ASKA氏が言う、謎のハッキング集団「ギフハブ」と勘違い説がネットでささやかれた「GitHub」の公式Twitter。「GitHub」はシステム開発者用のソースコードを管理するサービスで、Twitterだけでもフォロワー数は100万人以上を誇る。そのマスコットキャラが、右のオクトキャットちゃんだ

歌手のASKA氏が逮捕直前に大アピールしていた「ギフハブ」は、本当に存在しているのか?

『週刊プレイボーイ』本誌で「石川英治のホワイトハッカーなんでも相談室」を連載中のホワイトハッカー・石川英治が解説する!

* * *

覚せい剤取締法違反で逮捕された歌手のASKA氏が、12月19日に不起訴で釈放! 彼が逮捕直前に大アピールしていたのが「ギフハブ」という謎すぎる組織の存在だ。

―年明けから昨年の話で恐縮ですけど…。ASKA氏いわく、ギフハブによって「スマホにアプリを埋め込まれて、AR(拡張現実)で盗撮された」とのことですけど、こんなスパイ映画みたいなことって可能なんですか?

石川 ASKA氏の言うようなARから盗撮するシステムは、僕の知る限りありませんね。ただ、車の車庫入れなどで使用するアラウンドビューモニターだと、自車周辺の風景をARで再現しますが、これにはカメラ数台が必要です。そもそも盗撮に使用するものじゃありませんし、今の技術ではカメラを小型化してスマホに搭載するのは難しいですね。

―ネット上では名前が似ているサービス「『GitHub(ギットハブ)』の勘違いじゃね?」というコメントもありました。これはどうでしょうか?

石川 「GitHub」はプログラマーが自分の組んだプログラムを管理するためのサービスです。なので、ASKA氏の言うような組織ではまったくありません(笑)。報道を見ていると、いろいろな被害妄想と陰謀論がごちゃ混ぜになっているような感じですよね。

―ハッカー的な視点では「ギフハブ」は存在しないと。では、ちょっと話が変わりまして、「陰謀論」というのは、よくハッキングとともに語られることが多いようですが、これは関係あるものなんでしょうか?

石川 NASAや国防総省から情報が漏洩(ろうえい)して陰謀論に発展することがありますよね。あれのほとんどは“ハニーポット”なんですよ。

ハニーポットの中に「ギフハブ」があった?

―ハニーポットとは?

石川 例えば、NASAの場合ですと、宇宙技術の漏洩を防止するために偽技術やダミー情報をハッカーが取りやすいところに置いてあるといわれています。これをハッカーが流出させ、世間が「陰謀だ!」と勝手に騒いでくれればNASAはノーダメージ、本当に重要な事柄は注目されずに済みます。なので、ダミー情報だけでなく、数%は事実も交ぜてあるといわれていますね。

ひょっとしたら、このようなハニーポットの中に、ASKA氏が言う「ギフハブ」があったのかもしれません。ま、聞いたことありませんけど(笑)。

―ちなみに、ASKA氏はAppleのジーニアスバーにまで相談に行ったそうですが、こんな相談も受けてくれるんですか?

石川 Appleユーザーであれば予約して相談をすることは自由ですので、このような相談もOKです。報道ですと、スタッフたちが「AR盗撮なんて聞いたこともない」と言ったそうです。有能なAppleスタッフがそう言うぐらいですから、これは新たなる陰謀論、もしくは未知のテクノロジーが誕生しているかもしれません(笑)。

●石川英治(いしかわ・ひではる)1969年生まれ。現役の“ホワイトハッカー”で、ネットワーク犯罪評論家。不正アクセス禁止法の施行(2000年2月13日)以前は、バリバリのハッカーとしてやんちゃなことも