脳科学者・中野信子さん。最新著『サイコパス』(文春新書)が発売中

お笑い芸人・狩野英孝さんをTVの画面で見かけなくなって、1ヵ月余りーー。

6股疑惑に続いて、淫行疑惑…それにしても、交際相手はあの加藤紗里に42歳の川本真琴から17歳の女子高生…と幅広い。

釈明記者会見での名(迷?)言「野生の勘というか、自分の中でその勘が働いた」も話題となったが、野生の勘って!? 一体、そんなものが実際に作用するものなのか? そしてどれほど男女のモテに影響するのか…。

そこで、このモンダイについて気鋭の美人脳科学者・中野信子先生に“脳科学的に”解き明かしてもらった!

-まず、狩野英孝さんがなぜモテるのかについて、お聞きしたいのですが…。

中野 モテる男性に多い理由として「この男は私のことを好きかしら?」というような気持ちを女性に起こさせやすくするサインを出す必要があります。好意を示す素振りとか、目をじっと見つめてみたりとか、狩野さんは女性が近寄っていいと思えるサインをすごくを出しているんだと思います。

例えば、躊躇(ちゅうちょ)なく、胸元のガン見ができるとか。良識ある男性でしたら、悪いかなと思って胸元から目を離したり、欲望をむき出しにしませんよね。狩野さんは、それをわかりやすくむき出しにするというか。

そこに「この人、私のことを好きかもしれない。少なくとも気にしてくれている」と女性は引っかかる、あるいは惹(ひ)かれるんでしょう。また、狩野さんの場合は、それを無意識やっているというところもポイントなんでしょう。

-計算ずくではなく、自然体でやっている?

中野 計算を感じると、人は警戒しますからね。脳科学的に、自然な行動はボトム・アップ処理、計算された行動はトップ・ダウン処理と言われます。トップ・ダウン処理は脳のエネルギーリソースをすごく使うので、見ているほうも疲れてしまうんです。逆に狩野さんの場合はボトム・アップ処理だけでやっているように見えますので、ほっとするところがある。

脳には“処理流暢(りゅうちょう)性”という特徴があります。脳はエネルギーリソースを使わない処理を選びがちということですが…例えば、正しくても難解な言葉より、わかりやすい言葉を好む。私は「トランプが大統領選に勝つ」とずっと言っていたのですが、その根拠もここにあります。アメリカ国民もわかりやすい言葉を話すトランプを選んだんです。これは狩野さんにも当てはまって、ボトム・アップ処理での言動が多いから女性に受け入れられやすいのです。

-そこに、モテるコツがあるんですね! でも、6股疑惑とか、かなりの浮気性みたいですけど…。

中野 浮気性の人はモテないと思われがちですよね。でも、気の多い男性は遺伝子をまき散らす可能性が高い。ですから、「子供も同じ遺伝子を受け継いて、より多くの子孫を残せるかも」と女性は考えます。そのため、浮気されるリスクを背負っても、あえて自分の遺伝子を残すために浮気性の男性を選ぶ女性もいるんです。

また、女性には生理周期で浮気性の男性を選びやすい時期もあります。安心感をもたらすセロトニンの分泌が生理前1週間、排卵日の前後1日の3日間は少なくなるんですが、その時期は生物的な不安も感じやすく、より自分の遺伝子を残そうと思うんです。

寄ってきた獲物を逃さない“ハンター”?

現代は、狩野さんのようなタイプの男性がモテる時代!?

-つまり、そこで“野生の勘”が働いて、そういう周期の女性がわかるのかもと?(笑) 一般的に野生の勘、第六感は女性のほうが鋭いとされている印象もありますが。脳科学的には正しいのでしょうか?

中野 実はそうとも言えないんですよ。ウソを見抜く実験をすると、むしろ男性のほうが少し成績がよかったりしますからね。ただ、女性のほうが普段からなんでもかんでも疑う傾向があるので、その分、正解になるケースも多いのかもしれません。

狩野さんの言う「野生の勘」というのは、脳が「何かヘンだな?」と検出することだと思います。整合性がとれないことや矛盾に気づくことは、脳新皮質の奥にある帯状皮質の前側、前帯状皮質(ACC)で行なわれます。前帯状皮質の働き自体に男女差はありませんが、女性は特に異性を選ぶ時にそこを使うんです。だから一般的に第六感が鋭いと言われるのだと思います。

一方、男性が異性を選ぶ時は視覚で、島皮質の視覚関連領域を使います。女性の若さや健康、美しさ等、生殖に適しているかを見た目で選びます。

-先生の著作によると、脳には男脳と女脳があり、女性のほうが言語コミュニケーションを司る“上側頭溝”が発達しているといいます。このことと女性の第六感の鋭さのイメージとの関係は?

中野 上側頭溝では文脈の違いを判断します。例えば相手が年齢をサバ読んでいると気づく場合、「22歳の女性というのは本当だろうか?」という疑問を「大学に通っている」「世代的にこういう音楽は聴いている」と相手との会話の文脈から判断していくところですから、そこは関連が深いかもしれません。

-“野生の勘”が働いた狩野さんの脳は、やはり女脳的ということではないんでしょうか?

中野 第六感が強いタイプとは思えませんね。そこはむしろ、男脳の傾向が強いと思います。狩野さんはたくさん針を垂らしているというか、イカ釣り漁船のように集魚灯で集まったイカを次々と釣り上げている。寄ってきた獲物を逃さない“ハンター”というイメージですからね。

-最後に、中野先生は女性として、狩野さんをどう見ていますか?

中野 異性としてはともかく、芸人としてネタ満載な方ですね。ドジっ子みたいな、すごく可愛らしい人だと思います。

-ありがとうございました。狩野さんはやはり脳科学的にも女性から嫌われない理由があるような気がしてきました(笑)。

中野信子なかの・のぶこ)1975年生まれ。IQ148!の天才脳科学者。東京大学工学部卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008?2010年にフランス国立研究所ニューロスピンに勤務。現在、東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。平気でウソをつき、罪悪感ゼロの人々の脳の秘密に迫った近著『サイコパス』(文春新書)が大きな話題になっている

(取材・文/羽柴重文 撮影/関純一)