週プレNEWS編集部から連載200回の記念盾をゆでたまごの嶋田(左)、中井(右)両先生にプレゼントさせていただいた!

2011年秋、衝撃の連載復活から約5年半、ますます各メディアでの露出も広がっている週プレNEWS配信の漫画『キン肉マン』新シリーズ(毎週月曜更新)。その連載が3月6日の更新でとうとう大台となる連載第200回を迎えた。

漫画のWEB連載という形式は、今やすっかりひとつのスタイルとして世に定着した感もあるが、開始当時はまだ試験的に行なわれているという印象が強い頃。

その時期にこれだけのビッグタイトルが雑誌ではなく、しかも毎週無料公開していくというのは異例の対応であった。だが、そこであえて「WEB漫画のパイオニア」としての旗振り役を担い、その存在感を発揮してきたことは間違いない。

そこで、このメモリアルな第200回のタイミングで、原作担当・嶋田隆司、作画担当・中井義則の両先生に今の思いを聞いてみた。

―2011年11月から始まったこの『キン肉マン』新章ですが、あれから5年超となり、ついに200回到達です。改めて振り返られていかがですか?

嶋田 昔の雑誌連載時に一番長かったのが「キン肉星王位争奪編」というシリーズで、これが約3年続いたんですが、まさかそれを超えてくるほど長くなるとは思ってませんでした。

でも今回は、僕としては長かったなぁという感想はあまりないんですよね。昔の王位争奪編の時は内心、特に後半はちょっと間延びしてきたなぁという印象を持ちながら書いてたところが実はあったんです。その反省もあって、今回はそうならないように気を付けようと思って始めたんですが、こうして振り返っても期間としては長いけど、あの時みたいに間延びしてきたなぁという印象はあまりないんですよ。

毎週ただ一生懸命やってたら、いつの間にか200回になってたという感じで。逆に言えばそういう気持ちだったから、途中で切り上げようと思わずここまで続けられたんでしょうね。

中井 僕も相棒と同じで、200回というのは週刊連載では実質4年ですし、そこまで手放しに喜んでもいられないという意識のほうがまだ強いですね。ただ大きな数字ではありますし、そこをこうしてご評価いただけるのは大変ありがたいことではありますけど。正直な感想としては、決して気を抜いていい数字でもないというところです。

―つまり両先生ともに“200”という数字自体にそれほど大きな感慨は感じられていない?

嶋田 ないですね(笑)。このシリーズが綺麗に終わったら感慨のようなものも出てくるんでしょうけど、今はまだ通過点ですから。原作書き上げて中井君にFAX送る時に、頭書きで第200話って書いて「ああ、そうか」って思ったくらいで(笑)。

中井 そやな、僕もそれ見た時くらいやね(笑)。

嶋田 200という数字を目指してたわけじゃないですからね。ただそれくらい長く続くシリーズとして、ここまでだれずにやってこれたのはよかったなと思います。

―WEB連載というのも初めての試みで、最初は手探りで始められたところもありましたよね。「軌道に乗らず人気が出なかったら1年くらいで畳む」という話もあったということでしたが…。

中井 その当時のいきさつを考えると、ここまでしっかり続いてくれたのは本当によかったというのはありますね。なにせ当時は「集英社のWEB連載の道を切り拓くパイオニアになってください」という言い方はされたものの、そんな不安定な立場に自分たちが立たされているというのがやっぱり僕としてはちょっと悔しくてね。

絶対に1年で終わるような無残な結果を晒(さら)すものかと相当奮起した覚えはあります。100回、200回という数字にこだわりはなかったですけど、それを達成できた証明だということであるなら、それはひとつ大きな意味を残せたのかな、とも思います。

嶋田 そうですね。もし1年で畳むということになってたら、いろいろ中途半端で悔いのたくさん残る結果になってたと思います。ストーリーの面でも完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)というところまで出せなくて、完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバー)までで終わってたでしょうし。

でもそうならずしっかり続けられたおかげである程度、納得のいくシリーズになってきたという手応えはあります。

―非常に内容の濃いシリーズになりましたものね。

嶋田 はい、おかげでめちゃくちゃ試合数の多いシリーズになりました(笑)。思えば、ここまでたくさんの試合を描いたシリーズはなかったんじゃないですかね。だって最初に敵の第一陣が出てきて、いつもの感じだとそれを倒したらもう終わりなんですよ。でもそのあと無量大数軍(ラージナンバーズ)の第二陣が出てきて、さらに第三陣まで出てきましたからね。

昔はできなかったことも挑戦できて今が楽しい

―実は一度、コミックスでいうと45巻までで話としては途切れていて、46巻からまるで主人公が悪魔将軍に変わったかのような感じにガラッと大きく転換しました。ここで別のシリーズに入ったという見方もできないことはないですよね。

嶋田 そうですね。もし1年で畳(たた)むパターンだと、ここまででしたね。あそこの時点でどれくらい経ってますか?

―45巻のラストが2013年9月ですから連載開始2年弱ですか。

嶋田 あ~、じゃあそこからさらに3年以上やってるんですか…。そんな感じ、全然しませんね(笑)。

―それくらい毎週充実されていて、振り返る時間もなかったと。

嶋田 あっという間ですね。でも昔のジャンプでの連載が8年だったことを考えると『キン肉マン』という作品全体から見ても結構な配分のシリーズということになってきましたから…そっちのほうが僕としては驚いてますね。そんな割合占めるほどやってたかなって、本当に今でも全然そんな実感がないんですよ(笑)。

中井 そうですね。最初こそ先に述べたような気負いはありましたけど、でも『キン肉マン』を再開できたこと自体は僕としても非常に喜ばしいことでした。だからこの200回、振り返ってみるとやっぱり楽しかったんですよ。

―特に中井先生はメニエール病など今も常に持病と闘いながらのご執筆ということで、そう言っていただけるのは嬉しいですね。

中井 体がツラいのはありますけどね、でも仕事はやりがいのあることが多いですから。…例えば、コマ割りなんかも昔の『キン肉マン』では試したくてもできなかったような大胆なことを今は結構楽しんでやってます。演出の方法も、昔は思いついたのに技術が伴わなくてできなかったことがたくさんありました。でもそれを躊躇(ちゅうちょ)なく試すことができます。そういう環境で描けるようになったのがありがたいですね。

―昔はできなかった?

中井 特に若い頃は大胆な冒険はしづらかったんですね。変なことやってガタッとアンケートが落ちると、連載自体がある日突然、終わるんじゃないかという恐怖も常にありましたし…。

嶋田 実際に僕ら「アメリカ遠征編」で1回、大失敗してますからね(苦笑)。

中井 でも今は結構、のびのび自由にやらせてもらってますので。雑誌掲載だとどうしても無意識のプレッシャーがあるんですよ。WEBの場合はそこから解放されたような感覚があって、それも楽しく仕事が続けられている要因のひとつかもしれません。

嶋田 僕らとしては今やそれがしっかりと結果に繋(つな)がっている感があるのも嬉しいところですね。そもそも昔、いったん畳んだはずの作品を再開させて、それをここまでもう1回、ちゃんと盛り上げられたというのは、他ではあまりそういう話は聞かないので。自分たちがそれをやれたというのは漫画家として少し誇らしくはありますね。

「“今”の『キン肉マン』が一番面白い」を伝えたい!

―WEB連載というのが仕事のスタイルに合っている部分も意外とあった?

嶋田 そうですね。あとはWEB連載のよさとしては、みんな読んだ後、そのままネットにいろいろ感想を書きこんでくれるというのも面白いところですね。読者の声が毎週、しっかり届いて反応が見られて…という中で作業を進められましたから。自分たちのやってることがウケてるかウケてないか、その手応えをしっかり感じながらやってこれたから、自信を持って作業を進められたということですね。これが一番大きいかも知れません。

―それはやはりツイッターなどSNSの反応とか…。

嶋田 はい。WEB連載に移って一番よかったと思うのはそこかもしれません。日曜の深夜0時に更新されると一斉にツイッターの感想が上がるんです。それが200回やってて今でも毎週、嬉しいんですよ。昔はそれが読者のハガキだったんですけど、やっぱり漫画家って読者に自分の作品を読んでもらって、それでどう思われるかという仕事じゃないですか。面白いと思ってもらえたら続けられるし、反応なければ終わるし。

形は変わったけど、昔のジャンプ時代もこうして毎週読者のアンケートに一喜一憂しながらやってたなって。この年になってWEBという場所で、あの頃と同じ気持ちでもう1回仕事できてるのが僕自身、ものすごく楽しいんですよね。特にWEBにくる以前のしばらくは、読者の反応をリアルに感じることができなかった気がしていて、それも様々な迷いを生んでた気がするんです。だから今はWEB連載というのが、とても居心地がいいんですよ。巡り巡ってここにきたなという感じですね。

―今はまだまだ通過点とのお話ですが、あえて今後の目標を語っていただくとすれば?

嶋田 もっと毎週、今以上に話題の作品になっていくように頑張りたいですね。今も例えばツイッターだと新しい話の原稿がアップされた瞬間、タイムラインが「キン肉マン」で埋め尽くされる感はありますけど、それはまだまだ作品が好きな人の間だけの話だと思うんです。

でもそうじゃなくて作品を全然知らない人が「なんじゃこりゃ」って思うくらい埋めつくされるようになると、読んだことがない人にももっと広まっていってくれるんじゃないかと。そうしてまだ触れたことのない人が興味を持って、読んでくれるようになるというのがずっと目標です。そのためには『キン肉マン』というタイトルは昔からあるものですけど、昔の超人だけ出してるとただの同窓会みたいになってしまうので新超人もどんどん出していかないといけませんし。

長い作品だけに「今の『キン肉マン』が一番面白い」って言われる仕掛けをちゃんとしていかないと…とは常に課題として考えてます。すごく難しいことですけどね(笑)。でもそう言われ続けるように頑張りたいですね。

―中井先生はいかがでしょうか?

中井 今のシリーズに入って自分でも驚いたのは、『キン肉マン』がここまでスケールの大きな世界観で描ける作品だったということです。昔は昔でたくさんの人に読んでもらって大きな作品に育てていただきましたけど、やっぱり見返すと僕らも若かったから、踏み込めてない部分も多かった気がします。

でも今は僕らもそれなりに年をとって、オッサンにはなりましたけど、その経験を活かして描ける部分が広がったと思うと、まだまだ描いてみたいことはありますね。確か『キン肉マンⅡ世』の連載が全610回で、今回の新章が今で200回。ジャンプ時代も入れたらもっと大きな数字になるとは思いますけど、週プレさんの畑だけでトータル1千回超えるというのをまずは当面の目標にして頑張りたいと思います。

―力強いお言葉、ありがとうございます。現行シリーズも佳境に入っていますが、どんな形で決着がつくのか楽しみです。これからも300回、400回目指して頑張っていただければと思います!

(取材・文/山下貴弘 撮影/鈴木大喜)

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