学校の朝礼での教育勅語の朗読は、憲法や改正教育基本法、さらには3月末の閣議決定にも違反するものだ。※写真はイメージです

そんなに暗黒の戦前時代に戻りたいのか―?

元ヤンキー先生こと義家弘介(よしいえ・ひろゆき)文科副大臣が、「教育基本法に反しない限り、学校の朝礼で教育勅語を朗読することは問題ない」と答弁したのは4月7日のこと。

勅語とは天皇から国民への命令。教育勅語は天皇が「親孝行しろ」「夫婦は仲よくしろ」などの徳目を説教しながら、いざというときに「公に奉じて皇室に献身しろ」と、国民に迫るシロモノなのだ。元文科省審議官の寺脇研京都造形大教授が説明する。

「教育勅語が発布されたのは1890年。天皇主権下の大日本帝国で徴兵制が始まり、国民の間に徴兵忌避のムードが広がり始めた頃です。このままでは戦争ができないと恐れた明治政府が、国民に皇室に尽くすよう教える教育勅語を学校現場などに広めたという歴史背景があります」

当然、国民主権に反する内容なので、戦後に衆参両院で排除・失効の決議がされた。しかし、安倍政権は教育勅語がいたくお気に入りらしい。

園児に勅語を暗唱させる森友学園の教育方針などが問題視されると、3月末に「憲法や教育基本法などに反しない形で用いることまでは否定しない」と閣議決定し、勅語を温存するかのような動きに出たのだ。文科行政を担当する全国紙記者が言う。

「閣議決定には『勅語を教育の根本とするような指導は適当ではない』とあるのに、その後、松野博一文科相が『道徳の教材として使うことまでは否定しない』だの、菅義偉官房長官が『それぞれの学校で判断すべきこと』と発言するなど、なし崩し的に教育勅語を学校現場に普及させるかのような動きが続いています。義家副大臣の発言はそうした動きの延長上にある。確信犯ですね」

前出の寺脇氏がこう叱る。

「戦前は天皇の命令は絶対でしたが、今の日本は国民主権。天皇を絶対視する教育勅語を持ち上げるような閣僚たちの発言は、憲法や第1次安倍政権が成立させた改正教育基本法に違反しかねません」

それだけではない。義家副大臣の発言は3月末の閣議決定に反する疑いもあるのだ。

「閣議決定を読めば、教育勅語を教材利用できるのは公民や歴史の教科くらい。戦前に国民に主権がなかった歴史を教える反面教師としての使用は許容範囲でしょう。でも朝礼での朗読はアウトです。子供への勅語刷り込みになりかねず、閣議決定にも明らかに違反しています」

閣議決定に反した閣僚は罷免するのがルール。ならば安倍首相は義家副大臣を即刻クビにすべきでは?