現地時間3月21日。日本代表の背番号16のユニフォームの上着を着た野茂と、89歳となったトミー・ラソーダ

1995年、野茂英雄は海を渡りメジャーリーガーとなってドジャースタジアムのマウンドに立った。

22年後、今度はWBC準決勝の始球式のために同マウンドに立つ。恩師のトミー・ラソーダ元監督から受け取ったボールを本塁に背を向ける“トルネード”と呼ばれた独特のフォームから投げ込む。

ボールは大きく外れるもスタンドからはレジェンドの共演に、この日一番と言っていいほどの大きな拍手と歓声が送られた。

その瞬間を「鳥肌モンやった!」と語るのが、野茂と近鉄時代のチームメイトであり、NOMOベースボールクラブの理事でもある金村義明氏だ。

「改めて偉大なパイオニアだったんだなと。普段は一緒に酒を飲み、カラオケしてるんですが、始球式の瞬間は別人のように見えました(笑)。

ストライクが入らなかった!? そんなことは、どーでもいいんです。本人もそんなことより、終始、ラソーダさんの体調を気遣っていましたね。そんな男です」

野茂と、かつて野茂のことを「年の離れた息子」と呼んだアメリカの父は互いの腰に手を回し、ゆっくりゆっくりとダッグアウトに引き揚げていった。

(写真/AP/アフロ)