日本ロック界に君臨する女性5人組バンド「SHOW‐YA」のヴォーカリスト、寺田恵子姐さんが人生相談に乗ってくれた!

ここは東京・神田あたりの路地裏にある、隠れ家的なバー。ウイスキーのボトルが並ぶカウンターの中には、ゴールド&ピンクのロングヘア、胸元に赤い薔薇のタトゥーが入ったロックな姐(ねえ)さんが…。

そう、代表曲「限界LOVERS」などで日本ロック界に君臨する女性5人組バンド「SHOW‐YA」のヴォーカリスト、寺田恵子姐さんである!

メジャーデビューから32年、酸いも甘いも噛み分けた姐さんが今回特別に、悩める男女の「人生相談」に乗ってくれた。

前回記事「男を待たせる女になりなさい」では恋愛観や男らしさについて語った姐さんだったが、今回はある質問をきっかけにSHOW‐YAの再結成エピソードに話が及ぶ!

***

―さて、お悩み相談以外に、姐さんご自身への純粋な質問も寄せられています。

#5 多くの人から「強い女性像」を求められ、慕われ、頼られている寺田さんですが、「姐さん」でいることにプレッシャーはないですか?(35歳・女性・音楽事務所)

寺田 しんどいです…。

―あら!?

寺田 慕ってくれるし、頼ってくれたりとかするんだけど、力になりたくても、やっぱりどうにもできない時もたくさんあるし。強い自分でいるっていうのは、それなりの覚悟も必要で大変だけど、この道を選んだのは自分だし、天命と思って突き進んでいくしかないので。(かぼそい声で)どんどん強くなっていけばいいかなって…。

―でも、そこにはムリも生じるわけですね。

寺田 相当、ムリはしていると思うんだよ。50歳を超えるとさ、気持ちは強く保てても、体はそうではないわけじゃん。そこのギャップで揺れ動く瞬間はあるわけ。ハードロックをやってると、あちこちの骨が削れちゃったりして痛みが出たりするわけさ。

でもライブに来てくれるみんなは、私が走り回ったり、激しく頭を振ってるところが見たいわけじゃん? 頭を振るのが仕事ではないけどさ(笑)。ライブが終わった後は腫れちゃったりして大変なんだけど、お医者さんと相談しながらどこまでできるか、限界ラインまでやり続けなくちゃいけないかなって。

―カッコいいです!

寺田 ありがとうございます(微笑)。

―だからこそ、寺田ビルに病院は必須ですね!

寺田 そうでしょう(笑)。

―同じく、姐さんについての質問をもうひとつ。

「『恵子は信用できない』と、思い切り断られた」

酒やタバコをやめるつもりはないが、体の鍛錬は欠かさない

#6 寺田さんといえば、美しい体型にセクシーな下着風コスチューム。衣装へのこだわりを教えてください。(29歳・女性・アパレル店員)

寺田 昔は結構こだわりがあったけど、今はいつまでこの衣装でやれるんだろうってことしか考えてない(笑)。甥っ子が判断基準で、「恵子、そろそろやめたほうがいいよ」って言われたら、こういう恰好はやめようかなって思ってる。

―ステージに上がり続けているうちは、この恰好を貫き通すってわけでもないんですか?

寺田 ほら、たまに「キッツイ」というのはあるじゃん? そう言われないように、ジムで体を鍛えたりして努力は続けていこうとは思ってるけど。

―何を言われても、今のスタイルを変えずにやり続けるのもカッコいいと思いますよ。

寺田 まあね。要は、そこを割り切る境目だよね。その境目って、一番カッコ悪い瞬間なんだろうなと思って。30代の時に、そろそろ肌の露出は控えたほうがいいっていう意見もあって、いっぱい着込んだこともあったんだけど、やっぱり違うなと思ってまた露出が始まったんだよ。

50代から60代になる境目でカッコよく見える状態に持っていくのは大変なんだろうけど、自分がどう見られたいかっていうのはすごく大事だよね。年相応に衣装を変えていく人もいるけど、あれは嫌い(笑)。

―やっぱ姐さんにはハードロックらしく、いつまでもこのスタイルでいてほしいです。

寺田 尖ってなきゃいけないの? トゲトゲで。やれるところまで頑張ります(笑)。

―お願いします! では、人生相談に戻ります。

#7 高校時代、一緒にバンドをやっていた仲間たちがいました。僕以外のメンバーはプロを目指していましたが、僕は一流大学に進んで一流企業に就職する道を選んだ。食えないインディーズで音楽を続ける彼らを心のどこかで見下すようになり、ある時不義理をしてから15年以上会ってません。今40歳を迎えて、気づけば友達といえば仕事仲間ばかり。あれだけ濃密な時間を過ごしたバンドの仲間たちが懐かしくなり、彼らに会いたいのですが、連絡する勇気がありません。(40歳・男性・会社経営者)

寺田 まずは電話しましょう。私も、27歳の時に一回、SHOW-YAをやめてるんだけど、やめて10数年経った時、女バンドやハードロックが世の中に受け入れられない時代に苦楽を供にした仲間は大切だなって思ったんだよ。

そこで大事なのは自分の中で「区切り」をつけること。ここだったら連絡できるっていう区切り。私の場合はデビュー15周年にあたる時に「再結成しないか」って電話しました。「あの時はごめんなさい」って、謝って。だからこの彼も、今40歳っていうのがひとつの区切りなのだとしたら、まずは連絡してみたらいいんじゃない?

―姐さんはメンバーひとりひとりに電話したんですか?

寺田 そう。でも、電話口で思い切り断られた。「恵子は信用できない」「また恵子に振り回されるのはイヤだ」ってみんなから言われて、確かにそうだよねって。それでも5年かけて説得して、20周年の時に再結成することができたので。まずは連絡しないと何も始まらないし、悩まずに電話したほうがいい。そこで断られてもしょうがないと思って、諦めずにまた電話すればいい。

―この彼は、拒絶されることが恐いのかもしれません。

寺田 そんなのしょうがないじゃん、自分から離れていったんなら。私は、断られることは最初からわかっていたから、20周年で再結成するために5年間は謝り続けようと思って連絡してたよ。

―5年って長いですよね。

寺田 長いよー。

「あの時は相当いろんな人から恨まれた」

SHOW-YAが最も売れている時が、実は一番孤独な時期だったと打ち明ける

―そもそも、脱退した経緯は?

寺田 しんどかったから。体もしんどかったし、喉も潰れちゃってたし。だけど、売れていたから休めなかった。本当は一週間でも喉を休めたいのに、アルバムをコンスタントに出しているとキャンペーンで各地を回らないといけなかったりするわけさ。寝る時間もなくて、このままいくと死んじゃうなって。やめるまでにはいろいろあったんだけど、ある日突然、「ゼロ」ってワードが頭の中に浮かんで、それ以来、何かにつけてゼロが出てきたんだよ。

―ゼロ? まるで天の啓示のように?

寺田 そう言うと頭のおかしな人みたいに思われるかもしれないけど(笑)。ゼロってなんだろう? 原点に戻ることなのか、死んでしまうことなのか、それともやめることなのか、誰にも相談せずにひとりでその意味を考えてたんだけど、レコーディングでロスに行った時に、ゼロの意味は「やめることだ」と悟ったのね。

その場で日本に電話して事務所に「やめまーす」って伝えた。みんなからすると寝耳に水で、あの時は相当いろんな人から恨まれたと思うけど、自分としては長い間悩んでたことの答えが出たのが嬉しくて。残ってほしいって引き止められても、聞く耳持たずだった。

―誰にも相談せずに、悩みを溜め込んでいたんですね。

寺田 後になって当時のスタッフと再会した時、あの時の私はバリアみたいなものを張っていて、その中に他人は入っていけない感じだったと言われたね。「ツライよ~」とか弱音を吐いてはいけないっていうのが、どこか自分の中にあって。

―絶頂期で、周りにはいろんな人がいたと思うけど、ひょっとしたら人生で一番孤独な時期だったのかも?

寺田 そう思うね。あとは、ずっとバンドを続けていると変化が欲しくなって、メンバーとの間に音楽性のズレが生じて、アルバムの方向性で揉めたっていうのも確かかな。その頃、私はアコースティックをやりたかったんだよ。「アコースティックなのにロックだね」って言われるようなものが作りたくて。でも、メンバーはやっぱり速い曲、ハードな曲がやりたくて、それでアメリカで勝負したいってなっていた。

だけど、今は売れてるけど、いつかは売れなくなるから、その時のために揺るがない足場をしっかり固めたいっていうのが自分の中にはあったんだ。やっぱり売れてる時って周りもチヤホヤしてくれるけど、売れなくなったらサーッと退いていくものだからさ。でも、今言ったようにメンバーとズレてしまってたから、もう誰にも相談しないってなってしまったんじゃないかな。

―なるほど…。

寺田 だから、もうひとつアドバイスできるとしたら、相談できる相手を作っておいたほうがいいよってこと。みんなに悩みを打ち明ける必要はないけど、ひとりでも話を聞いてくれる人がいたほうが楽なんじゃないかなって。

―今はどうなんですか?

寺田 今は、愚痴こぼしまくりだもん。もう聞いて聞いて!だよ(笑)。

「ああ、世の中変えなきゃ!って、変な自分が出てくる(笑)」

#8 20代の部下との接し方に悩んでいます。彼らは上下の付き合いを敬遠するので、もはや「飲みニケーション」は通用しない? また先日、つい「俺のFBにいいね!してくれよ」と口走ってしまったのですが、これってパワハラ? (50歳・男性・会社役員)

寺田 どうだろうね~。パワハラとかセクハラとか、難しいよね。受け取る相手次第だから、冗談が言い合える関係ならパワハラにはならないけど、そうじゃないとパワハラと捉(とら)えられちゃったりするかもしれない。20代のコは何考えてるか、私にもわからない。本当にコミュニケーション取りたいって思ったら、相手に合わせればいいし、そこまでしなくてもいいと思ったら、今のままでいいんじゃないかな。

―距離を保つのも、ひとつの付き合い方だと。

寺田 うん。ただ、私たちの年代は仲間意識が強いから、仲良くなりたいって思うのよ。でも、寄っていったら意外と冷めてたりするじゃん、20代は。その時は自分の中で、「テメエ!」じゃなくて、「寂しい…」って思う(笑)。ああ、コミュニケーション取れなかった、寂しいって。こっちはオープンハートで近寄っていっても、ノー・サンキューって言われることはあるから。

―敗北ですね(笑)。

寺田 寂しいけど、これも時代の流れだとしたらしょうがないかな。向こうから慕ってくるように頑張ればいいし、慕われなかったとしても、自分が悪いわけじゃないし。

―飲めばわかる!みたいなのも通用しないんですかね?

寺田 だって今、飲まない人って多いんでしょ? 飲みの場が楽しいって思える年代ではないみたいだし。ミュージシャンでも20代はライブが終わった後にみんなで飲みに行かない人たちが圧倒的に多くて、コンビニでお弁当買って家帰ってひとりで食べてるって話をよく聞くよ。寂しいって言ったら寂しいけど、それもしょうがないのかなって。逆に、ムリに飲みにつれていったら、それこそパワハラになっちゃうんじゃないの?

―あ! そうですね。

寺田 上司の誘いを断って飲みに行かない人を「オマエー」って怒ったら、それは完璧にパワハラ扱いになるでしょ。だから、飲みたい人は飲めばいいってことで!

#9 若者のモラルが低下してるとかよく言われますけど、電車の中でキレてる人ってたいてい40代とか50代の中年ですよね。先日は、ベビーカーに向かって舌打ちしている中年サラリーマンを見て、すごくイヤな気持ちになりました。なんでおじさんたちはこんなに不機嫌なんでしょうか?(23歳・男性・大学院生)

寺田 おじさんたち? おばさんもいるよ! 確かに、おじさんやおばさんで、「コイツ!」って怒鳴りたくなる人も多々いるよね。よく、ベビーカーの問題ってニュースで取り上げられたりするじゃん。その中で、年配のおばさんが「あれは困るわよね」とか「自分たちの時代は…」とか言ったりするけど、あの時とは時代違うし! 席を譲ってあげるくらいの心の余裕は欲しいよね。

逆に言えば、本当にみんな余裕がないんだなって、そういうニュースを見るたびに思うよ。世の中みんな、いっぱいいっぱいなんだって。そう思うと、「ああ、世の中変えなきゃ!」って、変な自分が出てくる(笑)。

―姐さんの世直しですか!

寺田 なんにもできないけど(笑)。だけど、心の余裕が持てない世の中になってきちゃってるんだなって思うよね。だから質問者の大学院生は、そういう大人にならないでください。家庭を持ったりするとさ、カツンカツンになってきたりするじゃん。その時に、今の気持ちを思い出してほしいなって、姐さんは思います。

●第3回⇒「スイッチの入れ方がわからなかったら、とりあえず頭振っとけ!」

(取材・文/中込勇気 撮影/本田雄士)

●寺田恵子(てらだ・けいこ)1963年7月27日生まれ。高校1年生でバンド活動を始め、85年、「SHOW-YA」のヴォーカリストとしてデビューし、実力派として脚光を浴びる。シングル「限界LOVERS」は売り上げ30万枚を突破し代表曲に。91年にグループを脱退、その後ソロ活動を開始。05年、14年ぶりにSHOW-YAを再結成。以降、ソロと平行して活動中。最新情報は寺田恵子オフィシャルサイトまで

●SHOW-YA PRODUCE 「NAONのYAON 2017」4月29日(土・祝)/日比谷野外音楽堂/14:00開場、15:00開演。87年に初開催された女性アーティストだけのロックフェス。今年の出演者はSHOW-YA 他、はるな愛、荻野目洋子、小比類巻かほる、久宝留理子、相川七瀬、夢みるアドレセンス、渡辺敦子(ex.PRINCESS PRINCESS)、富田京子(ex.PRINCESS PRINCESS)、SILENT SIREN、Gacharic Spin、Mary’s Bloodなど。詳細は「NAONのYAON 2017」オフィシャルサイトでチェック!