鈴木宗男氏(左)と佐藤優氏(右)による対談講演会「東京大地塾」。集中連載第三回目のテーマは「シリア情勢」

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」(2016年12月22日開催)。

週プレNEWS集中連載第3回目のテーマは、緊迫するシリア情勢。(第1回「金正恩氏暗殺計画が現実に? 北朝鮮の核脅威より怖ろしい韓国の対日圧力」、第2回「日露首脳会談は大成功? ロシアが嫌がる日米安保条約でプーチンが示したメッセージ」参照)

2016年12月15日に行われた日露首脳会談に、3時間遅れで到着したロシアのプーチン大統領。なぜプーチン大統領は重要な会談に遅刻しなければならなかったのか? その背景には激しい紛争が行われている中東シリアで行われていた、数万という単位の人間の命がかかったある重要なやり取りがあったのである。

■日露首脳会談プーチン遅刻の裏側

鈴木 プーチン大統領が12月の日露首脳会談に3時間遅刻したのはなぜなんでしょうか?

佐藤 それはシリア情勢が原因です。ちょうど日露首脳会談の時期、シリア軍は反政府勢力が支配していたアレッポの奪還に迫っていました。

アサド政権が率いるシリア軍には捕虜を取らずに全員皆殺しにするという特徴があります。ただ、アレッポで数万という単位で反体制派の人間を殺してしまうと、国際法違反行為であるジェノサイド(大虐殺)に当たってしまう。

しかし、トルコのエルドアン大統領は表向きにはアレッポのスンナ派を支援していたので、シリア軍によるアレッポでの大量殺戮に待ったをかけたんです。そこでプーチンがトルコのエルドアン大統領とシリアのアサド大統領の間に入って、どのくらいの規模でアレッポで殺戮を行なうかの数の調整に入っていた。

私の推定では1万人を超えなければいい、と考えているのだと思う。こうした急を要する重要な話し合いがあったために日露首脳会談に遅れてしまったというわけです。

鈴木 2016年12月12日にはトルコのロシア大使館で、警備役のトルコ人男性がロシア大使を銃殺する事件が起こりましたね。

佐藤 トルコのエルドアン政権の基盤はイスラム原理主義です。にも関わらず、エルドアンと同じスンナ派をアレッポで皆殺しするのを認めた。

すると、エルドアン大統領やロシアに対してスンナ派から怒りの矛先が向けられるのは当然ですよね。それでロシア大使館銃殺事件が起きた。

ただ、通常そうした事件が起きた時はその犯人を真相究明のために生け捕りにしないといけない。しかし、現場に到着した対テロ部隊は暗殺犯を銃弾で蜂の巣にして射殺した。

これは、犯人が生け捕りにされると余計なことを話す可能性があったからだと思います。暗殺犯に喋られては困ることがあるから、トルコもその場で犯人を殺してしまったのでしょう。だからこの暗殺事件は、トルコとロシアで特に揉めることなく、両国の合同捜査という形で収まっているわけです。中東とは、そういう怖い場所なんですよ。

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍

■「東京大地塾」とは?毎月1回行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は1月26日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)