日本ロック界に君臨する女性５人組バンド「ＳＨＯＷ‐ＹＡ」のヴォーカリスト、寺田恵子姐さんが人生相談に乗ってくれた！ここは東京・神田あたりの路地裏にある、隠れ家的なバー。ウイスキーのボトルが並ぶカウンターの中には、ゴールド＆ピンクのロングヘア、胸元に赤い薔薇のタトゥーが入ったロックな姐（ねえ）さんが…。
そう、代表曲「限界ＬＯＶＥＲＳ」などで日本ロック界に君臨する女性５人組バンド「ＳＨＯＷ‐ＹＡ」のヴォーカリスト、寺田恵子姐さんである！
メジャーデビューから３２年、酸いも甘いも噛み分けた姐さんが今回特別に、悩める男女の「人生相談」に乗ってくれるという。「私の中には天使と悪魔がいる」という姐さん。果たして、天使が微笑むか、それとも悪魔に睨（にら）まれるか…。取材班もドッキドキの人生相談、いざ開幕！
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―今日は人生相談ということで、よろしくお願いします！ 初対面ですけど、姐さんって呼んでもいいですか？
寺田 （タバコの煙をくゆらせながら）もちろんいいよ。私でお役にたてるかどうか。
―こじらせたお悩みを厳選してきましたので、バッサバッサ斬っちゃってください！ では早速、最初の相談です。
＃１ 結婚を前提に付き合っている彼氏は「料理は女の仕事」という考え方。これって私から言わせると男尊女卑！ でも、親友は「料理は女の武器じゃん？ 私は手料理で旦那をゲットした」と言います。私自身は料理が苦手なのですが、姐さんは「料理は女の仕事、あるいは武器」だと思いますか？（２８歳・女性・会社員）
寺田 作らなくてもいいと思うんだけど…今、冷凍食品おいしいじゃん？
―あ、そこにいきますか（笑）。
寺田 こう見えて私は栄養短期大学を出ているので、ひと通りお料理は作れるんですよ。でも、「料理は女が作るべき」っていうのは、やっぱりナンセンスだと思うな。お互い仕事を持ってるんだったら、家庭は協力して作りあげていくものだと思いますよ。彼と結婚して幸せになりたいなら、他人の意見に惑わされたり、「こうしなきゃいけない」って固定観念に縛られないほうがいい。彼が考え方を変えてくれなくて、それでも好きなら作ればいいし、イヤなら別れればいいんじゃない？
―決めるのは自分だと。この時世、共働きだったら家事の分担は当たり前ですしね。
寺田 そう。例えば、「私が作るから、あなたはお片付けしてね！」とか。それもイヤだって言う男はやめたほうがいい。そんな考え方はもう古い。
―では、料理は女の武器になると思いますか？
寺田 武器にはなると思うけど、昔のように「胃袋を掴め」みたいな時代ではないじゃん。それにさ、下手な料理を出すより、買ってきたもののほうがおいしいこともあるじゃん？
―でも、一生懸命作ったという事実に価値があるのでは？
寺田 一生懸命作っても、まずいご飯食べる？
―嫌々ながら（苦笑）。
寺田 食べる！？ 私、「おいしくない」って言われて、「だったら食わなきゃいいじゃん！」、バンッ！て、目の前で捨てたことあるよ。
―悪魔が出ました（笑）。
寺田 もう作らない！って。そもそも人の味覚ってさ、例えば出身地によって違うでしょう。関東のお味噌汁はしょっぱいけど、九州のお味噌汁は甘いじゃないか。友達の旦那さんが九州の人なんだけど、義理の両親が来た時、友達が甘いお味噌汁を作ったらしいの、あっちのお味噌を使って。だけど、「しょっぱい」って言われて砂糖入れられたらしいから。そういうこともあるわけさ。逆に、口に合わないものを我慢して食べてたら、一生それを食べ続けることになるんじゃない？
―自分の口には合わないって正直に言うことも大事ですよね。
寺田 味の好みはさ、一緒に生活してみないとわかんないから。ちょっとずつ味を変えていけばいいと思うけど。あと、相手が濃い味が好きだったとしても、健康のことを考えたら塩分は控えめにしようとか、いろいろあるじゃん。一緒に住んだら愛情も深まってきて、健康のために作ってあげたいって思えるようになるかもしれないよ。
「ミュージシャンは、末路が寂しかったりする人も多いんじゃないかなって思うわけ」
姐さんの夢は、ビルを建てること
―そうですよね。姐さん自身はよく料理をするんですか？
寺田 するよ。あまり外食はしない。子供の頃から自分で料理してたしね。実家は建築業で、住み込みのお兄さんたちがいて、母親はその人たちの食事の世話とかで忙しかったから、姉も弟も自分のことは自分でやるみたいな、みんな割と自立してた（笑）。
―マネージャーさんから聞いたんですけど、姐さんは忘年会で何十人というスタッフに手料理を振る舞ったとか？
寺田 私はわがまま放題やってるから、一年の労をねぎらうために、お店を貸切にして５０人前くらいの食事を振る舞ったこともあったね。
―並大抵の量じゃないっすね。
寺田 すごい量だよ。事務所の人や後輩に手伝ってもらったりもするけど。「悪いけどネギ切っといて」とか（笑）。やっぱりおいしいものを食べてほしいから、いいお野菜を探したりとか、角煮を３日間煮込んだりとか。
―姐さん、段取りがよさそうですもんね。
寺田 う～ん、それはわかんないけど。第１弾、第２弾って料理を時間差で出したりするのね。ずっと厨房で作業してて誰とも飲まず、気付いたらほとんどの人は帰っていて、それから飲み始めるってことも多々あるんだけど（笑）。
―将来は、小料理屋を開くのが夢だとか？
寺田 小料理屋っていうか、ビルが欲しい。
―ビル！？
寺田 ビル！
―また、全然話が…（笑）。
寺田 １階が小料理屋で地下がバー、２階がジム、３階が病院、その上が私んち。
―生活の全てがそこで完結しますね（笑）。
寺田 今はそれが夢なんです。昔は、みんなでコミュニティを作って一緒に生活するっていう夢があったんだけどね。ミュージシャンとかやってると結構、末路がさ、寂しかったりする人も多いんじゃないかなって思うわけ。
自由奔放に生きてきた人がおじいちゃん、おばあちゃんになった時に、幸せな家庭を築いているってイメージがあまりなくて、そういう寂しい人たちが集まってひとつのおうちに住むっていうのを考えてたんだけど、それもちょっとめんどくさいかなって（笑）。急に「セッションしようよ」とか言われたらめんどくさいとか思って（笑）。
―確かに（笑）。
寺田 だから、ビルを持って、来たい人は来ればいいって感じでやりたいんだよね。演奏したい人は地下のバーで演奏して、お腹が空いたら「上行っといで！」みたいなさ。「どっか具合悪いの？ ちょっと先生～！」とかさ。
―ハッハッハ！ 寺田ビル、いいですね！
寺田 このビルさえあれば生きていける（笑）。協力してくださいよ。
―なんとかしましょう（汗）。さて、次のお悩みです！
「男から『なんで返事くれないんだよ』って言わせる女になりなさいよ」
「男をきらせたことはないけど、『結婚してください』って言われてもノー・サンキュー」という姐さん
＃２ 付き合い始めた彼氏からＬＩＮＥの返事が遅くて、仕事も手につきません。既読になっているのに１時間以上返事がないとか、あり得なくないですか？（２３歳・女性・事務員）
寺田 仕事中だったらしょうがないよね。夜中だったらしつこく送りまくるけど（笑）。仕事中は難しいんじゃないの？
―たぶんこの彼女は、仕事中じゃなくても、すぐ返事が来ないと心配になっちゃう女の子なんでしょう。
寺田 依存しているってこと？
―そうだと思います。
寺田 やめたほうがいいよね。嫌われちゃうよ！ めんどくさいって思われちゃうから。ちょっと、なんか趣味でも持ったらいいんじゃない？
―でも、恋愛が趣味みたいな女のコって結構いますよ。
寺田 束縛系っていうか、自分の言うことをなんでも聞いてくれたり、同じ行動をとってくれないとイヤなのかな。でもさ、（急に小声になって）そんなに思い通りいかないって。「なんで返事くれないの！」って言うのはいいけど、嫌われるのを覚悟でね。それより、もっといい女になりなさい。
―それが答えですね！
寺田 逆に男のほうから「なんで返事くれないんだよ」って言わせる女になりなさいよ。私が大好きなマンガ『エースをねらえ！』から、主人公の岡ひろみのコーチ、宗方仁の言葉を紹介しましょう。「恋をするなと言っているわけではない。待たせるだけの女になれ」。
男が女のためにいつまでも待ってくれる、それくらい自分の生き方をレベルアップしていくっていうこと。音楽とかやってると、恋との両立ができないこともあるわけで、地方に何週間も行く時に「俺をひとりにしないでくれ」とか言われても、仕事はやめられないわけじゃん。だったら、それでもいいと待ってくれる男とめぐり会うまで、自分をレベルアップしていく。
―カッコいいっすね。姐さんは散々、男を待たせてきたわけですね。
寺田 う～ん、どうだろ。今は結婚する気がないので。たぶん、将来的にもないと思う（笑）。
―結婚願望ナシですか。
寺田 でも、男が好き。男をきらせたことはないけど、「結婚してください」って言われてもノー・サンキュー。結婚はできない。
―結婚よりビルだと！
寺田 そう、私にはビル！ 結婚ではない（笑）。フフフ…。
―次の相談は、「男らしさ」についてです。
「男が弱くなったっていうのは事実だよね」
高校野球で球児があまり泣かなくなっていることに納得がいかないと語る姐さん
＃３ 居酒屋の隣の席で若い男女が合コンをしていて、お会計で幹事の男が「男は三千円、女は千円でいいよ」と誇らしげに言ってました。だったら男が四千円出せや！と俺は思います。最近、女の前でカッコつける男が減ったような気がする。「男のやせ我慢」がカッコよかったのはもう過去の産物？ 姐さんの考える「男気」ってなんですか？（４３歳・男性・建設業）
寺田 割り勘は別にいいんじゃない？ 男のほうから誘ったんなら質問者の考え方もアリだと思うけど。私は基本的に自分で払うつもりで行ってるけど、自分の女には絶対に払わせないっていう考え方も、それはそれでいいと思うし。これは人それぞれでいいんじゃない？
―「男気」についてはどうですか？
寺田 昔に比べれば、男が弱くなったっていうのは事実だよね。電車とかでカップルがケンカしていて、男のほうが泣いてるっていうの、よくあるじゃん？
―ありますね！
寺田 それ見て、ウワ～ッて思った。男が泣いてる、あり得ない！って。女が強くなった分、男が弱く見えるのかな？ 男が女を大事にしすぎて、女からすればそれが当たり前と思うようになって、強くなってるってこともあるかもしれないね。これぐらいしてくれて当然でしょ、みたいな。
―昔は「アッシーくん」なんて言葉もありましたしね。
寺田 それが当たり前だった女がお母さんになり、その子供もそういう風に育ち…ってなってるのかもしれないよね。モンスターペアレンツとか、うちらの世代なんでしょ、きっと。
―時代の流れですかね。
寺田 時代の流れはいいけどさ、自分はそういう男はイヤだなって、やっぱ思うよね。元々、男って女々しいと思うんだよ。だけど、それを見せないカッコよさってあるじゃん。ぐっと涙をこらえるけど男泣きしちゃうとかさ。この前の稀勢の里みたいに、苦しいけど頑張った末に、こらえたけど流れてしまった涙っていうのは、素敵だなって思うよ。だけど、泣けばなんでも許してもらえるみたいな涙はさ、ホントに見ていてすごく気持ち悪い（笑）。
―同感でございます。
寺田 私はすぐ泣くんですけど（笑）。涙もろいので。
―どういう時に？
寺田 映画のエンドロールだけで泣ける女です。
―それは、チャンネルをザッピングしてたら思い出の映画のエンドロールが流れてたというシチュエーションですか？
寺田 いや、見たこともない映画。
―は！？
寺田 単に、エンドロールの映像が綺麗だな～って。いい音楽だな～、きっといい映画だったんだろうな～（涙）って。いまだにその映画のタイトルすらわからない（笑）。
姐さん、童貞を一刀両断
―ハッハッハ！ 感性が豊かなんですね。
寺田 それはわかんないけど、映画見る時は制作者の思うツボで、「ここで泣け」ってところは確実に泣きます。
―じゃあ、稀勢の里の優勝でも？
寺田 泣く泣く。オリンピックとかも、負けて泣いてる選手を見ても泣くし。でも最近は、高校野球で球児があまり泣かなくなってるよね。甲子園まで行ったのに、負けても泣かないでみんな笑顔だから、嘘だろ～って。ここ泣くところでしょ！みたいな。
―最近の部活動って、みんなで楽しく練習しましょうみたいノリじゃないと、やめちゃうらしいんですよね。監督に厳しくされて、チクショウ！ってなる子が減っているらしい。
寺田 仕事もそうだよね。褒めて伸ばすっていう方向性になってきてるんでしょ。
―姐さんはどうですか？ 若いスタッフに対して、叱って伸ばすか、褒めて伸ばすか。
寺田 そこは使い分けてるかな。怒ってばかりじゃなくて、いいところはちゃんと褒めてあげるし。でも、言い訳が嘘くさい時ってあるじゃん？ 連絡がないからこっちから電話すると、「今電話しようと思ってたんです！」とか。嘘だろ～って（笑）。そういう塵が積もると、バーンと大爆発することもある（笑）。
あと、自分の中で納得いかないことには上司だろうが部下だろうが関係なく、意外にしつこい。事務所の社長にも１回、「テメエ！」って言ったことがある（笑）。
―ハッハッハ！ さすがです。
寺田 それはもう、中学生の時から、納得いかないと「テメエ、出てこい！」って職員室に殴り込みに行ってたから。納得いかないことにはとことん食い下がってしまうかな。
＃４ ２９歳で、まだ童貞です。さすがに焦ってきましたが、この年まで童貞を守ったのだから、初めての相手はそれなりのかわいい子じゃないと納得できません。ちょっといいなと思う子に出会っても、もっといい子と出会うんじゃないかと思ってしまって、前に進めません。（２９歳・男性・編集者）
―これは我々の後輩なんですけど。
寺田 ただひとこと、アホだよね。
―一刀両断！？
寺田 このひとことでいいんじゃない？ アホ！
―後輩にはそれで全てを悟ってもらいます！
（取材・文／中込勇気 撮影／本田雄士）
●寺田恵子（てらだ・けいこ）１９６３年７月２７日生まれ。高校１年生でバンド活動を始め、８５年、「ＳＨＯＷ－ＹＡ」のヴォーカリストとしてデビューし、実力派として脚光を浴びる。シングル「限界ＬＯＶＥＲＳ」は売り上げ３０万枚を突破し代表曲に。９１年にグループを脱退、その後ソロ活動を開始。０５年、１４年ぶりにＳＨＯＷ－ＹＡを再結成。以降、ソロと平行して活動中。最新情報は寺田恵子オフィシャルサイトまで
●ＳＨＯＷ－ＹＡ ＰＲＯＤＵＣＥ 「ＮＡＯＮのＹＡＯＮ ２０１７」４月２９日（土・祝）／日比谷野外音楽堂／１４：００開場、１５：００開演。８７年に初開催された女性アーティストだけのロックフェス。今年の出演者はＳＨＯＷ－ＹＡ 他、はるな愛、荻野目洋子、小比類巻かほる、久宝留理子、相川七瀬、夢みるアドレセンス、渡辺敦子(ex.PRINCESS PRINCESS)、富田京子(ex.PRINCESS PRINCESS)、SILENT SIREN、Gacharic Spin、Mary’s Bloodなど。詳細は「NAONのYAON ２０１７」オフィシャルサイトでチェック！