ロードバイク駐輪時に多く使われるワイヤーロック。大型のボルトクリッパーを使えば短時間で切断されてしまう(写真はイメージです)

盗んだ高級ロードバイクのフレームを切り刻み、「バラバラ写真」を盗難情報サイトの掲示板に投稿する―。そんな奇怪にして、被害者感情を逆なでするような事件が、昨年末から今年にかけて多発している。いったい、どんな人物がなんの目的で……? 犯人像に迫る!!

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「猟奇的な手口に、ロードバイク愛好家が震え上がっている」。1月初旬、そんなメッセージとともに取材班の元に寄せられたホームページのアドレスを開いて、一瞬声を失った。

そのサイトの掲示板には、バラバラに切断され、ひとまとめに重ねられたロードバイクのフレームの写真が投稿されていたのだ。しかも1台や2台ではなく、ページをスクロールするたび、哀れな姿になったフレームが次々と現れる。

また、それぞれの写真には「じゅうりょう 1150g」「じゅうりょう 1110g」(原文ママ)と、フレームの重さを示したと思われるコメントが淡々と添えられていて、得体の知れない薄気味悪さがある。

情報を寄せてくれたのは、自らもロードバイクが趣味で、自転車の盗難情報を定期的にウオッチし、SNSなどで警鐘を鳴らしているA氏だ。

「被害者が盗難情報を書き込み、盗まれた自転車の手がかりを求めるサイトは複数あります。そのうちのひとつ『STOLEN BIKES』に、昨年12月初旬からこのような写真が連続してアップロードされたのです(現在は閲覧できない)。

昨年末に突然、バラバラ写真が投稿された盗難情報サイト『STOLEN BIKES』の掲示板。写真とともに「じゅうりょう」が記載されている

被害に遭ったロードバイクのフレームのいくつかは、別の盗難情報サイト『CSI自転車特捜24時』に報告のあったものと特徴が合致しました。つまり、バラバラにされたフレームは『盗難されたロードバイク』ということがわかったのです。そして、『バラバラ写真』をアップした人物が、一連の犯行に関わっている可能性が高いのです」

盗難情報サイト『CSI自転車特捜24時』より

アプリ版によれば、幕張メッセ周辺は盗難危険度が非常に高い。こうした情報を確認するだけでも防犯につながる

A氏によると、犯人が投稿したロードバイクの価格は安いものでも10万円台半ば、高いものだと50万円(!)を超えるものもあるという。被害者の金銭的被害もさることながら、「いつかは見つかるかも……」という一縷(いちる)の希望まで打ち砕く卑劣な犯行だ。

犯人はなんの目的でロードバイクを分解し、切断したフレームの写真だけを投稿しているのだろう? 残りの部品はどこに?

「ロードバイクを盗む犯人の動機のほとんどは、転売による金銭です。しかし盗んだロードバイクをそのまま中古ショップに持ち込んだり、オークションに出品したりすると、フレームに刻まれた車台番号から足がつきます。そこでロードバイクを分解し、フレームは捨て、残りの変速機、ギア、ホイールといったパーツ単位で売却するのです」(A氏)

では犯人は、そうしたパーツの売却で多額の不当な利益を得ているのか?

「私が知る限り、この人物は、これまで20台近くのフレームの切断写真をアップしています。なかには、ほかの盗難情報サイトなどでも被害報告が確認できないロードバイクもありますし、まだアップしていない写真があってもおかしくない。それに、こうした投稿を行なう前にも盗難を繰り返していたとすれば、犯人はすでに100万円を超える転売益を得ていても不思議ではありません」(A氏)

◆後編⇒高級ロードバイク「連続バラバラ盗難事件」! 解体する犯人の心理と警察の対応は?

(取材・文/植村祐介 撮影/岡倉禎志)