橋下徹氏を失った維新は求心力が急低下。このままでは、次の衆院選でジリ貧になるのは必至だ。(日本維新の会H.Pより)

「アナウンサーには戻れない」

そんな言葉とともに、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏(41歳)が「日本維新の会」(以下、維新)の公認候補として、次期衆院選に出馬するとぶち上げたのは2月6日のこと。

長谷川氏といえば、昨年9月、自身のブログに「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ! 無理だと泣くなら、そのまま殺せ!」と過激すぎる書き込みをして大炎上。それにより、TV番組のレギュラーをすべて降ろされ、今は「収入ゼロ」(本人弁)の失業生活を送るハメになったご仁だ。

この騒動から、まだ半年もたっていないのに、突然の出馬宣言。同氏は6日に千葉市内で行なわれた記者会見で「(ブログでの発言を)深く謝罪させていただきたい」と殊勝な様子だった。

全国紙の政治部記者は長谷川氏の出馬について、こう話す。

「国会議員という新たな“食いぶち”を狙う長谷川氏と、悪名とはいえ、その知名度の高さから、あわよくば当選の可能性もあると期待する維新の思惑が一致したということでしょう。実は、長谷川氏が維新から出馬するという情報は1ヵ月以上も前から永田町関係者の間に出回っていました。ただ、まだ十分とはいえない冷却期間で維新が公認を発表するのは意外でしたね」

ほかにも永田町ウオッチャーが首を傾(かし)げたことがある。それは長谷川氏が千葉1区から出馬するという点だ。長谷川氏は千葉県に20年以上も住んでおり、その事実を考えれば千葉1区からの出馬は不自然ではないように思える。だが、前出の全国紙の政治部記者はこう指摘するのだ。

「放送業界から追放される前の長谷川氏は、主に関西をメインにTV出演をしていました。そのため、知名度も首都圏より関西のほうがずっと高いんです。また、関西を地盤にする維新は、このエリアでの選挙にめっぽう強い。本当に当選を狙うなら、維新支持者が明らかに少ない千葉県よりも関西の選挙区から出馬したほうがいい。なのに、なぜ千葉からの出馬なのか?」

なぜ千葉からの出馬するのか?

この疑問に、維新の内情を知る「維新政治塾」の元塾生はこう答える。

「維新は“本部の関西”と“支部の関東”で統率が取れていないんです。そのため、関東の維新組は代表の松井一郎大阪府知事に一応はお伺いを立てるものの、基本的には勝手に動いてしまうことが多い。それでなくても松井知事は今、万博とカジノを大阪に誘致して関西での党勢を伸ばそうと腐心しており、首都圏の状況などに構っているヒマがない。彼はあまり深く考えず、長谷川氏の公認を了承してしまったのではないでしょうか」

次の衆院選に東京から出馬をもくろむ維新関係者はこう話す。

「事前に長谷川氏の公認が党内で機関決定された様子はありませんでした。実際、私も長谷川さんの出馬を知ったのはTVのニュース。一般の人と同じタイミングです(苦笑)」

政治評論家の有馬晴海(はるみ)氏はこう予言する。

「橋下徹氏が離れてしまった今の維新は、関西以外ではほとんど支持されていないんです。それだけに、首都圏などの劣勢な選挙区では長谷川氏のように、ずけずけとモノを言うキャラの立った有名候補を行き当たりばったりで擁立するケースが続くことになるかもしれません」

現在、関東地区における維新の衆議院議員はゼロ。永田町から生まれた格言「悪名は無名に勝る」で、維新は関東での勝利を飾れるのか。