1922(大正11)年に桜の木として日本で初めて国の天然記念物に指定された三春滝桜。根の周囲11.3m、枝の広がりは最大約25m。子孫樹は日本各地だけでなく世界にも広がっている

「日本三大桜(*)」のうち、唯一の枝垂(しだ)れ桜である福島県田村郡三春町の「滝桜」。

樹齢1000年以上、国の天然記念物の桜が3月下旬、ひと足先に“満開”の姿となった。

「桜の花はまだ咲きませんが、雪が積もって“満開”の雪桜となりました。今年の開花予想は4月10日から15日。開花から5~7日間が見頃ですね」(三春まちづくり公社観光部)

地元住民だけでなく、滝桜の開花を待ちわびる人たちがいる。東京電力福島第一原発の事故後、双葉郡富岡町から三春町に避難してきた人たちだ。今は避難先の三春町に校舎がある、富岡第二中学校の村上順一校長が言う。

「富岡町も『夜の森の桜』が有名で、桜には特別な思い入れがあります。昨年6月にいただいた三春滝桜の種は、生徒たちが三春町にお世話になった証(あかし)として大切に育て、今年芽を出して苗となりました。いつの日か、富岡町の校庭に植えられたらいいなと思っています」

4月1日、富岡町に出されていた避難指示は一部解除されたが、直近の調査で帰還の意向を示した町民はわずか16%。学校もまだ戻れない現実がある。

それでも桜は春を待っている。

(取材・文/畠山理仁 写真提供/株式会社三春まちづくり公社観光部)

*「日本三大桜」:山梨県の山高神代桜、岐阜県の根尾谷淡墨桜、福島県の三春滝桜