JOC、都庁、広告代理店らが参加する“勉強会”がリオ大会以降、さらに迷走中だという―

昨年4月、本誌は東京五輪の開会式の演出家を決める会議のグダグダっぷりをスッパ抜いた。

だが、リオからバトンを手渡された今もってなお、人選は遅々として進んでいないのだという。背景にある小池都知事と森元首相による最新バトル、そして、耳を疑いたくなる議論の模様をお届けしよう。

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開催費用のカットや会場変更の問題ばかりに関心がいき、きれいさっぱり忘れ去られていることがある。それは東京五輪の開会式だ。大会冒頭を飾る大切なイベントなのに、実はコンセプトや演出家など、その中身がまったく決まっていないのだ。東京五輪組織委員会のスタッフがこう明かす。

「開会式は五輪の華。なのに2015年の春頃から新国立競技場問題、エンブレム盗用騒動などトラブルが続出したため、開会式のプランニングに本腰を入れて取り組めない状況が続いていたんです」

本誌は、この状況にしびれを切らした有志が、演出家を決めるための非公式な“勉強会”を開いているとの情報をキャッチ。昨年4月にその模様を伝えた(16年18号)

参加者は組織委、都庁、文科省の各職員など約30人で、森喜朗組織委会長らをはじめとした元議員の面々やJOC(日本オリンピック委員会)幹部などの大物も含まれていた。しかし、そこでの議論は思いのほかお粗末なものだった。例えば、こんなやりとり。

広告代理店「この会も数回開いているので、そろそろ候補を絞り込みたいところです」

JOC委員「ウチはクールジャパンの象徴としてAKB48を推してます。演出家もその線で決めてくれなきゃ困る」

JOC幹部「それもいいが、アニメこそクールジャパンで、世界的だろう。ジブリの宮崎駿は? トトロに聖火を持って走らせたらウケるぞ。いっそ全部アニメにして、スクリーン上映したらどうだ?」

広告代理店「いや、開会式がアニメだけというのはちょっと…。世界の北野(武)はどうでしょうか?」

有識者「以前、資料でもらった彼のヤクザ映画を見たんだがね、すぐ人が殺されるんだよ。開会式でバンバン人が死ぬようじゃ困るがねぇ」

こんな調子で議論は平行線をたどり、JOC職員からは「リオ大会は開催6年前にプランが固まっていた。東京大会の出遅れはさすがにヤバい」という悲鳴も上がっていた。

それから約10ヵ月ーー。都庁職員がこう漏らす。

「準備が進むどころか、ますます迷走しています。原因は小池都知事と森組織委会長のバトル。昨年8月に小池知事が就任し、開会式のコストカットを命じました。実は、リオ五輪の開会式費用が、当初の試算26億円を大幅に下回る3億円程度に収まったんです。物価の違いなどを考慮して、東京は5億円ほどの予算でやれるんじゃないか、と。

ところが、組織委側が『バカを言うな。以前から最低20億円はかけて盛り上げると言ってるだろう』と猛反発。そのため勉強会も“小池vs森”の代理戦争の様相を呈するようになってきたんです」

小池知事や都庁の案はやっぱりナシだ!

広告代理店の担当者もうなずく。

「リオの低予算開催はIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長も高く評価しています。小池知事がコストカットへ舵(かじ)を切るのは必然なんですが、これが森さんは面白くない。『反小池になるなら、どんな開会式でも構わん』とムチャクチャなことを言いだす始末です。小池憎しが先行して、対案なんてないわけで、ほぼ代理店任せの状況です」

では、ここから参加者の証言をもとに、直近の勉強会の模様を順に再現していこう。メンツは基本的に昨年4月時点と同じ。元議員、組織委、JOC、文科省や都庁職員、財界関係者などである。

ひとつだけ変化も。これまで広告代理店は大手A社のみの参加だったが、昨年9月以降、A社、B社の2社になった。どうやら、五輪招致に伴う贈賄疑惑や過重労働問題などが影響しているようだ。

【シーン1】

広告代理店B社「開会式の予算ですが、都庁は5億円、組織委は20億円を提示しています。とはいえ、演出家をまず決めてから予算を精査するのが筋だと思うんですが」

都庁職員「実は、あえて総合演出家を立てずに、各キー局のプロデューサーやディレクターに演出を割り振って任せてしまうのはどうかという意見が、都庁内で出ています」

財界関係者「それは確かに安上がりで済みそうだが」

都庁職員「放映権料を各社が負担することになるわけで、そこに演出料も組み込んでしまうというのはどうかと」

財界関係者「え、テレビ局にタダ働きさせるってこと?」

元議員「フハハ。今の都庁は完全にファッショだな。でも、俺の孫がフジテレビの『めちゃイケ』だかのファンでねぇ。ああいうバラエティ番組を作っている連中に任せてみるのは悪くないかもしれないな。ほら、テリー(伊藤)なんていいんじゃないか」

広告代理店A社「では、先生はテレビ局の起用には乗り気と考えてよろしいですか?」

元議員「いや、でもそれは小池知事や都庁の案だからな。やっぱりナシだ、ナシ」

広告代理店B社「それはフェアじゃないのでは?」

具体的な案が浮上するも、元議員のひと声で議論が頓挫するのが目につくが…。

★後編⇒元議員の圧力とゴリ押しで東京五輪開会式の演出が大迷走!?「小池知事が賛成なら、俺は絶対反対だ!」