ここはどこ? 地底の美術館? 自然が創り出した芸術「アンテロープキャニオン」

ヒーハー! 絶景続きのアメリカにハイテンションの旅人マリーシャ。

お次に目指すのは、アメリカ先住民ナバホ族の居住区内にある渓谷「アンテロープキャニオン」です! 一部では“写真家の聖地”と囁かれているだけあって、ここの写真を見た時にはその幻想的な姿に「絶対行きたい!」と思っていた。

ここは鉄砲水や雨風の侵食によってできた渓谷で、アッパーとロウワーのふたつの岩層に分かれている。アッパーはナバホの言葉で「水が岩を流れる場所」と呼ばれ、砂岩の隙間に差し込む太陽の光が神秘的で美しい、観光客で大混雑のスポット。

そしてロウワーは「螺旋の岩石アーチ」と言われ、世界の写真家を魅了するも足場が悪く散策が困難のため、比較的空いてるという穴場スポット。

さて私はどっちに行こうか…。東京の通勤ラッシュから逃れるために旅人生を選んだんだもの(?)、ロウワーをチョイスさせていただくことにした。

ロウワーへのウェルカム看板

受付のある小屋と駐車場

広大な大地の先に見える火力発電所の煙突を目印に車を走らせると、砂地にポツンと「ウェルカム」と書かれた看板が出てきた。そこを過ぎると2軒の掘っ建て小屋と20台くらいの車だけで、あまり賑(にぎ)わっている様子はない。

このエリアはナバホ族が管理しているというので、いきなりネイティブアメリカン風の人が飛び出してきたりして?とドキドキしながら小屋に近づくと、まあ、そんなことはなく受付には普通のトレッキング服を着た人たちと、何人かの観光客がいた。

受付

一般ガイドツアーは28ドル

料金表を見ると昔に比べてだいぶ値上がりしているようで、一般ガイドツアーは28ドルで1時間ちょい。これにはナバホ居住区の入場料8ドルが含まれている。ちなみに三脚を持ち込むフォトツアーは50ドルで2時間ちょいと、さすが写真家に人気の場所。

でも私はできればツアーじゃなく、個人でゆっくり自由に探索したいな。「あの~、ツアーじゃなくて個人でアンテロープキャニオンに行きたいんですけど、どうしたらいいですか?」。私は尋ねた。

すると、「アンテロープはツアーオンリー。私たちナバホ族の同行がないと入れません」だって! ウソでしょ!?

いや、「“インディアン”は嘘つかない」か…。(ちなみにこの往年のセリフの由来は、アメリカ先住民とインド人のふたつの話があるようです)

注意書きの看板にはヘビやサソリに注意などと書いてある

ナバホ族のおばちゃんがカメラを…

というわけで、私はナバホ族の血をひくというおばちゃんガイドと一緒に行くこととなった。

だだっ広い砂地をしばらく歩くと、大地の割れ目に降りていく道筋がある。薄暗い地底への階段を降りながら、早速、片手で写真をパシャパシャ撮っていると、「ちょっとアンタ! 両手で手すりをつかんで階段を降りなさい! 命が一番大事なのよ! まったくもう!」。

そんなに危ない階段のようには思わなかったけれど、しょっぱなから怒られてションボリの私。

地球の割れ目にアンテロープの入口がある

しかし、階段を降りきるとすぐに現れた美しい曲線に見事、テンション復活! ヒーハー!

何百年にも及ぶ自然の影響により削られた砂岩の壁は、独特な曲線を描き超幻想的。先日行ったザ・ウェーブが絵画なら、こちらは立体彫刻というべきか、地上に向かって縦に切り立つ波型の壁。

入ってすぐに絶景キター!

その美しい曲線に私がウットリ見惚れていると、

「ちょっとアンタ! カメラ貸しなさい!」

ジャイアンがスネ夫のラジコンをぶん取るようにして、おばちゃんガイドは私のカメラを操作した。実はアンテロープキャニオンは地底にある洞窟のような場所なので写真で見るよりずっと暗いんです。

おばちゃんガイドは慣れた手つきでツアー全員分のカメラやスマホの設定をする。ホワイトバランスを曇天に変えることで、オレンジ色が映えて印象的な写真を撮ることできるというのだ。もっとこだわる場合はISO感度を変えたりと、アンテロープキャニオンの撮影はカメラ設定を変えるのが基本。

まさか写真家の聖地の絶景が、ナバホ族の手によって盛られていたとは(笑)!

でもキレイ! ありがとうジャイア…おばちゃん! (と言いつつ、結局私はカメラに付いてるポップモードで撮影。日本のカメラはすごいんだぞ)

盛ってるアンテロープ。「インディアン嘘つかない」けど「写真盛る」

自然の色のアンテロープ。そのままでもクリーミーなマーブルがかなりキレイ

危険度MAX。断崖絶壁の名所

おばちゃんガイドはちょっとパワフルだけど、その後も写真を撮ってくれたりと優しかった。

撮影ポイントはいっぱいあって、岩の削れた部分が人の横顔や動物の形に見えるところがあったり、ゴリラのように胸を叩くと音が響く洞穴があったり。必死にウッホウッホとゴリラのマネをしたら、叩きすぎてちょっと胸が痛い(苦笑)。

ゴリラのマネをするマリーシャ

人の横顔に見えるでしょ?

あそこにハート型の光が!

険しいと言われた道は、数々の秘境を超えてきた私にとっては全く困難ではなく、ひとりしか通れないような狭い道も楽しくて仕方がなかった。でもやっぱり自分のペースでゆっくり見たり撮影したいという願いは届かず、まるで自分が岩の間を流れる水になったように、とても忙しないツアーであった。

流れる水と言えば、この渓谷を形成する雨風や鉄砲水は幻想的な地形を生み出す一方で、人の命を奪うこともあり超危険。現場で降る雨だけでなく、数十マイル離れた上流で降る雨が注ぎ込んでくる場合もあり、過去には雨が降っていなかったにも関わらず観光客が鉄砲水の犠牲となったこともあるそうだ。

幸いこの日はなんとかまあまあな天気だったので、生きて地上に戻ることができた。

パカッ!と私がアラレちゃんのように地球割りしたのではなく、アンテロープの出口です(こっちが入口の時もあるみたい)

生きているうちにもう1コ。

アンテロープキャニオンまで行ったら忘れてはならないのが「ホースシューベンド(馬の蹄)」。ここがとにかくヤバイ! その名の通り、コロラド川が蹄鉄の形に蛇行している断崖絶壁で、上から全体を拝むのは命がけ。

しばらく平原を進むと突然目の前に現れる、地球にドカーンと穴が開いたような断崖絶壁に最初から最後まで私の感想は「コレ、死ぬじゃん」でした。

危険度MAXなのに、ここには管理施設も柵もない。立って近寄るには危険すぎるため、エッジまで行くには身を低くするか、腹這いになって撮影している人もいた。

実際に観光客が写真を撮っている最中に転落しているそう。ここの吸い込まれそうな恐怖感は、実際、崖に立ってみないとわからない。さすがに、いくら写真を盛っても表現できない場所だろう…。

ホースシューベントを命がけで覗き込む。ちなみに「ドローン禁止」って書いてあった(笑)

【This week’s BLUE】ナバホブリッジから眺めるコロラド川は青緑に輝いている。「橋から飛ばないように!」の注意書きがあったけど、飛ぶわけないっしょ(笑)!●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】