阿部氏が聞いた女ストーカーたちの言い分「傷つけられたのは私。その代償は払ってもらう!」女ストーカーの7割は元カノ(そのうちの3割は不倫)

昨年9月、東京都目黒区に住む24歳の女性がストーカー被害の末に殺害された。ストーカーが起こす痛ましい事件が後を絶たない現状を受け12月にストーカー規制法が改正、罰則が強化された。しかし実は今、男を追い詰める“女ストーカー”も急増しているのだ!

前編記事「知らない女が浴室の天井裏で…」に続き、被害に合った男性たちの経験談をストーカー事情に詳しい、私立探偵の阿部泰尚(ひろたか)にご紹介いただく…。

■毎日届く差出人不明のはがき

しかし、ストーカーがアカの他人ではなく親しかった女性の場合、当然のことながら話はもっとこじれる。会社役員のDさん(45歳)は妻子ある身だが、20歳年下の派遣社員女性と不倫関係に陥った。

話し合いの上、1年続いた不倫関係を解消し、その後、相手の女は会社を去った。

しばらくすると、自宅、会社…さらには奥さんの実家にまで、Dさん宛てで差出人不明のはがきが届くようになった。内容は「『ガンダム』における黒い三連星はガイア、オルテガと誰でしょう?」や「はらたいらさんに3000点」といった意味不明なもの。こんなはがきが2年間、毎日送りつけられてきた。

Dさんは会社で嘲笑の的となり、家族には不倫がばれ、居場所を失っていく。犯人は元不倫相手と想像できたが、所在不明で連絡が取れない。阿部氏がDさんの依頼で女の住所を特定し、はがき投函の現場を押さえるまでこの行為はやまなかった。女の動機はDさんに捨てられたことに対する復讐だった。

「もともと女ストーカーの7割は、不倫相手も含めた元カノです。そしてハッキリ物事が言えない、女性に優しいタイプの男性がストーカー被害に遭いやすい」(阿部氏)

会社員のEさん(20歳)も、元カノのストーカー行為に苦しめられたひとりだ。数年前、Eさんは18歳のフリーター女性とSNSを通じて知り合い、付き合うようになった。どことなく島崎○香に似ている恥ずかしがり屋の彼女と、しばらくは順調な交際が続き、やがて彼女は毎週末Eさんのアパートに泊まるようなった。

だが、実際に付き合っていると、彼女は何事にも後ろ向きで悲観的な性格だった。1年が経過した頃、Eさんは「自分の仕事が面白くなるにつれ、そんな彼女に飽きてきた」。

ある時、些細なことで口論になり、「このコとは別れよう」と決心したという。だが別れを直接切り出すことができず「仕事が忙しくなり海外に住む」などとウソをつき距離を置くことにした。すると毎日、数十回も彼女から電話がかかってくる。無視をすると留守電に「どこにいるの?」とメッセージが蓄積した。

被害妄想が強い女性は、男の些細な言動を自分への迫害と感じる。このタイプの特徴は「約束の時間が守れない」こと。被害妄想が強いので待ち合わせ場所に遠回りして向かったり、夜も寝つきが悪いので1時間は遅刻する。思い込みで話しているので、会話に形容詞、感嘆詞、同調が多い。「わ?、かわいい! でしょ?」など。普段は礼儀正しいが、タクシーが素通りすると般若のような形相で「事故って死ねばいいのに」と吐き捨てるなど、二面性がある。妄想で血液が頭に集まり胃の動きが悪いせいか、食が細い傾向がある

円満に別れても元カノがストーカーに豹変することもある

 

このタイプは「30代未婚キャリア女性」と断定できる。プライドが高いので、うまくいかないことはなんでも相手のせいにする。外見はデキる大人のオンナ風なのに、なぜかキティちゃんのボールペンなど、キャラクター製品を持ち歩いている。知り合いにお金持ちがいることを自慢げに語りたがる。言葉遣いが上から目線などの特徴がある。レストランの店員に向かって「私にとってはどうでもいいことなの。あなたのお店のためを思って言うんだけど、ここのお店、『いらっしゃいませ』がなかったわよね」といった感じ

■元カノにレイプ犯に仕立て上げられる

「生活に支障を来す大量の電話はストーカー行為ですが、警察に相談しても電話番号を変えたら?と言われるのが関の山」(阿部氏)だという。

Eさんはただ嵐が過ぎるのを待った。彼女が自宅で待ち伏せしていると友人から知らされたEさんは、会社に寝泊まりすることにした。

するとある日、会社に警察から電話があり「Eさんの行方不明者届が出されている」という。当然、届け出たのは彼女。ストーカーが警察を使おうとする心理が理解できず、身の毛がよだつ思いがしたという。

しばらくすると、彼女と共通の知人である男性から呼び出しがあった。相手が男なら事情を理解してくれると思い、Eさんは彼と会うことにした。しかし、その男はEさんの顔を見るなり「あなたの行為はヒドすぎる!」と興奮気味にまくし立てた。

後でわかったのは、彼女が“Eさんにレイプされた様子を撮影され、その動画をネタに金をゆすられている”というウソを友人知人に言いふらしているという事実だ。

Eさんの曖昧な態度がストーカー行為を誘発したかもしれないが、その手法は想像を絶するものだった。彼女との別れ方はストーカーを生む一因にもなるが、たとえ円満に別れても元カノがストーカーに豹変(ひょうへん)することもある。

「男にすぐに新しい彼女ができると、ストーカーされる確率が高まります。被害妄想が強い女性は二股を疑い、女子会で女友達に相談する。すると友人たちは必ず『きっと二股だよ~』と言うようですね。これが元カノの復讐心に火をつける」(阿部氏)

二股が事実かは重要ではなく、元カノの思い込みが動機になる。無言電話、SNSでの誹謗中傷、偶然を装った待ち伏せ、男の社会的地位を潰すこともいとわない。

「交際中、彼氏が社割のきくレストランでご飯を奢(おご)ってくれた事実を逆手に取り、その男は横領犯だと会社に告発した女性もいます」(阿部氏)

女ストーカーにとって復讐が正義となる時、男の常識は通用しない。こんな目に遭いたくなかったら最低限、「男は女性に過度な期待を持たせず、曖昧な態度は避けるべき」(阿部氏)だろう。

●ナビゲーター 阿部泰尚(あべ・ひろたか)T.I.U.総合探偵社代表。ストーカー被害者の立場に立ち、これまでに300件に上るストーカー事案の調査を行なう。業界では「ストーカー撃退王」の異名を取る

(取材・文/桑原和久 イラスト/マイボール遠藤)