往路、復路ともに1位で3連覇を達成した青山学院大

第93回箱根駅伝は、3区でトップに立ってから一度も首位を譲らなかった青山学院大が総合力の高さを見せつけて優勝。大会前にケガ人が出て、体調不良者が続出しながらも3連覇を達成した。

青学大はエースの一色恭志を含め、今回走った4人の4年生が卒業するが、田村和希と下田裕太(ともに3年)の2本柱に加え、山下りのスペシャリストである小野田勇次(2年)を有し、今回1区4位の梶谷瑠哉(2年)や4区2位の森田歩希(2年)、5区8位の貞永隆佑(3年)他、1区に起用予定だった鈴木塁人(1年)もいる。

さらに4月からは5000mで2016年高校日本人ランキング2位の吉田圭太(世羅高)と10位の神林勇太(九州学院高)の加入が決まっており、選手層の厚さはさらに頭ひとつ抜け出ることになる。新シーズンも優位は動かないだろう。

そんな青学大だが、箱根4連覇達成に不安要素がないわけではない。それは今回体調不良で不安を見せた田村や、これまで2回の箱根で復路の8区しか走っていない下田が一色クラスのエースに成長できるかどうかだ。

5区の距離が短縮された今回、山登りでの大逆転劇がなかったように、各校の力が接近した中では、序盤の2区をキッチリ走れる絶対的なエースの存在が不可欠だ。また1区や3区、4区を準エースが走り、前半で主導権を握ることが総合優勝への重要な条件になってくる。

その点を考えると、エースの服部弾馬や主力の口町亮、桜岡駿が卒業する東洋大(今回2位)、武田凜太郎、平和真、鈴木洋平、井戸浩貴の主軸4人がごっそり抜ける早稲田大(3位)も戦力ダウンとなり、主力級の底上げが打倒・青学大への最大のテーマといえる。

また9位だった駒澤大もエースの中谷圭介と大塚祥平、西山雄介ら主力が抜け、飛び抜けた力を持つのは工藤有生(3年)だけになるため、こちらもエースの育成が大きな課題だ。

そんな中、青学大の4連覇を阻止できるエースがいる筆頭校は山梨学院大(今回17位)だろう。右くるぶし故障のため、今回は2区で区間8位と力を出せなかったドミニク・ニャイロ(2年)は、ハーフマラソンで日本歴代4位に相当する1時間00分50秒で走るなど、飛び抜けた力を持っている。今年は1万mで27分56秒47の自己記録をさらに更新する可能性が高い。さらに、上田健太と市谷龍太郎(ともに3年)も他校のエースクラスと遜色のない力を持つだけに往路で突っ走る可能性を持っている。

新時代を築いた青学大を倒すのは?!

さらに、今回の箱根2区で日本人エースに名乗りを上げた鈴木健吾(3年)がいる神奈川大(5位)も1区で山藤篤司(2年)が区間5位になる勝負強さを見せ、2区終了時1位に貢献。このふたりが力を付けてくれば、復路6区で区間4位の鈴木祐希(3年)、8区で区間2位と好走した大塚倭(3年)もいるので期待が持てる。

他にも1年生で3区を走った越川堅太や登録メンバーに入った宗直輝と安藤駿がおり、今回の箱根はケガでメンバー入りしなかったが3000m障害でU-20世界選手権に出場した荻野大成もいる。スピードを持つ彼らが順調に育って往路と復路をカバーできるようになれば、エースの鈴木と山藤の力を生かす戦いもでき、優勝争いに加わってくるはずだ。

1年生を1区と2区、4区、5区、6区に起用した東海大は、今回は10位に終わったが、彼らが経験を積んだことで次回は台風の目となる可能性も出てきた。中でもハーフマラソンで1時間02分03秒(U-20歴代2位)を出している鬼塚翔太は、1区5キロ手前での東洋大・服部弾馬の仕掛けにもすぐに反応する積極性を見せ、最後の競り合いでも1秒差の2位で中継する勝負強さを見せた。

1年生では6区の中島怜利が区間8位になり、下りの適性の片鱗も見せている。2区を走ったエースの関颯人はU-20世界選手権1万m9位の実績を持ち、4区を走ったハーフマラソンU-20歴代5位の松尾淳之介ら素質のある選手が揃っている。8区5位の春日千速や9区5位の川端千都(ともに3年)が残り、4月には昨年12月の全国高校駅伝1区で区間1位になった名取燎太(佐久長聖高)と2位の塩沢稀夕(伊賀白鳳高)が入学。今後3年間は常に優勝候補と目される充実した戦力を保持しそうな勢いだ。

新時代を築いた青学大を一体どこが倒すのか。2017年はまた新たな勢力図での戦いに期待が持てそうだ。

(取材・文/折山淑美 写真/アフロスポーツ)