左から脳みそ夫、“くも膜下出血イメージキャラクター”の「くもマン」、中川学

「こんちわ~す!」と人を食ったような挨拶に「OL聖徳太子」、「ちびっこ石油王」といったベタなコントで注目度急上昇中のピン芸人・脳みそ夫。去年、一昨年と年始の「おもしろ荘」に出演し、反響を呼んだ彼がなんと初の映画主演!?

彼が演じるのは風俗で絶頂を迎えようとしたその瞬間、くも膜下出血で倒れてしまった男、マナブ…これ実話! その映画『くも漫。』公開を直前にして主演の脳みそ夫と、そのモデルで漫画家の中川学に『週刊プレイボーイ』本誌で風俗ルポを連載する九界猛が迫る。

―脳さんが主演に選ばれたのは、やっぱり風俗好きだから?

脳みそ夫(以下、脳) そうじゃないです! 行くお金もないですし…。制作会社の社長さんが「脳みそ夫しかない!」って言ってくれたらしく、ビックリしました。

―中川さんは自分役を誰に演じてほしいか、リクエストは?

中川学(以下、中川) 監督さんにお任せでしたけど、強いて言えば星野源とか、まあ言う分にはタダですから(笑)。でも、脳さんはちょうど一昨年の年末年始にTVで見たんです。決まったのが2月ぐらいで、あの人か!と驚きました。

―風俗店でくも膜下出血になった話をなぜ漫画にしようと?

中川 面白い体験だったので、いつか形にしたいなと思ってたんです。漫画を始めたきっかけもそれで、人間いつ死ぬかわからないし、好きなことをしようと。そしたら3年ぐらい前に、出版社で働いてる弟がWEBのマンガサイトを始めるのに作家を探していて「あの風俗で倒れた話をマンガで描かない?」って。

―あらためてすごい体験ですよね。

中川 そもそもあまり行かないんです。たまたま行ったお店であんなことに…。すすきのだったんですけど、1回目はオバチャンで大失敗して。その足で風俗情報誌を買って、付箋まで貼って念入りに調べて行ったら、今度は戸○恵梨香似のコ。「地獄から天国だ~!」と思ったら、本当に天国に逝(い)きそうに…。

―無事生還おめでとうございます! ちなみにプレイ中に倒れたってことは、アソコは元気なままだったんですか?

中川 いや、たぶん下に溜まった血液が全部頭に行っちゃったので…。結局イケなかったですし。

―イク前に倒れるってどんな感覚なんですか?

中川 前触れもないんです。風俗嬢は可愛いし、ここは天国だと思っていたところを急にバットで殴られるような感じ。それが何度も。吐き気がして脂汗もすごい出ました。

―そこまで覚えてるってことは、気を失ってたわけじゃないんですね。

中川 病院で全身麻酔をする直前までずっと覚えてます。雑居ビルから担架で運び出された時は、みんなから見られて最悪でした(苦笑)。

絶対ここは外さないでほしい?

―映画のままなんですね。むしろ意識不明でいたかった(笑)。脳さんは実際に演じてどうでした? 

 倒れて救急車で運ばれるシーンが撮影初日だったんです。そもそも役者をやったことないのに映画の主演で、しかもいきなり濡れ場って! 濡れ場ってベテランがやるんじゃないですか!? 風俗嬢役の柳(英里紗)さんに体を舐められながら、なんでこんなことになってるんだろうと…。

中川 僕は柳さんを以前から知っていて、『ローリング』って映画が大好きで。だから風俗嬢役を受けてくれて嬉しかったし、正直、脳さんに代わってほしいと思ってました!

―羨ましい役じゃないですか!

 それ、楽しんだらダメなやつですし、全く余裕ないですよ! 撮影はたくさん大人が見てるんですよ!!

―大事なシーンですからね、しかも一発目で。

 前貼りも初めてでしたけど、上手くなりましたよ。1回、出ちゃってっていうのがありましたけど。それはしょうがないですよね、僕のナニがって 。

―映画になったものを見た感想は? 

中川 絶対ここは外さないでほしいと思うところが、ちゃんと描かれていたのでよかったですね。

―その部分とは?

中川 風俗店で倒れて、周りを救急隊員や風俗嬢が取り囲むシーン。ちゃんとうつ伏せで倒れてるんですよ。

―そこですかっ!!

中川 コント番組で竹中直人さんがその倒れ方をしていて。僕、大好きで、そこはちゃんとやって欲しかったんです!

―脳さんの周りの芸人の反応は?

 とにかく「すごいね」って。「でも主演ってなんなの?」と。演技がどうこうより、主演ってことに驚かれました。事務所の先輩の爆笑問題の太田(光)さんからは「代われ!」って。「もう撮っちゃってます」って言ったら「撮り直す!」と。

―後輩の晴れ舞台を(笑)。田中(裕二)さんの反応は?

 何も…。そもそも若手に興味ないのかもしれないです。前にふたりにネタを見てもらったことがあって。太田さんはちゃんと見てくれるんですけど、田中さんはずっとTVで相撲を見てました。

中学校で先生をやってたけど失踪しちゃった話も…

―なんと! でも今回、役者をやってみた感想は?

 やっぱり難しいですね。でも何かのきっかけになればいいなと思ってます、ほとんどラッキーで来たお仕事だったので。

―次回出るなら、どんな映画に出たいですか?

 服を着ている映画がいいです(即答)。撮影中に日記をつけてたんですけど、服を脱いでるシーンの日は寒くて、あまりいいこと書いてないんですよ。着てる日はごきげんな感じだったので。

―もし濡れ場があったらどうしますか?

 今度は余裕をもっていたいですね。

―中川さんはこれだけの体験をしちゃうと次は…。

中川 北海道で中学校の先生をやってたんですけど、途中で失踪しちゃった話を…。

―なんですかそれ! すごく気になります!!

中川 単行本が出てるんですけど、結構シリアスな感じで描いてます。こちらも映画になったら嬉しいなと。

―くも膜下出血とか失踪とか事件が多すぎです! こうなるとマンガのネタ用にまた何か起きないかと思いません?

中川 もういいです! 次はフィクションが描きたいです。元々、漫☆画太郎先生をリスペクトしているので。蛭子(能収)先生とかも好きですし。

―あれはもうファンタジーです。ちなみにくも膜下出血以降、風俗に行く時は慎重になってますか?

中川 いや、あまりならないですね。確実かどうかは定かではないんですが、逆に1回手術しちゃえば、他の人より安全らしいので。行っても大丈夫かなって。

―本当なら風俗でくも膜下になってない僕は不安です!

■『くも漫。』長年のニートを脱却し教員となった中川学、29歳。東京へ向かう前夜にたまたま風俗へ行ったところ、まさかのくも膜下出血を発症してしまう事態に。後遺症もなく完治したものの、そこに待ち受けていたのは家族や親戚からの追求だった。男として“最も恥ずかしい風俗バレ”に怯える中川だったが…。2月4日(土)より新宿バルト9ほかで公開。詳しくは公式HPにて http://kumoman-movie.com/

(取材・文・撮影/九界猛)