日米首脳会談を「『恥ずかしい』とすら思っている」と批判する古賀茂明氏

日米首脳会談でトランプ大統領に追従笑いを浮かべていた安倍首相。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は「安倍首相の振る舞いは、日本が『米国追随の後進国』だと宣伝したのに等しい」と批判する。

古賀氏が考える、日本が「真の先進国」になるための3つの条件とは?

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2月10日から行なわれた日米首脳会談。安倍首相はトランプ大統領とゴルフに興じ、追従笑いを浮かべていた。トランプ大統領から「尖閣防衛には日米安保条約が適用される」との言質を引き出したことに満足し、一方的にTPP離脱を宣言されたことへの苦言はひと言もなかった。

共同通信の世論調査によると、この会談を「よかった」とする回答が70%に上ったという。しかし、私はこの会談を「恥ずかしい」とすら思っている。安倍首相が対トランプ外交で見せた振る舞いは、日本が「米国追随の後進国」だと宣伝したのに等しい。

外交だけではない。内政でも日本が「先進国」ではないことを示している。

例えば、つい最近発覚したクロマグロの漁獲規制違反。資源保護のためにクロマグロ漁は承認制になっているが、日本はその国際ルールを破り、長崎県や三重県など、実に10県で違法操業を繰り返していた。これでは〝略奪国家”の中国と同じであるとみられても仕方がない。

安倍政権が進める「働き方改革」も国際基準から見れば完全に途上国水準である。その一例が「子育てサポート企業」の新認定基準。電通で過労自殺が発生したことなどを受け、厚生労働省が認定基準を再検討しているのだが、なんとそれが「年間の月平均残業時間が60時間を超えない企業」というのだから笑ってしまう。

年間720時間も社員に残業をさせる企業が、どうして「子育てサポート企業」と評価されるのだろうか? 欧米諸国から見れば、「ブラック企業の推進」と言われそうだ。

これらはほんの一例だ。世界基準から見れば、遅れているとしか思えないことが、日本には数え切れないほどある。

「真の先進国」になるための3つの条件

しばしば安倍首相は「世界の真ん中で輝く日本を目指す」と豪語するが、その言葉は実に空虚だ。

では、日本が“輝く”ための条件は何か? 私は「真の先進国」になるために3つの条件があると考えている。

ひとつ目は「企業よりも人を大事にする」こと。具体的には、労働コストを上げなければならない。給料を上げ、長時間労働を是正し、休みを増やす。そうすれば優秀な人材は集まりやすくなり、生産性も上がる。それができない企業は淘汰されても当然という政策に転換すべきなのだ。

ふたつ目は「自然と環境の持続可能性を最優先する」こと。原発はやめて、自然エネルギー大国に転換できない日本は完全に世界の潮流に取り残されている。

3つ目は「公正な経済ルールを厳格に執行する」こと。天下りや談合、サービス残業など、ルールはあるのに厳格に運用せず、不正を許してしまう悪癖をたださなければ、いつまでたっても真の先進国にはなれない。

米国におべっかを使っても日本が世界から尊敬されることはない。安倍首相がやらなければならないのは、まずは、自らが先進国になるための3つの改革を実行することだ。

●古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011 年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)