「DEF CON」の公式サイト。過去のイベントの様子などを公開。今年は7月に開催予定。ここをハッキングしたら、大したものです!

コンピュータの隅々まで精通し、プログラムを改造できるほどの高い知識を持つハッカー。そんな天才的な彼らの世界にも、トップを競う大会があるという。

『週刊プレイボーイ』本誌で「石川英治のホワイトハッカーなんでも相談室」を連載中のホワイトハッカー・石川英治が紹介する。

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海外ではゲームやドローンレースの世界大会が開催され、賞金総額は1億円オーバー! その模様はネット中継されるなど、人気コンテンツとなっていたりする。

―では、ハッカーの世界では、このような世界大会的なのってあるのでしょうか?

石川 最も有名な大会は毎年ラスベガスで開催されるコンピューターセキュリティの会議「DEF CON」で行なわれる「CTF(キャプチャー・ザ・フラッグ)」ですね。

―何を競うんですか?

石川 サーバー内の脆弱(ぜいじゃく)性をチェックし、修正します。または、ウイルスを送り込んで作業を妨害したりもします。そのようなことをしながらサーバー内の“フラッグ”を回収する競技です。これはチーム同士の戦いで行なわれます。ラスベガスの大会が一番有名ですが、現在は世界各地で「CTF」が開催されていますね。

―ちなみにゲームやドローンレースのように賞金もアリだったりするのでしょうか?

石川 例えば、アメリカ国防総省で兵器の研究開発を行なう組織・DARPA(国防高等研究計画局)の主催する大会ですと、賞金総額が3億円以上というのもあります。

―すっごいじゃないですか!!

石川 魅力なのは賞金だけでなく、就職活動にも有利なんですよ。世界有数のIT企業はもちろん、CIAやNSAのスカウトたちも、熱い視線を送っていますからね。知り合いの日本人は、FBIからスカウトされていましたよ(笑)。

目立たないが上位に入る日本人チームは多い

―え!? これって日本人も参加しているんですか?

石川 例えば、マレーシアで開催された「CTF」の大会では、2011年、12年で日本人チームが2連覇しています。ほかの国際大会でも優勝したり、上位に入る日本人チームは多いですね。

よく国内では“日本人はハッキング分野で遅れている”という識者がいますけど、私の感覚だと技術的に遅れていることはありません。ただ、近年活躍が目立つ中国人や欧米人のように大会で「俺が! 俺が!」とアピールするのがへたで、いまいち目立たないという印象ですね。

―国内でも、このような大会は行なわれているのでしょうか?

石川 「CTFチャレンジジャパン」というのがあって、日本の有名な情報セキュリティ会社の社長率いるチームが優勝しました。レベルはかなり高いと思います。残念ながら現在は、この大会はやってないんですけどね。

―このような大会が国内で盛り上がると、ハッカーに対する認識も変わってくるんでしょうね。

石川 ホワイトハッカーの公的な資格ともいえる「情報処理安全確保支援士」の試験が今年から始まります。初年度なので資格も取りやすいと思います、興味ある方は挑戦してはどうでしょうか。

―ぜひ、石川さんも受験を!

石川 僕は試験問題を考える側に採用されてしまったので、受験資格がないのですよ(笑)。

●石川英治(いしかわ・ひではる)1969年生まれ。現役の“ホワイトハッカー”で、ネットワーク犯罪評論家。不正アクセス禁止法の施行(2000年2月13日)以前は、バリバリのハッカーとしてやんちゃなことも