華々しいデビューから約7年、人知れずひっそりと販売終了へ……

3Dテレビ、全社で販売終了へ――。韓国のサムスン電子が2010年2月に発売して以来、世界中の家電メーカーがこぞって生産してきた3Dテレビが、その役割を終える。

一時は業界の売り上げ低迷を救う救世主として、鳴り物入りで投入されたものの、販売が振るわず、メーカーは次々と撤退。最後まで生産を続けてきたソニー、LGも、ついに2017年度中に販売を終了すると発表した。わずか7年の短い生涯だった。

一体、なぜ3Dテレビはこんなにも売れなかったのか? 前回配信した前編記事に続き、業界関係者の証言をもとに振り返った。

・ハイビジョンが過去のものになった(大手家電メーカー専務)

「正直、今の各メーカーの技術なら、フルハイビジョン画質の3Dテレビは簡単に作れます。3Dメガネをかけても明るく見える画面パネルも、よどみない3D映像を表現するための安価な高速エンジンも、2010年当時は難しかったのですが、現在の技術なら楽勝です。

しかし、ハイビジョンというものがすでに“過去の規格”になってしまった。今は4K・8K放送対応のテレビの開発に全力を注ぐしかない。

4K映像を3D表示するには、自発光でコントラスト比の高い有機ELパネルが最適です。しかし日本の各メーカーは、有機ELパネルの開発から一度撤退している。この分野への再参入は、とても片手間ではできません。

現在、有機ELテレビの4K×3Dモデルを世界で唯一、販売しているのは韓国のLGです。彼らもこのたび、3Dテレビの販売をいったん終了しますが、それはあくまでも2020年の東京五輪時に予想される8Kテレビ特需で圧勝するための戦略。ほうほうの体で撤退するわれわれとはまったく違う、余裕があればこその王者の兵法です」

観るソフトが少なく、かといって値段も高く、しかも4Kが台頭したことで時代遅れにもなってしまった3Dテレビ。しかし! 先ほどの家電メーカー専務によると、3Dテレビは不死鳥のように再び蘇ってくるという。今度は手頃な「4K×3D」として……。

「日本の新たな4K×3Dテレビは、有機ELの4Kパネル技術が熟成し、それをストレスなく倍速で動かせる超ハイスピードエンジンが手の届く価格に抑えられた頃に登場します。3Dメガネもパッシブ方式とし、相当安価で提供できるでしょう」(家電メーカー専務)

3Dテレビとは、売り上げとは関係なく、家電メーカーが見ずにはいられない“夢”なのかもしれない。

(取材・文・撮影/近兼家)

■週刊プレイボーイ8号「追悼特集 さよなら、カッコ悪いメガネ。僕たちは3Dテレビを忘れない」より