ライザップに買収されたジーンズメイト。販売不振に苦しむ現状を打破できるか!?

ジーンズカジュアルチェーンの“御三家”、ジーンズメイト、ライトオン、マックハウスの屋台骨が傾いている。

先日の3月28日、ライトオンが発表した中間決算は散々な結果だった。売上げは約428億円で前年同期比7.7%減だったが、営業利益(2億3300万円)と経常利益(2億2200万円)はともに92%減と大幅ダウン。結果、1億6千万円の赤字となった(※2017年8月期第2四半期の業績)。

マックハウスも売上げ400億円を割り込んでマイナス基調が止まらない。だが、最も“ジリ貧”に瀕しているのはジーンズメイトのようだ。

就活生の業界研究のバイブル、『図解!業界地図』シリーズ(プレジデント社)の執筆者のひとりでビジネスリサーチ・ジャパン代表の鎌田正文氏は同社の現状をこう見る。

「2008年2月期の最終黒字を最後にその後は赤字状態が継続しています。今期(2017年度)も赤字になる見込みで、もはや自力での再建は不可能かと…」

自身のPCには独自に収集したという1500社分の財務データが蓄積されており、「他のどのライター、ジャーナリストよりも企業の有価証券報告書を分析している」と自負する鎌田氏から見て、ジーンズメイトの“ココがヤバい”と指摘するポイントはふたつ。

「ジーンズメイトは09年度以降に社員のリストラを進めたこともあって、1店舗当たりの従業員数が10年の2.1人から16年には0.6人まで減少しています」

0.6人…。ゼンショーのすき家で批判の的となった“ワンオペ”以下ってこと?

「これは正規社員の数を表したものなのでそうではありませんが、要は社員がひとりで約2店舗を掛け持ちし、パート依存の店舗運営に陥っているということ。これが販売力が低下している原因のひとつになっていると思われます」

さらに、鎌田氏が「商売を営むうえで非常に危うい」と指摘するのが次のポイントである。

「店舗の資産価値を示す、帳簿上の『有形固定資産』に着目すると、ジーンズメイトは“0円”の状態が11年度以降、ほぼ毎年続いています。要は、店内の改装やリニューアルに見合う稼ぎがないために店舗が無価値の状態に陥っているということ。ちなみにマックハウスの有形固定資産は約15億円、ライトオンは約116億円(いずれも16年8月期)を計上していますが、ジーンズメイトは0円です」

そう話す鎌田氏の目に、ジーンズメイトの現状はこう映っている。

「これでよく潰れないな…と」

ジリ貧のジーンズメイトに救世主現る!

だが、そこにきて意外なところから“救世主”が現れた? TVCMでおなじみ、パーソナルトレーニングジムを運営する「RIZAPグループ」である。1月16日、同社がジーンズメイトを買収すると発表、翌月20日に正式に子会社となった。

その報道以降、ライザップがジーンズメイトの経営再建にいかに“コミット”するか?に注目が集まっているところだが、鎌田氏はこう見る。

「自力での経営再建が望めなくなっている中で外部から救いの手が差し伸べられたわけですから、この買収話は渡りに船でしょう。しかし、ライザップですか…。確かにここ数年、アパレルや雑貨関連の夢展望や三鈴、馬里巴、イデアインターナショナルなどの企業を相次いで買収していますが、いずれの企業もこれといった変化を見せていないのが実情です。ジーンズメイトの場合も、品ぞろえや店の運営が急激に変わるようなことはないでしょう」

実際、都内の店舗に行ってみたが、品ぞろえや内装など店づくりは買収前と何も変わっていない印象だ。来店客が記者しかいない店内はガラーンとし、そこら中に張り出された店頭POPの『広告の品』『SALE』の文字が虚しく踊るばかり…。

そこで、ライザップに買収されてから、何か変わったところは?と店員に聞いてみた。

「品ぞろえは何も変わっていませんが、2月に入ってから『JEANS MATE』のロゴが変わりました。まだ店頭の看板は追いついていないのですが、会社のホームページではすでに新しいロゴに切り替わっています。どう変わったか? 黄と青で統一していたロゴの色が黒と赤に変わり、デザインがオシャレっぽくなっています」

ホームページを確認すると確かに…。ロゴだけを見れば、同じ会社とは思えないほどの変貌を遂げていた! 今後は店頭の看板も順次切り替えていくという。

さらに、一般客には見えないところで売り場にはこんな変化が…。

「現在、店頭ではスプリングセールを実施していますが、それと並行してモバイル会員向けに全店で“シークレットセール”を開催しています。同様のセールはこれまでもやったことがありますが、今回の値引き幅には正直、驚きました。本部の社員も『こんなに安くしたのは初めて』と言っていたくらいですから…」

それは、値札に『30%引き』『2000円引き』などと記されているセール品を対象に、モバイル会員だけが受け取れる「シークレットセール告知画像」を店員に提示すると、そのセール価格からさらに半額にしてくれるというもの。

ライザップの驚愕の値引き戦略!

ナショナルブランドの服をいま最も安く買えるのはライザップとタッグを組んだジーンズメイトが仕掛けるシークレットセールかもしれない。セール中、左のエドウィンのデニム(定価9180円)は75%引きの2295円、右のデニムシャツ(定価2808円)は65%引きの994円となる

例えば、店頭にあった定価9180円のエドウィンのジーンズ。値札には『表示価格より50%OFF』とあったが、シークレットセール告知画像をレジで提示すると…。

9180円×50%(4590円)×50%=2295円

この激安価格でエドウィンのジーンズをゲットできるというわけだ。だが、記者はモバイル会員ではない。そのことを店員に告げると…「『ジーンズメイト シークレットセール』で検索すると、Facebookで拡散されている告知画像が見つかりますから、それを見せていただければ値引きします」

その言葉につられ、思わずエドウィンのジーンズと合わせてシークレット値引き後価格994円のデニムシャツもセット買いしてしまった。それでも、新品のこのコーディネートで支払い総額はわずか3289円! ユニクロやジーユーを超えるコスパの高さだ。

既存のセール品にさらなる値引きを上乗せしてくるこの戦略を考案したのは…?

「ジーンズメイトのメルマガに添付されたシークレットセールのURLをクリックするとライザップのHPに飛び、そこに告知画像が貼られている点を考えると、この思いきった値引き戦略はライザップ主導によるものと推察できます」(アパレル業界紙記者)

残念ながら、このシークレットセールは4月2日で終了しているが、「同様のセールは今後も行なう予定」(ジーンズメイト・営業部)という。

「ジーンズショップの販売不振はユニクロやジーユー、GAPなどへの客離れが大きな原因となりました。離れた客を取り戻すことは経営再建には欠かせないことでもあります。つまり、今回の“セール・オン・セール”による大幅値下げは、ライザップが仕掛けた顧客奪還のための一手と見ることもできる。春・夏商品向けに、次にどんな一手を打ってくるかが見物です」(前・同)

(取材・文/週プレNEWS編集部)