければいけないと思っています」と、妹思いの一面もある。

密かにライバル心を燃やす存在

そんな本田がもっと上のレベルを目指すようになったのは、昨シーズンの2015-2016シーズンのこと。ジュニアグランプリシリーズで2位と1位になってファイナルに進出すると、ロシア勢に次いで3位表彰台を獲得。そして「初めて練習を頑張った」という2016年3月の世界ジュニアでは、その時点の自己最高の合計192・98点で見事、優勝した。

「どのくらい通用するかな」と無欲で臨んだ世界ジュニアで優勝し、本田の心の中に「また優勝したい」「今度は優勝候補として大会に出たい」という思いが芽生えてきた。だが今シーズン(2016-2017シーズン)は周りから「勝って当然と」と思われる状況で出場することになり、緊張し過ぎて力を出せない試合が続いていた。

さらに、ファイナルでインフルエンザと診断されてからは、熱が下がるまでマルセイユのホテルの部屋に籠もりきりで体を動かすこともできなかった。高熱の影響もあり、体力はすっかり落ちてしまっていたが、本人はその苦しい状況について全日本の競技後、笑顔で振り返った。

「フランスから帰国してその日に(練習をしに)スケートリンクへ行ったけど、スケーティングでリンクを1周しただけで息はあがったし、ジャンプもフワフワして全然だめでした。でも、その後の1週間はすごくきつくても練習を毎日毎日やってきたので、それでなんとかなったと思う」

スタミナ面が心配されたフリーの演技も難なくこなし、ミスをしたことについても「体調が万全で練習がしっかりできていたら、この結果に満足はしなかっただろうけど、今できることはやれたと思うので、次につながるかなと思います。すごく楽しい気持ちでショートプログラムもフリーも演技できたので、早くシニアへ上がりたいという気持ちでいっぱいになりました」と、さらに上のレベルでの戦いに意欲を見せた。

来シーズン、本田はフィギュアスケートシーズン開始の7月1日時点で15歳になっているためシニアのカテゴリーに出場できる。目標の平昌(ピョンチャン)五輪出場のためには激しい争いが待っているが、「オリンピックに行きたいので、来年の全日本は優勝を狙っていきたいと思えるような精神状態になっていれば」と向上心も旺盛だ。

そんな彼女が密かにライバル心を燃やす存在がいる。それは、一番下の妹の紗来だという。

「紗来は6歳下だけど、もう3回転ジャンプを2種類跳んでいます。私は努力をするのは苦手だけど、妹は天才である上に努力もできるんです。だから、早くオリンピックや世界選手権で結果を出して、妹がシニアに上がってくる前に引退したい(笑)」

愛くるしい笑顔でこうした言葉を口にできるのも、天才の証拠なのかもしれない。まだまだ成長していく15歳の華麗な演技に、2017年も注目だ。

(折山淑美/取材・文 アフロスポーツ/写真)