これからは、「ステレオタイプな幸せ像」を放棄すれば、十分遊んで暮らせる世の中になる?

日本人の平均寿命が延び続けるなか、高齢者の定義を75歳以上に見直そうという動きも出てきた。『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏は、それらの動きが若者の暮らしに与える影響について議論する。

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ホリ 日本老年学会などが、現在65歳以上としている高齢者の定義を75歳以上に見直そうって提言したみたいだね。

ひろ 日本人の平均寿命は男性だと約80歳ですよね。元気なお年寄りが増えたとは思いますけど、「74歳なので高齢者じゃないです!」ってのは、さすがに無理があるような気がします。それに、こういう動きを年金支給年齢の引き上げにつなげようとしているんでしょうけど、なんだか後回しになりそうな予感がします。

ホリ まあ、20代、30代の若者よりも高齢者のほうが人口が多いし、票を持ってるからね。

ひろ ええ。ですから今後も高齢者向けの政策や年金は手厚いままで、例えば「高齢者雇用安定法」とかを作って、高齢者を雇い続けなきゃいけない仕組みづくりをするような気もします。

ホリ なるほどね。

ひろ それに「高齢でも元気な人が増えた」という事実だけを見ればいいニュースだと思いますけど、そのニュースをどう利用するのかを考えると、高齢者じゃない世代に損な形しか思いつかないんですよね。

ホリ どういうこと?

ひろ 例えば、今、月給30万円くらいの人の社会保険料って給料の15%くらいを占めているそうなんですよ。消費税と違って税率が上がっても騒ぎになりづらいですけど、消費税なんかよりよっぽど影響がある。実は国はいろいろな理由をつけて社会保険料を増やし、若い人たちの可処分所得を減らすことを続けているわけです。

ホリ でも、それはマスコミの責任もあるよね。ちゃんと報道してこなかったのもあるだろうから。

ひろ ってことで、週プレでお伝えしてます(笑)。それから、高齢者になる年齡を見直すってことは、年金以外にも定年にも影響を与える可能性がありますよね。

自分で仕事をつくれない人は、引退すべき

ホリ 定年が引き上げられるってことね。

ひろ でも、働ける能力があったとしても、後進に道を譲るぐらいのほうがいいと思うんですよ。

ホリ なんで?

ひろ 社会が雇用できる人数の総数って限られてますよね。なので、自分で仕事をつくるタイプの人以外は、みんなで椅子取りゲームをしているようなもんです。そうなると、毎年、新人が入社してくるような一般企業で仕事をしている人は、引退するのが社会のためじゃないかと。

ホリ 自分で仕事をつくるタイプってのは、個人事業主とか経営者とかになるんだろうね。

ひろ ですね。言われたことだけをやっていれば右肩上がりで収入が増え続ける単純な社会はもう終わりつつあるんです。だから、自分で仕事をつくれない人は、引退すべきだと思います。

ホリ 「それじゃあ食えなくなる!」って言う人が多そうだけど。

ひろ だから貯金をしておくべきですよね。贅沢(ぜいたく)しないで普通にためていれば、そこそこたまると思います。と、ここまで言っておいてなんですけど、「自分で仕事をつくる」ってのも今後は難しくなると思っているオイラです。

ホリ そう?

ひろ ええ。長期的に見ると、日本としての収入が減っていくからです。例えば今は、人件費の安い国で作ったものがネットで発注できて、安い運送費で届いちゃう時代ですよね。つまり、わざわざ先進国で製品を作る必要がないんです。この対策は、トランプさんがやっているような、ある意味での鎖国くらいなわけです。

ホリ まあ、それもあるけど、これからは人間じゃなくて機械が仕事をしたり、富をつくり出す時代になるでしょ。だから、ステレオタイプな幸せ像を放棄すれば、十分遊んで暮らせるよ。んで、遊んでても自己実現ができる社会になると思う。

ひろ その幸せ像ってのは、温かい家庭があってマイホームを持ち、車を所有するみたいなやつですね。

ホリ そうだけど、それもつくられた価値観だよね。とにかく、今は収入が下がってもシェアハウスとかを利用すれば激安で暮らせるし、都心じゃなければ大した家賃もかからない。お金をあまりかけずに暮らすことはできるんだよ。んで、マイナースポーツとかゲームを楽しんで、その地域でトップの腕前とかになれば自己実現も可能なわけでしょ。

「つくられた幸せ像」を疑ってみる

ひろ 自己実現もこれまでは出世して偉くなるとかでしたもんね。

ホリ うん。それもステレオタイプだけどね。だから、誰かがつくった価値観にとらわれることはないってこと。

ひろ でも、そういった価値観はスムーズに変わっていきますかね? 収入が少なくなる人が増えて、シェアハウスとかの需要が高まるという流れは理解できますけど……。

ホリ 世の中の雰囲気が変われば、価値観も変わっていくよ。無理して結婚したり、家とか車を買ったりする人が減るんじゃないかなあ。

ひろ なるほど。そうやって軟着陸するパターンですね。ちなみに、日本ではフランスや韓国みたいに若者が過激なデモを起こす展開はないんですかね?

ホリ ないんじゃない? せいぜいシールズみたいな連中だけだと思う。まあ、高齢者の定義を見直す流れがあるように、日本がこれまでのような状況を続けていくことは難しいと思うから、生き方を根本から変えるべきだね。でも、それってそんなに難しいことじゃないと思うんだよ。

とりあえず、結婚とかマイホームとか、「つくられた幸せ像」「つくられた価値観」を疑ってみることから始めればいいんじゃない? 自分にとって何が大切かを考え直してみるいい機会だと思うよ。

●堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『やっぱりヘンだよね』(集英社)が好評発売中

●西村博之(にしむら・ひろゆき)1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。近著は『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)

(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)