参戦マシン「ヤリスWRC(日本名ヴィッツ)」 “文金高島田ウイング”と呼びたくなる巨大エアロパーツ。リアが今までと段違いに大きく見える。まさにド迫力。ダウンフォースの塊だ

業界大激震! トヨタが、ウワサされていたWRC(世界ラリー選手権)への18年ぶり復帰を昨年末に発表ーー。

今さらWRCに出てトヨタはなんのトクがあるのか? トヨタ幹部を取材してきた小沢コージがレポートする。

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正直びっくり! 不肖小沢、まさかホントにトヨタがWRCに復帰するとはマジで思っていなかった。しかも、トヨタガズーレーシングが「ヤリスWRC」(日本名はヴィッツ)で、全13戦の2017シーズンへ参戦するというのだ。

衝撃のトヨタF1撤退から8年。業績は確かに盛り返し、社内のクルマ好き集団から始まったトヨタガズーレーシングも、当初はドイツのニュルブルクリンク24時間レースに体験的に出るのが関の山だったが、去年はル・マン24時間レースでポルシェと凌(しの)ぎを削り、悲願のトヨタハイブリッド優勝まであと一歩ってとこまでいった!

ある意味、再び世界のビッグレースに挑むタイミングではある。だが、トヨタの本音がわからない。

で、昨年12月、不肖小沢はWRC復帰の記者会見が行なわれたフィンランドに飛び、関係者を徹底取材。聞き込むといろいろわかってきた。トヨタの専務で、「エンジン開発の鬼」と呼ばれる嵯峨宏英(さがこうえい)氏の話から。

嵯峨「今やF1はイメージ先行で競争領域があまりないんだよね。開発の制約が非常に大きくて、そういう意味ではあまり価値を感じてない」

―WRCは違いますか?

嵯峨「(競争領域が)多い多い。エンジンもレギュレーションはあるけど、開発の余地もたくさんあって、ボディからサスからタイヤに至るまでやることがいっぱいある」

―F1とは違う?

嵯峨「逆にF1だったらこの装置は同じモノを使いなさい、このメーカーにしなさいと決まってるから」

燃費の話を現場でしたらバカにされます(苦笑)

「勝つことでトヨタを示したい。勝っていくことがわれわれの仕事だと思っている」(中央のトヨタWRCチーム副代表・嵯峨氏)

―今のWRCは1.6リットルターボですよね。燃費競争とかあるんですか?

嵯峨「そこは違う。燃費でいったらル・マンのWECなんかまさにプリウスと同じで高い熱効率を狙っています。逆にラリーはパワー勝負です。何しろ380馬力以上出ますから。燃費の話を現場でしたらバカにされます(苦笑)」

―エンジンはどうです?

嵯峨「エンジンについてはトミ(・マキネン)からこういうのを作ってくれと、リクエストがあって、そこはたぶん大きなインプットだったはずですね」

実は、トヨタのWRC参戦にはもうひとつサプライズがあった。マイクロソフトがWRC参戦に協力しているのである。一体、どういうことなのか? 発売中の『週刊プレイボーイ』5号の記事を是非ご覧いただきたい。

(取材・文・撮影/小沢コージ 協力/トヨタ自動車)

■週刊プレイボーイ5号「トヨタはWRCで勝てんのか!?」より