現在、審議中の法案は、今後の日本の行く末を占うものばかりだ!

1月20日にスタートした第193回国会。提出法案は64本と、例年に比べ半分以下になっている。

しかし、審議される法案は控えめどころか、国民生活に大きな影響を与えかねないヤバい法案がめじろ押しだ。前回記事で紹介した「テロ等準備罪」に加え、特に注目すべき法案について解説する。

■「働き方改革」は「働かせ方改革」

安倍内閣最大のチャレンジと、首相がPRに余念のない「働き方改革」の関連法案もかなりうさんくさい。

残業の上限を月平均60時間、年間720時間までとする「長時間労働是正法案」、時間ではなく、成果に応じて賃金が支払われる「高度プロフェッショナル制度法案」などがそのメインメニューだが、専門家からはブーイングが相次いでいるのだ。残業の上限を決めるだけでは「実効性がない」と指摘するのは、労働問題に詳しい嶋﨑量弁護士だ。

「残業上限を労使で合意しても、サービス残業や持ち帰り残業などの『隠れ残業』が横行するケースが多発しています。上限規制自体は正しいのですが、本当に安倍政権が長時間労働をなくすなら、まずは会社に、社員の労働時間をきっちりと記録・管理させ、会社が違反したら、ただの『注意』ではなく、刑事罰や企業名公表などの制裁を科す法律をつくるべきです。それもせずに単に残業上限だけ決めても、現状では逆に水面下での『隠れ残業』が増えるリスクがあります」

法案が、繁忙期に限り「月100時間」の残業を認めているのにも違和感があるという。

「月100時間の残業は過労死ラインです。『繁忙期』とはいえ、それを法律で容認するのは、国が労働者を死ぬレベルまで働かせてもよいと認めたに等しい。国が100時間までOKを出したという誤解も広がりかねない」(嶋﨑氏)

「高度プロフェッショナル制度法案」にも異論がある。元経済産業省官僚の古賀茂明氏が話す。

「成果さえきっちりと出せば、労働時間は自由に決めることができるなどのメリットが強調されていますが、本当でしょうか? 現実には企業のトップが最も必要とする人事、企画、広報などのプロフェッショナルな人材を、時間帯に関係なく、都合よくこき使える制度と化す可能性が高い。実際、経団連はこの法律の成立を熱望していると聞いています。安倍内閣が打ち出す『働き方改革』は、大企業トップのための『働かせ方改革』と呼ぶべきでしょう」

確かに考えてみれば、「長時間労働是正」と「高度プロフェッショナル制度」を同時に成立させようとする安倍政権の動きは矛盾している。なぜなら前者は残業時間を減らすためのものなのに、後者は残業時間は青天井になってしまいかねないからだ。残業時間の取り扱いをめぐり、ふたつの法案が目指すベクトルの方向は真逆。

つまり、「働き方改革」の正体とは、安倍政権が、ある時は財界の要望を受け入れ、ある時は国民受けのよい政策をぶち上げ、場当たり的に採用したバラバラの労働基準法改正案を、ひとつに束ねたものにすぎないのではないだろうか?

中古武器輸出に道を開く「財政法の改正」とは

■“中古の無償貸与”から始まる日本の武器輸出

自衛隊の中古武器輸出ビジネスに道を開く法案も今国会で通るといわれている。具体的には「財政法の改正」だ。この法律は「国の財産」とされるものを他国に提供や貸与をする場合、適正な対価を得るように求めている。もちろん、自衛隊の装備品なども「国の財産」だ。

「そして今回、財政法を改正し、中古の航空機や船舶を東南アジアなどの途上国に無償で提供したり、貸与できる法改正が防衛省を中心に進められているんです」

そう語るのは、武器輸出ビジネスに詳しい東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者だ。なんのため?

「狙いは日本製武器の輸出です。初めに中古武器をタダで提供し、徐々に最新鋭の武器を売りつける。一度売り込みに成功すれば、部品や整備ノウハウなども追加で買ってもらえるというわけです。今の流れはキナ臭いと言うほかはありません」

※続編⇒外資に乗っ取られる日本のインフラ! 安倍政権が通しそうなヤバい法案とは…

★『週刊プレイボーイ』9号「今度の国会で安倍政権が通しそうなヤバ法案10!!」より