UFCの頂に手を掛けていた堀口恭司が、4月16日のRIZINに電撃参戦!

4月16日、横浜アリーナで開催されるRIZINに、とんでもなく強い日本人ファイターが初参戦を果たす。

堀口恭司、26歳――軽量級とは思えぬ破壊力抜群の打撃を武器に2013年から米UFCに参戦すると7勝1敗の成績を残した。唯一の敗戦はフライ級絶対王者、デメトリアス・ジョンソンに挑んだタイトルマッチだ。しかし、以降は3連勝中で、タイトル再挑戦が期待されていたところだった。

そんな堀口が今年、UFCを電撃離脱し、RIZIN参戦を決意。その理由はなんなのか? 現役バリバリのメジャーリーガーを直撃した!

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―RIZIN参戦を発表した時は、どのような反響がありましたか?

堀口 誰にも相談せずに決めたので、近しい人たちからは「ひと言あってもいいじゃないか」とは言われましたね。身内の反響はすごかったけど、それ以外はよくわかりません。

―RIZINは2015年末に旗揚げされましたが、どう見ていましたか?

堀口 自分はUFCに上がっていたから、その他のリングへの興味はなかったんですよ。ただ、UFCとの契約を継続するかどうか考えた時に納得できない話があって、そこで初めて他の道も考え始めたんです。RIZINもそうだし、ベラトール(アメリカでUFCに次ぐ大手団体)はどうかなとか考えていました。

―UFCと再契約をしなかった一番の理由は、試合数が少なかったから?

堀口 それもありますね。やっぱり試合をやらずに、いい時期を無駄にしたくなかったので。昨年は2試合でしたけど、最低、年間3試合はやりたいんです。

―UFCでは、試合のどのくらい前にオファーがあるんですか?

堀口 基本的には2ヵ月前なんですけど、それがいつあるのか決まっていないんです。その点、RIZINは年間の開催日程が決まっているから調整もしやすいじゃないですか。

―UFCの日本大会に出るという目標はなかった?

堀口 9月に開催されるというような噂も聞きましたけど、それまで待っていられないし、いつ決まるかわからない試合に振り回されたくなかったっていうのもありました。向こうからすれば、こちらが日本人で英語が喋れないからって、少しナメている感もあったと思う。だったらもういいや、辞めてやるよって。

―UFCで東洋人が活躍するのは難しくなっている?

堀口 そうかもしれないですね。今は、自分はしっかりRIZINを盛り上げていこうと思っています。榊原(信行・RIZIN実行委員長)さんが猛プッシュしてくれたのもありがたかったし、日本のファンや、僕が練習している空手道場のコたちにも試合を見せられるということもあります。

―RIZINとUFCではルールやリングの形状も違いますけど、それに関しては?

堀口 やることは同じなので関係ないですね。そこでブレていたら、自分のパフォーマンスが出せないですから。自分のやることをしっかりやるだけですよ。

そもそもアメリカ好きじゃないし(笑)

アメリカでの生活はジムと寝床の往復だけ。ストレス発散は釣りで、2メートル近いサメを釣り上げたこともあるという

―RIZINでの初戦の相手は前DEEP王者の元谷友貴(もとや・ゆうき)選手ですが、あっさり越えていかないといけない相手になりますね。

堀口 RIZINみたいなデカい舞台に上がっている選手で弱い選手はいないと思うんですよ。だから、もちろんナメてはいないですけど、そこはあくまで通過点であって、しっかり倒さないといけない相手なんでね。だから、倒しますよ。

―「片手で3分」(アントニオ猪木の名言)で?

堀口 ハハハハハ! それ、言わせたいだけじゃないですか(笑)。

―いや、誰もが実力の違いを見せつけてくれるんだろうなって思っているでしょうから。

堀口 もちろん、自分は世界で闘ってきたので、その経験を活かしてやっつけたいとは思っています。だからまあ、軽くやってボコボコにしたいとは思っています。

―それくらい威勢のいい言葉は必要です(笑)。

堀口 ハハハハハ! 頑張ります。でも、そういうキャラじゃないんでね(笑)。

―UFCの選手はツイッターで対戦相手とディスり合ったりするじゃないですか。

堀口 周りはやっていたかもしれないですけど、ツイッターとかフェイスブックとか自分は苦手で、あまり更新しないんですよ。面倒臭いし、いちいち俺の行動を書いてどうするんだよ、みたいなところがあって。知りたい人もいるんだろうから、やらないといけないとは思うんですけどね。

実際、アメリカにいる仲間は「これも仕事のうちだから」と言ってやっています。自分の感覚もかなり変わってきて、こんな感じでいいのかなって試行錯誤しているところです。

―現在、フロリダにある名門ジム「アメリカン・トップチーム」を拠点にしていますが、アメリカの大きなジムで練習するメリットは?

堀口 ひとつのジムでなんでもできることですね。柔術、レスリング、打撃…全部練習できるので、それが大きいです。日本だと、ボクシングはこっち、柔術はこっちって、練習場所を転々としないとダメですけど、向こうだと移動時間がないですからね。でも、アメリカにはホント、強くなるためだけに行っている感じですよ。そもそもアメリカ好きじゃないし(笑)。

―自ら行ったのに、好きじゃない(笑)。

堀口 自分自身、あんまり社交的じゃないんですよ。アメリカに行かなくても強くなれるなら行かないですけど、強くなるためにはそれが一番の近道だと思っているから。向こうにいる間はほとんど練習のこと、強くなることしか考えてないですからね。そんな環境に耐えながら生活していくのって、普通では考えられないと思いますよ。好きじゃないのにアメリカにいるわけだし(笑)。

生きて行くために殺生をするみたいな世界観が好き

―頭がおかしくなっても不思議じゃないくらい?

堀口 おかしくなりますよ(笑)。今、自分はジムの上で寝泊まりしているから、上と下の行き来だけなんです。だから、ストレスも溜まりますし。でも、それに耐えながら過ごしていけば人間的にも成長できると思っています。奥が深いですよ、やっぱり。

―向こうでのストレス解消法は?

堀口 釣りですね。休みの日は疲れて寝ていることが多いので、最近はあまり行けていないんですけど。フロリダは海が近いから、船を出して釣りに行ったりするんですけど、向こうは日本の海より魚の数が多いから結構釣れるんです。

―これまで釣り上げた一番の大物は?

堀口 2メートル近くあるサメを釣りましたね。

―サメ!

堀口 船長がサメのいるポイントを知っていて。その辺りに着いたら、「あそこにいるからゆっくりゆっくり」って近づいていって。釣った魚をエサにして、サメの目の前に落とすんです。それを口に入れたら、「食べた!」って引き上げるみたいな。

―釣ったサメは食べたんですか?

堀口 船長が殺したくない人みたいで、引き上げたサメと一緒に写真を撮っただけですね。サメは食べられなかったけど、釣った魚は自分で捌(さば)いて食べます。僕は元々、アウトドアが好きで、ハンティングみたいなこともしてみたいんですよ。スーパーで買った肉とかじゃなくて、自分で獲って食う、みたいなのが好きなんです。

―命のやりとりみたいな。それはご自身の闘いにリンクしますか?

堀口 いや、そういうつもりではないですが(笑)、自分が生きて行くために殺生をするみたいな世界観が好きなんですよ。

―じゃあ、21世紀の「熊殺し」ならぬ、「サメ殺し」を目指しますか(笑)。

堀口 そういう感じっすよね、はい(笑)。

那須川天心とのミックスルールマッチは「やれと言われたらやるしかない」

「自分は『メジャーリーガーだ』なんて意識はない」と語る堀口。現在26歳、強くなる伸びしろはまだまだあるようだ

―獲って食えるわけではないですけど、昨年末に那須川天心(なすかわ・てんしん)選手がRIZINでMMAデビューをしました。まだMMAではビギナーですけど、彼についてどう思いますか?

堀口 打撃の強い選手ですね。一度、「スパーリングしたい」って言ってくれて、実際にやったこともあります。これからが楽しみな選手ですよね。経験を積んでいけば、上にこれそうな選手ではあると思いますけど、総合格闘技はそんなに甘くないので。これから寝技を始めても、そんなに甘いもんじゃないから、頑張ってねという感じですかね。

―過去に、青木真也vs長島★自演乙★雄一郎のミックスルールマッチ(1Rがキック、2RはMMA)がありましたけど、もし那須川戦をミックスルールでやれと言われたら?

堀口 やれと言われたらやるしかないですからね。それで日本が盛り上がるなら、断る理由もないし。そこで「やらない」なんて言ったらダサいじゃないですか。それに、僕はMMAのファイターだから、なんでもできますからね、ハッキリ言って。

―堂々たる発言! RIZINでの活躍も楽しみですが、「日本人初のUFC王者になってほしかった」というファンも少なからずいると思うんですけど。

堀口 そういう声に対しては、もう少し待っていてねと。

―というと?

堀口 この大事な時期に試合ができずに、経験が積めないままタイトルマッチに挑むよりは、経験を積んでからその道に進むことだってできると思います。今はRIZINでしっかりと基盤を作って、フライ級のベルトを作るなりしてもらったら、必ずそれを巻きます。その時点で、今のUFC王者のデメトリアス・ジョンソンがベルトを保持していたら、チャンピオン同士で対決すればもっと面白くなる。そう考えています。

―それは夢が膨らみますね。でも、まずはRIZINでの試合を観てくれと。

堀口 ですね。嫌いなアメリカに行ってまで、その準備をしているわけですから。

―そこ、強調しますね(笑)。

堀口 行った当初は新しい仲間もできて新鮮だったんですけど、1年もいると、そろそろアメリカはいいかなって(笑)。とにかく自分は日本が好きなんです。ただ、強くなるには向こうのほうが理想的な環境が揃っているから、日本で納得のいく試合をするためにも向こうに行っているだけです。

―それだけ、メジャーリーガーとしてトップを目指すのは半端な覚悟ではできないと?

堀口 自分は「メジャーリーガーだ」なんて意識はないですよ。どこで闘おうが、やることは同じなので。メジャーリーガーだからって威張る必要はないじゃないですか。そんなことを言ったって、負ければ終わりの世界ですからね。

(取材・文/“Show”大谷泰顕 撮影/保高幸子)

●堀口恭司(ほりぐち・きょうじ)1990年生まれ、群馬県出身。幼少より空手を学び、PRIDEやK-1の影響を受けてMMAを志す。修斗で実績を重ね、第9代修斗世界フェザー級王者に。2013年にUFCデビュー。15年4月にはデメトリアス・ジョンソンとの世界フライ級タイトルマッチに辿り着く。16年からアメリカの名門アメリカン・トップチームに所属し、UFCフライ級3位となった

●『RIZIN 2017 in YOKOHAMA ‐SAKURA-』4月16日(日)/横浜アリーナ/13:30開場、15:00開始 対戦カードなど詳細はRIZIN公式サイトでチェック!