「芸能界のしきたり」という言葉で、過酷な労働や不当な契約を正当化するべきではない

芸能事務所レプロエンタテインメント所属の女優・清水富美加(現・千眼美子)が突然の芸能界引退、宗教法人・幸福の科学への出家を表明した。

清水は自筆の声明文や2月17日に発売された告白本の中で仕事内容、給与など待遇面を理由に所属事務所に対して苦言を呈し、各方面で波紋を呼んでいる。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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2月14日に出演した『バイキング』でも、清水富美加さんに批判的な意見が複数ありました。私は、「芸能界、放送業界では、スタッフや出演者ら働く人の権利を守る取り組みが遅れている。それは改善されるべきだと思う」と述べました。

清水さんの件は事実関係が明らかでないので事情はわかりません。ただ、どんな場合でも「芸能界のしきたり」という言葉で、過酷な労働や不当な契約を正当化するべきではないと思います。

芸能人には、子役から活動している人も、サラリーマンに近い立場の人も、対等なマネジメント契約の人も、個人事務所の人もいます。どのような経緯で芸能界に入ったかや、事務所によっても働き方はバラバラ。おそらく「働く人の権利」という発想が芸能界という特殊な世界にはなじまないという意見は、長く芸能界で苦労を重ねてきた人の実感なのでしょう。でも今は、ブラックな働き方に厳しい視線が注がれています。ここは別世界、は通用しません。

同時に気になるのは「芸能人は全員事務所の奴隷」と決めつける風潮。それもまた、偏見です。芸能人も積極的に意見の発信をしていくといいですね。

●小島慶子(Kojima Keiko)タレント、エッセイスト。局アナから系列事務所、その後大手事務所に所属し、仕事の配分は自分で決めている。芸能界のしきたりとは遠いところで生きてきたので、肌感覚の「掟知らず」であることは確か