勝たなければいけないという使命感を持って、とことん勝利にこだわってほしいと語るセルジオ越後氏

東京五輪世代にとって、五輪前にある最も大きな舞台で、最も大事な大会だ。

5月20日に韓国で開幕するU-20(20歳以下)W杯の組み合わせが決定。5大会ぶりに出場する日本は、南アフリカ、イタリア、ウルグアイと同じD組に入った。ウルグアイは今年2月のU-20南米選手権を制し、イタリアも昨年のU-19欧州選手権で2位という強豪。厳しいグループという印象だ。

でも、グループリーグ突破が不可能かといえば、決してそんなことはない。各組3位となった6チームのうち成績上位の4チームは決勝トーナメントに進めるので、南ア(アフリカ4位)に勝てばチャンスはある。もちろん、3位といわず、ウルグアイ、イタリアのいずれかに勝って2位以内での通過を目指してほしいし、そうなれば最高だ。

20歳以下とはいえ、日本のメンバーのほとんどはプロ。プロである以上、負けてもドンマイじゃなく、勝たなければいけないという使命感を持って、とことん勝利にこだわってほしい。大舞台で勝ち進むことによって得られる経験、自信は計り知れないし、何よりこの世代の成長もしくは停滞は、A代表の強化に直結する。日本は2007年のカナダ大会を最後にU-20W杯への出場を逃し続けてきたわけだけど、それは今のA代表にもマイナスの影響を与えていると思う。

矛盾することを言うようだけど、サッカー界における20歳は、育成年代であって育成年代ではないんだ。世界を見渡せば、同世代ですでに欧州のトップリーグで主力として活躍している選手は大勢いる。例えば、ACミランのGKドンナルンマは18歳。マンチェスター・ユナイテッドのFWラッシュフォードは19歳。ふたりともA代表デビューを果たしている。日本でも以前は小野、香川、内田など10代でA代表に招集される選手がコンスタントに現れていた。

そうした選手たちに少しでも近づくためにも、この大会は絶好のチャンス。実際、南米の選手などは、この大会でアピールして欧州のクラブに移籍しようとギラギラしているよね。

選手たちには最大の野心を持って大会に臨んでほしい

日本のこの世代は、Jリーグの試合に出場している選手が少しずつ増えているけど、一般層に顔や名前を広く知られている選手はまだいない。だから、スポーツ紙などもそうした選手たちの記事では“売れない”と判断し、“飛び級”の15歳、久保(建英[たけふさ]、FC東京U-18)君ばかり取り上げている。

でも、U-20W杯という大舞台でアピールできれば、メディアも大きく取り上げるし、“東京五輪の期待の星”となり、選手としての価値は一気に高まる。自分のチームに戻ってからのチャンスも増える。

1999年のワールドユース・ナイジェリア大会で準優勝した“黄金世代”は、最初から期待の大きかった世代だったけど、大会開幕当初はそこまで盛り上がっていたわけじゃなかった。現地まで取材に行った報道陣も数えるほどしかいなかった。それが決勝まで勝ち上がることで、日本中の注目を集めるまでに至った。その後の彼らの活躍はあらためて言うまでもないよね。

U-20W杯での活躍次第では、世間に名前を覚えてもらうのはもちろん、ひょっとするとW杯最終予選を戦うA代表からもお呼びがかかるかもしれない。こんなに“おいしい”機会はめったにないんだから、選手たちには最大の野心を持って大会に臨んでほしい。

(構成/渡辺達也)