籠池泰典理事長が認可申請を取り下げた、森友学園の新設小学校「瑞穂の國記念小學院」

籠池理事長が小学校の申請を取り下げたことで、事態は収束に向かうと思われた「森友学園騒動」。

しかし、稲田朋美防衛相が同学園との関係について虚偽答弁したり、岡山の加計学園に「第2の森友疑惑」が浮上したり…。

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幼稚園児に教育勅語を暗唱させたり、「安倍首相がんばれ」と宣誓させたり、そんな教育内容も話題となった森友学園。3月10日に開かれた同学園の会見は、籠池泰典(かごいけ・やすのり)理事長のブチ切れシーンが繰り返しテレビで流された。会見の場にいた作家の菅野完(たもつ)氏はこう語る。

「彼の立場からすれば『小学校をつくるためずっと市民運動をしてきた。ついに実現しかけた寸前で突然、夢がついえた』ということ。その無念さをまだ言葉にできていない感じでした」

そして今、森友学園と近い思想をアピールしてきた“お仲間”たちは、一斉に距離を置き始めている。

だが、気になるのは、同時に「籠池はバカだが、教育勅語は悪くない」というアピールが目立ってきたことだ。元“お仲間”の稲田朋美防衛大臣は「教育勅語の精神は親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すこと」と国会で答弁し、『産経新聞』も「『非常事態の発生の場合は、真心をささげて、国の平和と安全に奉仕しなければなりません』という部分もある。だが、(中略)過激な主張だとは必ずしも思えない」(3月13日)とした。

だが、ここで驚きの事実を。実は稲田大臣が言及したり、森友学園がホームページに転載していた教育勅語は、元の教育勅語とは別モノだったのだ!

『「日本スゴイ」のディストピア―戦時下自画自賛の系譜』などの著書がある編集者の早川タダノリ氏が解説する。

「稲田さんは教育勅語の本質として、世界に誇れる『道義立国』を目指したもの、と言いますが、教育勅語の原典に『道義立国』なんて言葉はないんですよ。

今の保守系の人たちが使っているのは、昭和40年頃に国民道徳協会の佐々木盛雄という政治家(1908~2001年。元衆議院議員)が現代語訳したもの。佐々木氏は、この訳をつくる際、原典からかなり飛躍した解釈をした。例えば原典の『以テ天壌無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運ヲ扶翼(ふよく)スヘシ』はざっくり言うと“永遠に続く天皇の盛運を助けなさい”なんですが、佐々木氏は『国の平和と安全に奉仕しなければなりません』と訳して、天皇に奉仕せよという部分を消した。こういった形で、教育勅語を戦後っぽく洗練されたものに“捏造”(ねつぞう)し、使いやすいものにした」

“超訳”教育勅語を広めて何をしたいのか?

では、50年前の“超訳”が、今また人気となっているのはどういうこと?

95年くらいからの動きですが、特に第1次安倍政権の頃から、教育勅語や論語を読ませるNPOや教職員団体などの運動が活発化した。また、広島や沖縄などには、教育勅語を基に道徳授業を行なう公立学校や幼稚園がすでに複数あります」(早川氏)

でも、「親を大切に」というメッセージは正しいけど、そんな当然のこと、わざわざ教育勅語を持ち出さなくても、ヒップホップでもなんでもよくない?

「やはりそこは、天皇の権威があるから。これが軍人の山本五十六(いそろく)の言葉だったら、彼らも使わないでしょう」(早川氏)

では、彼らは“超訳”教育勅語を広めて何をしたいのか?

「よく戦前回帰といわれますが、彼らは想像上の『戦前』に憧れているにすぎません。ただ、オウム真理教の事件や阪神・淡路大震災があった95年くらいから、『少年犯罪が増えている。社会が乱れてきた』といった不安が広がり始める。そもそも戦前のほうが治安は良かったなんて大嘘なんですが、そんな思い込みの上に『それは今、教育勅語のような道徳の指針がないからだ』と考える人が増え始めた。彼らは『若者は戦前のように秩序を守り、目上の人を敬え』と訴えるわけです」

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