家や家族を失った人が日々感じている気持ちはわかりません

津波によって一度は瓦礫と化した町だったが、あれから6年がたち、整地された土地には新しい住宅も建ち始めている。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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あれから6年。「絆」の大合唱は遠くなり、福島第一原発事故から自主避難して転校した子供たちへのいじめが問題となっています。

あの日、破壊された街を映し出すTV画面を見つめて「どうか一日でも早く復興しますように」と祈った人はたくさんいたはずです。私もそうでした。被災した子供たちへの寄付などを私なりに続けてきましたが、家や家族を失った人が日々感じている気持ちはわかりません。

「普通の暮らし」って、なんでしょうか。私たちの日常は、無駄なものであふれています。生きるためにどうしても必要なものさえあればいいのではなく、より快適に、より楽しく、ささやかでも自分のお気に入りに囲まれた、居心地のいい場所が欲しい。それは誰にでもある、ごく普通の願いです。あなたの部屋も、そんなものだらけでしょう。

しかし、人は無意識に、目に見えてわかりやすい被害や、わかりやすい被災者像を求めてしまいます。時には、彼らが自分と同じように無駄なものに囲まれた日常を手にすることさえ、贅沢(ぜいたく)だと決めつけてしまう。復興とは、普通とは、絵にならないもの。6年はまだ道半ばなのです。

●小島慶子(Kojima Keiko)タレント、エッセイスト。東日本大震災当日は、東京のラジオのスタジオにいた。ビルの9階で揺れが激しかったため、テーブルにつかまり、床に膝立ちでリスナーに身を守るよう呼びかけた。以来、高層階が苦手